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ミュンヘンなんて、どこ吹く風

ミュンヘン工科大留学、ロンドンの設計事務所HCLA勤務を経て
群馬で建築設計に携わりつつ、京都で研究に励む日々の記録

靴ひもエクストラタイム

2005-09-13 01:51:00 | 留学準備
お互いの仕事がひと段落し、白糸でかわしまくんと最後の打ち上げ。
焼き鳥のタレと塩を一人前ずつ頼み、生ビールを二杯飲む。なんだか落ち着かない。早々に切り上げて大学へ戻る。

院生室に戻り、掃除機をかける。
テーブルクロスを買ってきておいた新品のものにこっそり張り替えた。ささやかなお礼(と謝罪)のつもり。東急ハンズで買ったグリーンのつた模様のクロス。スチノリやら何やらが付着していた僕らの“作業台”が、元のダイニングテーブルに戻った。二ヶ月お世話になった院生室の方へ正直な思いをつづり、二人で置き手紙を残す。かわしまくんは明後日タイへ飛び立つ。僕は来月ミュンヘンへ旅立つ。

「やっぱり最後はここだな」
買っておいた缶ビールを開けて、きれいになったテーブルの上であらためて乾杯。これから半年間の過ごし方について、今日二人でつくったホームページの生かし方について、飲みながら話す。コンペの成果物をCDRに焼いて共有し、この夏のコンペはすべて終了した。「結果が出るのをミュンヘンで楽しみにしてるよ」「へんな時間に俺から電話がかかってきたら期待していいから」

玄関で別れる。
「じゃあまたね」「え、ちょっと待って、これでもう最後なんだっけ?」確かに、言われてみれば次に会うのは半年後だ。「…靴ひもちゃんと結ぶまで待って」それはお互いきっと万感の思いが込められた、最後の付け足し数十秒間。固く握手をして、半年後の活動再開を誓い合った。

「半年もあれば、なにが起こるかわからないからさ」両足の靴ひもを丁寧に結び直しながら、何度もかけられた言葉。コンペやらなんやらに追われて留学のことを頭の隅に追いやっていたけれど、自分は二週間後にはミュンヘンにいるんだ、と現実に引き戻された気がした。

そうか、たった半年の別れだけど、これからの二週間、僕は人に会うたびにこうやって別れを告げていくことになるんだ。そういえば今日高校時代の友達から久しぶりに電話がかかってきた。「食べ放題って興味ある?来月なんだけど…」「ごめん、僕来月日本にいないんだ」書類上はだいたい手続きは済んだけど、こういう“留学準備”は間に合うのだろうか?明治時代の海外留学じゃないんだからそんなに大げさに考えるようなことでもないんだろうけど、それでも、靴ひも結ぶような時間が僕にはもっと必要かもしれない。
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Back in the...1968

2005-09-10 15:59:42 | 留学準備
歴史系院生室で資料製作。
昨日買った赤盤&青盤をさっそくMDに録音したので、もれる音量に注意しながら可能な限り最大音量でウォークマンを聴く。気になった曲はそれが製作された時代背景などをインターネットで調べたりする。ビートルズは『HELP』と『1』しか聴いたことなかったので、特に中期~後期を扱った青盤の曲が新鮮。今まで知らなかったけど気に入ったのは『Back in the U.S.S.R』(ビーチボーイズの「Back in the USA」をもじっているらしい)。これは青盤の一曲目であり、初出はいわゆる『ホワイトアルバム』(1968)のこれまた一曲目らしい。心が騒ぐ感じなんだけど、どこかけだるい感じが、今の自分のBGMに合ってる。曲の前後に入ってるジェット飛行機の効果音が旅立ちを予感させるし。

訳している本の中でも舞台はちょうど1968年頃。
ヨーロッパで激動の60年代後半を過ごした主人公は、疲弊し、楽観的な希望を胸にアメリカへと旅立っていってしまった。
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それもまた運命

2005-09-10 10:09:34 | 留学準備
昨日は午後から歴史系の合同研究会があった。
D3の方が日本の城郭建築の天守閣の変遷について発表。比較検討できる対象が少ないので体系的な結論を出すのは難しいらしい。「これもあり、あれもあり」な散漫な内容に終わらないように、他の関連するような建物類型(金閣のような楼閣建築等)もまとめて調査対象に加えるようにとのアドバイスが先生方から出ていた。ほのぼのとした感じで質疑は続く。「天守閣っていつ登るものなんですか?」「信長や秀吉はしょっちゅう登っていたらしいのですが、江戸時代に入ると、参勤交代から帰ってきたときに登るくらいだったそうです」久しぶりに帰り、しみじみと自分の領国を眺めていたのだろうか。「天守閣って防衛上はどの程度役に立ったんですか?」「物見やぐらとしての役割は防衛上有益とは思いますが、通常は一つの城郭に一つしか設けられていないところを見るとそれほど実用的な施設ではなかったようです。天守閣に篭ったところで囲まれてしまってはお終いなので、そもそも城を囲まれないような政略を立てるほうが重要だった思います」その後、城攻めの仕方についてしばし説明される。「通常、城を攻める際には城兵の10倍の兵力が必要とされていますが、例えば大阪城の役では…」

