映画で楽しむ世界史

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シチリーの蟹工船?「揺れる大地」

2010-12-26 11:40:08 | 舞台はギリシャ・イタリア
ヴィスコンティ監督のプロレタリアート映画「揺れる大地」


よく知られているように、イタリアの巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督はミラノの名門貴族の出身。ヴィスコンティ家は13世紀ミラノの大司教家にルーツをもち、歴代ミラノ公としてロンバルディア地方の大半を支配した。(15世紀ルネッサンス期、傭兵隊長上がりのスフォルツア家にとって替られる。)

そのヴィスコンテイ氏、若かりし頃共産主義に共鳴し共産党員だったこともあり「赤い貴族」などと揶揄される。しかし裕福な家庭で幼少の頃より芸術に親しんだ地は争えない。フランスのルノワール監督のアシスタントとして映画製作の道に入ると、当初こそ「ネオリアリズム」に徹した「郵便配派二度ベルをならす」(1943)「揺れる大地」(1948)を撮るが・・・。

「揺れる大地」はいわばシチリー版の「蟹工船」。
漁船や網を持たない弱小漁民が船主や網元に搾取されながらもがき苦しむ様子、家を担保に借金して独立しようとするがものの見事に挫折する様を写実的に描く。「海の挿話」という副題がついていて、シチリアの労働者を描く三部作の第一弾と位置付けていたようであるが、その後他の2作は製作されなかった。


ヴィスコンティ監督はその後1-2の映画を経て、1954年の「夏の嵐」のあたりから写実主義が耽美主義に傾斜してゆき、「山猫」「地獄に堕ちた勇者ども」「ルードヴィヒ」など他の監督では絶対作れそうもない名作を残す。ちょっとしたシーンもおろそかにしない丁寧な映画造りは日本の黒澤明と双璧だろう。








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