
名前 =斉藤洋
タイトル = ムーヴィング・ウェイヴス(1972年)
アーティスト = フォーカス
コメント = オランダ出身ロック・グループ、フォーカスの第2作目のアルバム。
私自身第1作目から「ハンバーガー・コンチェルト」までのこのグループが好きである。クラシック、ジャズの要素がごく自然にまざりあって表現されるまぎれもないロックである。他のプログレバンドのように(失礼)いかにもクラシックの曲がわざとらしく挿入されて違和感を感じるような事がない。ヨーロッパ大陸の文化を背景にしている事もあろうがおそらくタイス・バンレア(以下タイス)とヤン・アッカーマンの音楽性がかみ合ってグループを引っ張っており懐の深さとなって表現されているためであろう。
ヤン・アッカーマンは比類なき優れたギタリストで中々不思議な面を持つ。ロックギターを確立した青年が「高中正義」を演奏するとヤン・アッカーマンの音になる。そのことを指摘するとかえって本人は喜ぶものである。
タイスは技術的にもすばらしいキーボーディストと思う。時折みせるオルガンソロでのセンスの冴えはこの人ならではと思う事がしばしばである。片手間にフルートをふく。テクはあると思わないがセンスのよさは抜群であり、このグループの特徴を大きくかもしだしている。
前置きがながくなったがこのムーヴィング・ウェイヴスはフォーカスのなかで最も好きである。全体的に哀愁を漂い、じっくりと聴ける。とりわけB面のエラプションは特筆に値する。恐らく「朝焼け」の意味だろうが夕焼けのなかでじっくり聴くと感動物である。次第に盛り上がり曲の真ん中のシカケ(ギター、オルガンのハモリ)は胸をうたれ、ギターソロから短いオルガンソロに至るまでは涙物である。最後はバラードチックになり終わるが作りに無駄がない。 A,B面通してよいアルバムと思う。