Songlines/Derek Trucks Band (2006)

2006年02月24日 |  SNOWMAN's BLOG
 待望の Derek Trucks Band(以下DTB)の最新スタジオ録音盤。前作がライヴ盤だったので、スタジオ盤としては『Soul Serenade』(2003)以来のリリースですが、録音順でいうと『Joyful Noise』(2002)以来になります。ジャズ色の濃い崇高とも言える芸術的なムードが漂っていた『Soul Serenade』に比べると随分とフレンドリーなムードに満ちています。これまでゲストに頼ったりして歌物は借り物的だった DTB ですが、新しくヴォーカルメンバーとして加わった Mike Mattison が、ソウルフルなヴォーカルで DTB に一本の芯を通している一方 Derek Trucks のギターはより多彩な表現になっているように感じられます。ギタリストとして、バンマスとして、ソングライターとしてバランスよく進化している Derek Trucks の近況ということでしょうか。

 『Songlines』という意味深げなタイトルは一体なんだろうか。確かに今作はヴォーカル曲主体で、デレクは歌伴中心だし、あくまでもバンドとしてのまとまりを示しているようにも聞こえますが、歌伴にちりばめられたギターは相変わらず素晴らしいことには変わりありませんが、パラパラと内ジャケを眺めていたら何やら意味ありげな文章がありました。つたない英語力なので真意かどうか怪しいですが、どうやらこのアルバムは様々な種族の先祖が残した原生的な音楽に体するリスペクトがコンセプトなようで、Songlines は土着の創世神話からとったように書いてありましたが...。

 このアルバムのイントロとしてまさにコンセプトに沿ったようなユニゾンによるプリミティヴなムードの Volunteered Slavery に続いてモノトーンの画像がカラーに切り替わるように始まるソウルフルな I'll Find My Way はポップな一面もあり、DTBの新しい傾向でしょう。トラッドなブルースの Crow Jane を軽くはさみ、インスト曲の Sahib Teri Bandi/Maki Madni はこのアルバムのひとつのハイライトと言えます。敬愛するパキスタンのシンガーNusrat Fateh Ali Khanのカヴァーであり、オリエンタルなフレーズが特徴的な大作と言えます。続くChevroletではドブロでアコースティックブルースを軽く決め、ゆったりドリーミングな Sailing On、ホットなソウルチューンの Revolution のあとは軽めのブルーアイドソウル風の I Rather Be Blind, Crippled, And Crazy、ポップなイントロからサザンソウル風にせまる All I Do と続き、民族音楽的なリズムのインタールード的なインストの Mahjoun をはさみ、ゴスペル調の I Wish I Knew では図太いスライドが炸裂、そして最後再びオリエンタルなフレーズがゆったりと心地よい This Sky まで実に楽しませてくれるアルバムです。

 ソウルフルなヴォーカルを軸に、狭義のブルースにとらわれることなく、新しい面も見せつつまとまり感のあるスタジオ盤に仕上がっていると言えるでしょう。とはいいながらも内心は次は『Soul Serenade』の続編的なギターアルバム出して欲しいなとも思うのでした。
  1. Volunteered Slavery (Rahsaan Roland Kirk)
  2. I'll Find My Way (Derek Trucks, Jay Joyce)
  3. Crow Jane (Public Domain)
  4. Sahib Teri Bandi/Maki Madni (Nusrat Fateh Ali Khan)
  5. Chevrolet (Lonnie Young, Ed young)
  6. Sailing On (Frederick Hibbert)
  7. Revolution (Jay Joyce)
  8. I Rather Be Blind, Crippled, And Crazy (Darryl Carter, Charles Hodges, Don Robey)
  9. All I Do (Derek Trucks, Mike Mattison, Todd Smallie,Yonrico Scott, Kofi Burbridge)
  10. Mahjoun (Derek Trucks)
  11. I Wish I Knew (Billy Taylor, Dick Dallas)
  12. This Sky (Derek Trucks, Mike Mattison, Jay Joyce)


Derek Trucks Band Official Website


Songlines
The Derek Trucks Band
Sony


ライヴ・アット・ジョージア・シアター
デレック・トラックス・バンド
ソニーミュージックエンタテインメント


Soul Serenade
The Derek Trucks Band
Columbia


Joyful Noise
The Derek Trucks Band
Columbia

Solace For The Lonely/RobinElla (2005)

2006年02月12日 |  SNOWMAN's BLOG
 どちらかというと女性シンガーはあまり聴かないのですが、時々ふと女性シンガーが聴きたくなります。今回選んだのは去年から気になっていたロビネラ(本名はRobin Ella Contreras)です。バッファロー・レコードのキャッチフレーズによると「現代のグッド・タイム・レイディ」とありますが、ジャネット・クラインのようなオールド・タイムなアコースティック・スウィングを期待するとちょっと違います。確かにグッドタイムミュージックのエッセンスを取り入れた趣きではありますが、基本的にはシンガー/ソングライターという風に捉えたほうが無理がないと思います。ルーツ系ではありますが、泥臭さをあまり感じさせません。昔で言えばマリア・マルダー、最近で言えばノラ・ジョーンズ、曲によってはボニー・レイットやヴィクトリア・ウィリアムスあたりも連想したりもします。

 メラニーのヒット曲 Brand New Key を除けば全て自作曲で占められ、ファーストインプレッションはもう少しキャッチーな曲があればいいかなとも思いましたが、ちょっとハスキーで癖のない透明感のあるヴォイスは繰り返し聞いても飽きのこないものです。ロック色のないアコースティックなアレンジの楽曲がほとんどで、全体の基調としてはカントリーが一番近いのかもしれませんが、前述のように土の香りがぷんぷん漂う田舎音楽と言った感じではなく、フォーク調であったり、ジャジーであったり、ノスタルジックなウエスタンスイング調であったりとアメリカーナな音楽をちりばめた振幅の中で軽やかに泳ぐコンテンポラリーなルーツ・サウンドといえるでしょう。清廉で落ち着いたムードのグッドミュージックだと思います。


robinella Official Website


ソーラス・フォー・ザ・ロンリー
ロビネラ
3Dシステム
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Solace for the Lonely
Robinella
Dualtone
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Robinella & the CC String Band
Robinella & the CC String Band
Columbia
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Mellow Dia/Zach Ashton (2005)

2006年02月04日 |  SNOWMAN's BLOG
 今時の言葉を使わせてもらえばオーガニックなシンガー/ソングライターということになりますが、ジャック・ジョンソンというよりもボブ・マーレーあたりの影響を強く感じます。ソフトなワールド・ミュージックとでも言えば近いのかもしれません。全体にゆったりと緩く、これから暖かくなって、春先から初夏のリラックスしたアウトドアライフのBGMにはきっと最高でしょう。

 ザック・アシュトンはフロリダ出身で、このアルバムは、実は2004年にブラジルで録音された2ndアルバムです。ブラジルのインディ系レーベルでリリースされていたものが2005年に国内発売となったようで、まだまだ世界的には無名なのかも知れません。3月には3rdアルバムもリリースになるようですが、WEBSITEで数曲聞いた限りでは、こちらもなかなか良い感じでした。

 ざっと収録曲を紹介しましょう。いきなり予想外の懐かしささえ漂うロッカバラード調の Tonight で始まり、軽快でポップな Berlin、ブラスをフィーチュアしたラテンナンバーの They Don't Knowc、フォーキーソウル風のDestinyと意外性のある序盤から中盤のレゲエとジャズが融合したような 500 Years、SSWっぽく陰のあるHelen、ジャック・ジョンソン的な暖かみを感じさせる出だしからレゲエ調になる Under The Sun、トロピカルなムードの BridgesChildren、そしてアイランドミュージック的な哀愁のある Ocean で締めくくります。多彩な表現ながらも決してくどくならず、アコスティックギターやオルガンのナチュラルで暖かみのある音もまた気持ちよく、さらりと聞かせるところが魅力ですが、ジャック・ジョンソンのフォロワーとして一緒くたにされて埋もれてしまわぬことをただただ祈るばかりです。


Zach Ashton Official Website


メロウ・ディア
ザック・アシュトン
アーガス・レーベル
2005/11/23発売


スウィート・ナッシング
ザック・アシュトン
アーガス・レーベル
2006/03/08発売予定