3月24日NHK衛星第二放送
イタリア耽美派の巨匠ヴィスコンティの「山猫」は文句なしに名作・・・
ヨーロッパの人にとっては、フランス革命が各国に波及し、各国が国家統一、近代国家に生まれ変わる=かっての貴族は没落する、そのプロセスを想起させる。
特にイタリアの、それもシチリアの人にとっては、それまでの歴史が苦難・屈辱に満ちた変遷・複雑なものであっただけに、感慨深い映画に違いない。(「ゴッド・ファーザー」の欄参照、映画で楽しむ世界史109章)
但しこの映画の題名はいただけない。山猫は主人公サリナ公爵家の家紋であるとのことであるが、ヨーロッパの人にはともかく一般には全く分からない。この題名は営業上大分損をしたのではなかろうか。尚、この公爵家のご先祖は多分十字軍の英雄と想像するが・・・十字軍史の中で、タンクレッドとかポエモンとかの騎士が活躍する・・・お詳しい方、専門の方の教えをこいたい。
ともあれこの映画の時節背景は、イタリア統一の完成直前、南部の雄シチリアナポリ両王国が、北のトリノから統一にのり出したサルデーィニア王国に併合され、やがてイタリア王国が生まれる、その一年前の話。 ちょっと前後関係だけ整理すると
①1858年、サルディーニアとフランスが「ブロンビエールの密約」により、フランスはイタリアの対オーストラリア戦争に介入しない、代わりにサヴォアとニースはフランス領にすることを約束。
②1859年、イタリア独立戦争中最大の戦い「ソルフェリーノの戦い」でサルディーニアが勝つ。
③1860年1月、ガリバルディなどシチリアナポリで愛国・統一運動を画策、4月、パレルモで武装蜂起勃発
④5月11日、ガリバルディがシチリアに上陸、5月27日、パレルモ入城いったん政府軍(スペインブルボン国王軍、法王軍)に敗退するが、島内は独立派が浸透している。
⑤9月、ガリバルディはナポリに移って政府軍を破り、10月26日、ヴィットリオ・エマヌエーレ二世とガリバルディの歴史的会見・・・ガリバルディがシリア・ナポリ等をサルディーニアに献上する。
⑥その間、シリア・ナポリでは人民投票などで、統一支持。 1861年、トリノでイタリア議会開催。
以上の推移を照らし合わせながら、サリナ公爵やその他映画の登場人物の動きを追うと良く分かる。何よりもサリナ公爵の複雑な感情・感傷・・・小説家だったらいろいろ書けるであろうが・・・あるいは最後にアンジェリッタとダンスをするがその意味合い・・・あの宴会シーンがなぜあれほど長かったのか、とにかくこの映画は凄い。
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