ゆいもあ亭【非】日常

映画や小説などのフィクション(非・日常)に関するブログ

野暮を承知で、同じ素材でストレートなヴァージョンを作ればどうか?

2008-10-05 | 映画
クローバーフィールド/HAKAISHA

何だか批判がましいレビューばかり目にしていたので期待しなかったのがよかったのか、結構楽しめた。

「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」とはまるで違うではないか! 本作「クローバーフィールド」は決して擬似(フェイク)ドキュメントなどではない。怪獣映画の極端な変化球であると理解すればいいと思う。

上映時間85分という物足りないくらいの時間も見事な仕掛けの一部である。標準的なデジタルヴィデオテープの録画時間は80分だから、設定上の家庭用DVカメラによる記録なのでエンド・ロールを除いてちょうどそのくらいになるわけだ。

冒頭消し残しの映像により、(4月27日。ニューヨーク、マンハッタン島。早朝。父親不在の、彼女の住む高層アパートで、ふたりは前夜結ばれたらしい)ロブとベスのカップルが紹介される。続いてそのDVカメラの持ち主=ロブの兄ジェイソンによる撮影が始まる。5月22日夕方。恋人のリリーと一緒に、弟ロブの昇進・歓送パーティーをサプライズで用意している。参加者の一言を録画するつもりらしい。ところが、ジェイソンは飽きっぽい性格らしく、撮影を兄弟共通の友人ハッドに押し付ける。以下、終盤まで(プロの報道カメラマンでもないのに、記録を続けるのは不自然だと指摘する方もいらっしゃるが……、)ほとんどこのハッドの撮影である。

副社長に昇進し、日本への転勤が決まったロブ。ベスへの思いがありながらも、遠く離れた異国に行かなければならないのだからと、パーティーのさなか、喧嘩別れしてしまう。気にかけたジェイソンとハッドがロブをいさめるがロブは頑固だ。そのとき、突然建物を揺れが襲う!

吹き飛ばされてくる自由の女神の頭部。ビルの隙間から、何か巨大な破壊者の姿が垣間見える!

電気店のテレビに映し出される巨大怪獣。切り返すとビルの隙間にそれと同じものが立っているらしいとわかる。

破壊される建物に逃げ惑う群集は9・11の映像記録を意識している。リアリズムの怪獣映画だ。

マンハッタン島から脱出する橋では、怪獣の尻尾による攻撃でジェイソンが死ぬが、ロブは酷い別れ方をしたベスが気がかりでならない。電話が一瞬繋がった時に、ベスが高層アパートの部屋で逃げ遅れていると知る。彼女の高層アパートは怪獣が最も破壊している方角にある。その時点でパーティー参加者もかなり散り散りになっているが、カメラを持ったハッドと、マリーナの反対をよそに、ロブは助けに行くと言い張り、その主張に(ジェイソンを失った)リリーも賛成する。

地下鉄の線路を辿って移動する途中では怪獣の体に寄生していたらしい小型の怪生物(1985年版「ゴジラ」の巨大フナムシ=ショッキラスみたいなヤツですな。実際の見た目は「ミスト」の蜘蛛みたいな感じですが。)に襲われ、逃げ延びるが、そいつらに噛まれたせいでマリーナは命を落とす。

ベスをなんとか救い、軍のヘリコプターで逃げられるかと思ったのに(別の機に乗ったリリー以外は)怪獣に撃墜され、それでも逃げ延びるかと思ったら……。

また最後に4月27日の消え残り映像が。コニーアイランドの遊園地で遊ぶロブとベス。テープの残りも少ないから云々と会話しているのだが、その背景にとんでもないものが! 何かが空から降ってきて、海の沖合い、水平線の辺りに着水しているじゃないか!

おそらく、これがとりあえずの「はじまり」だったのだ。だから、未編集のこのDVテープは軍の資料になったのだ!

という終わり方。

うまいですよ。普通の怪獣映画なら、このあと主人公たちが生き延びて怪獣の最後を見るか、それとも最初からテレビで「あれは寄生体であると考えられます」みたいな意見を言っていた人物が主人公級になるのか。

続編はないと思いますが、野暮を承知で、同じ素材でストレートな怪獣映画を作るとよいかも。

エンドロール曲“ROAR!”(咆哮)も、確かに伊福部っぽくて感動した。