映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

アポカリプト

2010-12-26 14:58:37 | 舞台は中南米

この映画の宣伝用チラシには、メル・ギブソン監督の言葉が大きく載っている。「頭脳ではなく、本能に訴える映画を創りたかった」と。

確かにメルギブソンは「ブレイブハート」といい「パッション」といい、比較的単純なストーリーを一途な思いの主人公に演じさせ、迫力一杯、スリル満点の映像でこれでもかこれでもかと畳みかけ「本能に訴え」ようとしている。しかし単純にいえば、これら映画は歴史物を題材にしているとはいえ観客には「ダイハード」と同じ映画、冒険活劇もの。

それはそれで由としても、もう少し知識を得たい知りたいという情報追求型の観客には「大金をかけたのに、なんとももったいない映画」と言わざるを得ない。なにせ字幕では場所も時代も背景説明されないのだから。

いずれにしても少しこの映画の理解のために、少し疑問に思ったことをまとめておこう。

1、先ず問題はこの映画の題名の難しさ。

「アポカリプト」はギリシャ語語源で「黙示とか啓示」とか。聖書を読む人たちは「黙示録」でこの言葉の意味はすぐ分かるのかもしれないが、一般人にはとても無理ではなかろうか。

メルギブソンという人は、一寸気取ったことを言うのにこういう宗教絡みの用語を当然の如く遣い、説教臭さを隠さないという性癖があるのだろうが、あまり非キリスト教国での営業のこと考えないのだろうか。

 

2、宣伝用チラシには「マヤ文明崩壊前夜」とあるが、アメリカではこの映画の内容にはマヤ文明とアテスカ文明の混同(一部インカとの混同も)があるのではないかとの批判が起きているという。何故だろう。

メキシコ湾に突き出たユカタン半島低地に発生したマヤ文明は、遡れば紀元前10世紀まで遡るというが、最も栄えたのは4世紀から10世紀まで・・・いくつもの都市に石造の階段ピラミッドや神殿が造られ祭祀センターの役割を果たした。歴代王朝は主に天体観測に優れ暦に関心があったようだ。

しかしこの祭祀センターは急速に衰退し、その後は南部のチチェンイツァー、マヤパンなどの都市同盟が統治したが、1440年頃マヤパンの支配が終わり、小さな王国分立しあい争う無秩序状態に陥ったという。

チラシにいう「マヤ文明の崩壊」とはこうした歴史のいつの事をいっているのであろうか。

 

3、映画のラストシーンは、スペインの艦隊がこの地に上陸してくるところを描いていて、これからある文明が崩壊する・・・すでに腐った文明であっても崩壊のとどめは外部からの侵略による・・・ような受け取り方も出来る。

メキシコ湾ユカタン半島付近へスペインが来たのは、コロンブスがバハマ諸島のサン・サルバドル島にたどり着いてから四半世紀すぎ後の1519年。

スペインのメキシコ総督配下のコルテスがユカタン半島に上陸し「アステカ王国」に攻め入り、謀略で持ってアステカ王国を滅ぼすという有名な話。

そしてこのアステカ王国では太陽運行のエネルギーとして人間の心臓と血を生け贄として捧げる風習があったという。

 このアステカ王国とは・・・メキシコ中央高地で、①紀元前2千年紀からの「オルメカ文化」 ②紀元1,2世紀から建設が始まり、5世紀頃ピーク、8世紀には衰退した「テオティワカン文化」についで、 ③アステカ人か「神の選民メシーカ(メキシコ)」を称して故地アストランから南下し始め、1325年テスココ湖上の島にテノチティトランをを建てて都とした都市国家。

 

更に言えば、映画に出てくる熱帯雨林や宮殿(神殿?要塞?)の地形などを見ると、インカ文明が栄えたクスコのような気もする。

いずれにしてもこの映画は、少し真面目に考えると訳が分からなくなってくる。

 

 


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