テレビで大きくニュースにはなりませんでしたが、私の大好きな詩人吉野弘さんが、1月15日に87歳で亡くなられたそうです。
「生命は」とか「祝婚歌」などは、生活の折に触れてくりかえし思い出す、とても大切な詩を書いた方です。「祝婚歌」は、自分の子供を含めて、友人の子供が結婚すると聞くと贈ったりしてきました。
最近は、教科書にも吉野さんの詩が載っていたようなので、若い方はかえって知っている方も多いかもしれませんが、ご存じない方のために、ここに「生命は」を掲載しておきます。
生命は 吉野 弘
生命は
自分自身で完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて111
めしべとおしべを仲立ちする
生命はすべて
そのなかに欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ
世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思えることさえも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?
花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした他者が
光りをまとって飛んできている
私も あるとき
誰かのための虻だったろう
あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない
いかがでしたか?
これまで、私のために風になってくれた多くの人たちに感謝。そして、できれば私も何気なく誰かのための虻になれたら、この人生にも意味があるんじゃないかなぁ~と感じています。
吉野弘さん、素敵な詩をこの世に残して下さって有難うございます。
あなたは、私にとって疑いもなくひとつの素敵な風でした。
謹んで、ここにご冥福をお祈りいたします。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます