映画で楽しむ世界史

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「アラビアのロレンス」英の二枚舌外交

2010-12-26 18:33:33 | 舞台はトルコ・中近東

アラビアのロレンス」は間違いなく名画。必見を要するが、いったいこれはどこの国の話?アフリカと答えたら落第。アラブと答えても曖昧。サウジアラビアと答えるのが正解だろう。


アラビア半島が歴史に登場するのは、シバの女王とイスラム教教祖のムハンマド。その後イスラム世界の中心はダマスクス、バクダット、イスタンブールと移り、メッカの地は長らく忘れられたまま。オスマントルコは教祖にそれなりの敬意を表して太守を置いて大事に扱ってはいたようであるが・・・。


18世紀中頃より半島東部のネジド地方のサウード家が勢力を伸ばし、イスラム改革を唱えるワッハーブ運動と組んで王国を樹立するが・・・やがて国内が乱れエジプトの攻撃にあって一時滅亡・・・しかし1902年再度リヤドを奪回し「ネジド王国」を建てる。


一方、西のメッカを支配しているムハンマドの系統というハーシム家の太守フサインは、1908年からのトルコの改革を機にアラブ国家の樹立を図らんとする。


この動きに乗じたのがイギリスのエジプト高等弁務官のマクマホン。第一次世界大戦中の1916年、ドイツに組するオスマントルコを背後から撹乱せんと、フサインと秘密交渉を重ね、戦後の「アラブ国家」樹立を支援することを約束して、フサインに対トルコ反乱を起こさせる。


そこで登場アラビアのロレンス。彼の活躍は映画で見るとおりであるが、フサインの息子等と手を組み、メッカーダマスクスを結ぶヒジャーズ鉄道破壊を始めとする縦横無尽のゲリラ戦のうえ、トルコの死守するアカバなどを落とし更にはダマスクスに進軍する。


しかしここでアラブの諸部族が集まり統一国家建設の会議を開くが、各部族の意見は全くまとまらない。また何よりもイギリス政府はフランスと「サイクス・ピコ秘密協定」結んでおり、アラブの統一などやる気は全くない。とすれば、ロレンスのあのアラブのための男気は一体なんだったのか。彼の怒りは手に取るように分かるではないか。


その後政治力失せたメッカのハーシム家は、ネジドのサウード家に破れ、1932年「サウジアラビア王国」がアラビア半島の覇権を握る。1938年に油田発見、アメリカの石油資本が介入してくる。


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