柑橘の実のふかみどりつややかに腕をのばせば届くところに
疲れたる感じに垂れる柿の実のあやうきまでに曖昧な色
読んだ本一冊読まざる本二冊 借りてる本は返しに行かな
クマバチが花にとまれば重力にキバナコスモスの花首まがる
黄の蝶と白の蝶とがからみあう見てはいけないもの見たのかも
歩道までおおいかぶさる草群にかわゆく付いている青い花
ダイレクトに地面にとまる昆虫の黒き翅もつ蜻蛉のしずか
コルチカムの季節がついにやってきた綺麗だけれど怖いその花
あした打つ注射の液は腕に入るそののちぼくはゆうぐれを待つ
ティーシャツの裏にびっしり貼り付いた自意識という鱗がさわぐ
_/_/_/ 未来1月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/