
名前 = サリンジャー
タイトル = ノー・ニューヨーク(1978年)
アーティスト = ティーンエイジ・ジーザス&ジャークス、コントーションズ、DNA、MARS
コメント = ロック史に残るオムニバス盤は色々あるけど、このアルバムほど異質で存在感を醸し出してるものは無いだろうな。70年代後半のニューヨークには『ニューウェーヴ』から文字って『ノーウェーヴ』と呼ばれたシーンがあった。80年代のニューヨークアンダーグラウンドには『ノーウェーヴ』を支点として既存のロックの概念をぶち壊すバンドが多く活動していた。ソニック・ユースもジョン・スペンサーも彼らの影響下にあるからね。姿勢や精神的な面でとくパンクがそんなふうに語られてるけど、サウンド的には70年代のロンドンパンクもニューヨークパンクもピストルズやラモーンズを筆頭にして大半は50年代のロカビリーや60年代後半のサイケ/ガレージバンドに影響を受けていた事は認めなきゃいけないよ。
『ノーウェーブ』はパンクの精神を音でも実践した本物のパンクと言ってもいいだろうな。実際に楽器のテクニックどころかギターのチューニングさえもできない連中が感性だけで突っ走ったシーンだった。それが『アヴァンギャルド』とか言われたりするんだからやっぱりロックは面白い。楽器に精通したミュージシャン達が暇つぶしにする『アヴァンギャルド』は退屈この上無いけどね。
ここにはリディア・ランチのティーンエイジ・ジーザス&ジャークス、そして以前ティーンエイジ・ジーザスにいたパンキーでファンキーなサックス奏者のジェイムス・チャンス率いるコントーションズ、後にアンビシャス・ラヴァーズを結成したアート・リンゼイ率いるDNA、そしてMARSの計4バンドの曲が4曲ずつ収録されている。リディァ・ランチはパティ・スミスが大嫌いだったらしい。彼女の目には知的で文学チックなニューヨークパンクは胡散臭く映ったのかもしれない。ジェームス・チャンスはフリージャズに影響を受けながらも、当初はパンク的なアプローチで黒人相手のクラブでハチャメチャなサックスをプレイしていた白人だった。ちなみにプロデューサーはブライアン・イーノ。イーノ在籍時のロキシー・ミュージックが好きな人にも一聴の価値あるよ。イーノはこのシーンに目を向けた最初のイギリス人であり、『ノーウェーヴ』のシーンをアルバムとして記録した功績は大きいと思うな。三年前にCD化されて涙した人も数知れず?