映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

パリ世紀末「フレンチ・カンカン」

2010-12-26 18:22:59 | 舞台はフランス・ベネルックス

6月15日NHK衛星映画劇場

1889年のパリ・・・爛熟?退廃?混乱?

映画「フレンチ・カンカン」は、フランスの画家ルノアールの次男が親父の絵を売った資金で映画監督となり、1954年ジャン・ギャバン、フランソワーズ・アルヌール主演で撮ったもの。題名どおり赤い風車のフレンチカンカンの物語。

1889年、パリ、モンマルトルにキャバレー赤い風車が新装開店、売り物はフレンチカンカン。あのフリル一杯のロングスカートの前を手で持ち開けながら、足を高く上げて踊るラインダンス。観客を喜ばすためのものとはいえ、よくもまああんなあけすけの、ストリップ・ティーズまがいのダンスが演じられたものだと思う・・・フランス官憲は取り締まるどころか、軍人、高官も我先にと観劇に詰めかけていたようだ。

1889年はフランス革命勃発から丁度100年目。

フランスは1871年の普仏戦争に屈辱的な大敗を喫し、以後パリ・コミューンがあったりして、政治が全く定まらない・・・王政か共和政か、オルレアン家かブルボン家か、対独強硬派か穏健派か、軍隊強化か左翼路線か、小党分立、行政が弱く強力なリーダーシップが存在しない。この年のフランスの出来事を並べて見ると・・・

①1月27日、「ブーランジェ将軍」が国会議員選挙に当選(その意味後記)

②1月30日、ハプスブルグ家の皇太子ルドルフ大公が自殺(マイヤーリンク事件として有名)

③2月04日、パナマ運河会社が倒産・・・レセップスがスエズ運河に次いで、パナマ運河掘削に着手するが失敗、1882年再建資金集めに関連して多くの議員に贈賄を行ったことが発覚、世論の共和政治不信を招く。この年会社倒産、運河建設はアメリカの手に渡る。

④3月31日、エッフェル塔完成

⑤5月06日、フランス革命100周年記念万国博覧会開催

⑥7月14日、フランス革命100周年国際社会主義者の大会、第2次インターナショナル結成

上記①の「ブーランジェ事件」とは・・・ブーランジェはもともと凡庸なフランスの軍人であるが、たまたま陸軍大臣になり、世間に迎合して共和制支持の姿勢を見せたり、対独強硬路線を主張して「復讐将軍」「ビスマルクをしり込みさせた男」として大衆的人気を獲得するが・・・。

徐々に王党派的体質を露呈し、1889年1月軍籍を脱し議員選挙に出馬、当選。その圧倒的人気を背景に、ナポレオン3世張りのクーデター計画が起き実施寸前までに到るが、最後には本人が腰砕けとなり、ベルギーに逃亡後自殺する・・・パリの世紀末の混乱を写すとともに、つまらぬ凡人がクーデターまで起こしかねないということで有名になった事件。

 以後フランスでは1894年有名な「ドレフィス事件」がおき・・・ここでは省略、「逆転無罪」という映画がある(「映画で楽しむ世界史」108章)・・・ フランスはやっと王党派が衰退し徐々に共和制支持が固まってゆくが、なにせ小党分立、弱い政治のまま第一次世界大戦に突入してゆく。

余談であるが、戦後まもなくに「銀座カンカン娘」という歌があった。「あの子可愛いやカンカン娘・・・」という出だし、高峰秀子、笠置シズ子演ずる映画にもなった。そこでこの「カンカン」の意味?確認したわけではないが、「フレンチカンカン」が頭にあったのではなかろうかと推測するが如何だろうか。

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