映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

「風とライオン」ルーズベルトの棍棒外交

2010-12-26 18:26:15 | 舞台はアフリカ

風とライオン」という映画はどう見ればいいのか。


勿論、主役ショーン・コネリーが演ずるモロッコ・ベルベル人のリフ族の首長ライズリの活躍がテーマ。


・・・19世紀末モロッコはオスマントルコの支配を脱したものの、ヨーロッパの列強に侵略され現地人も内紛を繰り返し、独立の気概高いライズリにとっては見るに見かねるだらしのなさ。アメリカ人を誘拐して関心をかい、堕落しきった現地スルタンあるいはそれを繰るフランスに一泡食わせようとする。その彼が誘拐したアメリカ人婦人(キャンディス・バーゲン)に示す男気や義侠心が映画の見どころ。しかしそれだけではない。


ちょうどこのころのアメリカは、1901年セオドア・ルーズベルトが大統領になり、それまでの独占資本家中心、堕落しきった「金ピカ時代」(アメリカ史に詳しい猿谷要氏の表現)から引き締めを図らんと「革新主義」を唱え張り切っているところ。


特に1903年には、フランスのレセップスがコロンビア政府と手を組み挫折したパナマ運河の建設運営をアメリカのものにしようと、パナマ内の親米派を支援しコロンビアからの独立を果たさせる。これが成功し国内人気が高まったところ。


そこへ1904年におきたモロッコでのアメリカ人誘拐事件。アメリカ人保護を名目に(まさかモロッコに利権獲得を狙ったとは思えないが、フランスを牽制する意味はあったであろう)軍隊を派遣し、国民の愛国心を煽る。あとは映画を見て。翌年には有名なモロッコ事件(第一次)がおきる。


この時期のアメリカ、特にセオドア・ルーズベルトが主にカリブ海で展開した強引な外交政策は「棍棒政策」とのニックネームをもつ。この言葉は彼がよく引用した「棍棒を手に、話は穏やかに」とのセリフに由来するという。この英語は”big stick diplomacy”。日本語の棍棒のほうがはるかにニュアンスを出していると思うが・・・。


映画のラストシーンでライズリがルーズベルトに当てた書簡で「私はライオン、貴方は風、嵐を巻き起こし砂塵は私の眼を刺し、大地は乾ききっているが・・・」を読みながらルーズベルトは何を思っ他たであろうか。


 


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