全体の研究会終了後、鈴木研の個別研究会。
すずきせんせいが2009年度までをもって退官されるので、それについての説明が先生自身からなされる。「君たちは時すでに遅く…」と、僕らM1には博士課程に進学しても最後まで指導できないとの通告。博士に進学するなら、途中で研究室を移動するよりも、最初から三年間(以上)在籍できる研究室を選ぶようにと勧められた。そういったことも含めて、来週中に研究計画書の提出を求められる。僕は留学のこともあるので、先生にお願いし、個別に相談する時間をとってもらうことにした。来週の水曜日「もし進学するとしたら」という相談も含めて話を聞いてもらおうと思う。

夕方からは、久しぶりにだらだらと過ごす。
根津のドトールでボーっとしてから、千駄木のブックオフへ。しばらく立ち読みしてから、『バタアシ金魚』の1~5巻(全六巻なのだが6巻だけなかった)と、『The Beatles/1962-1966』『The Beatles/1967-1970』(いわゆる赤盤・青盤ってやつ)を購入。上野・御茶ノ水を回って春日に戻り、ラッキー飯店でチャーハンと餃子を食う。バターの味のするチャーハン。家に帰り留学の資料に目を通していると、急に眠気が襲ってきて気が付くと寝ていた。

今朝は早くに目が覚めた。
明日の読書会に備えて院生室で資料をつくろうと思う。
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コンペの提出 夏の終わり

2005-09-09 10:41:11 | 留学準備
精魂傾けてつくったプレゼンを印刷し、慎重にケント紙に貼り付ける。
隙間なくうまく貼れたのでふたりともはしゃいでいたら、プレゼンの上につばが一滴。「…あ(泣)」。二人顔を見合わせて一言「妥協はナシ」。もう一度印刷し、今度は一言もしゃべらずに貼り付ける。パントマイムのような数分間。貼り終わり、無言でがっちり握手。

梱包用のガムテープを買いに安田講堂下のローソンへ。
コンペやり始めたときは、夜中でも暑くてふうふう言いながらこの道を歩いた。毎日のように夜中にこの道を歩いていると、日ごとに暑さが和らいで秋めいていったのはうすうす感じていたが、今日はやけに涼しい。こんな時間に二人でこの道歩くのも、たぶん今年は今日で最後だろう。

明け方五時、梱包したコンペパネルを本郷郵便局まで提出しに行く。
これでいいのだろうか、何か忘れていないだろうか。この夏のすべてをかけてきたコンペの集大成。まるでマリッジブルー。時間外窓口で局員を呼び出す。「一番確実で、証拠も残る方法でお願いします!」「…この大きさだとゆうパックしかありませんけど、よろしいですか?」

「あ、秋味出たんだ。夏終わったね」「でもやっぱり今日はエビスでしょう」
ファミリーマートでビールを買って、安田講堂前広場の芝生の上で二人ひっそりと打ち上げ。長かった二ヶ月が本当に終わったのか実感がわかない。「おつかれさま、でいいんだよね」「いいんだよ」と確認しあってから乾杯。野良猫たちがニャアニャアと遠巻きに僕らの様子を伺う中、反省やら、今後の展望やら、なんやらしみじみと話す。「終わったんだ~!」僕は芝生に寝転んだ。うっすらと夜は明け始めていた。

院生室に戻って共用部分を片付けてから、ひとまず解散。
月曜日にもう一度集まって、この夏のコンペを締めくくろうと思う。いつのまにか夏は終わってしまった。そして環境系院生室での長い長い共同生活ももうすぐ終わろうとしている。




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ぶつかって、変わる

2005-09-06 06:47:04 | 留学準備
明け方、模型は完成間近に。

なぜか今朝は冷房の効きが悪い。
院生室で汗をにじませながら模型をつくっていると、早朝出勤した環境系の先輩が「ごくろうさま。暑そうだね」と言って扇風機を出してきてくれた。涼しい風を浴びて気持ちが生き返る。僕らの出したゴミでいっぱいになったゴミ箱も「今週は私がゴミ出し当番だから」と言って片付けてくれた。最初のうちは「環境系院生室がまるで意匠系院生室みたいになっちゃったね」なんて小言を言われたこともあったけど、最近は、通りかかるたびに興味を持ってコメントしてくれたり、眠くてつらいときにお茶飲みながら話し相手になってくれたり、中には模型を手伝ってくれたりする人までいる。「俺は、努力は隠れてするべきっていう考え方は違うと思うな。わかりやすく頑張ることで変わるものもあるんだから」とかわしまくんは言う。僕らは院生室の暗黙のルールをいくつか無視してしまっている。夏休み中で人は少ないとはいえ、迷惑もかけているだろう。でも、さぼることなく継続して真摯にやってきた姿勢や、ことあるごとに院生室の皆さんに情報を開示して説明してきたことが、二ヶ月目の今、認められて、環境系院生室の空気を変えてきているのかもしれない。そうです、僕らはなにも特別なことをしているんじゃないんです。カタチは違えど、環境系院生のみなさんと同じで、建築についてただ真剣に考えているだけなんです。応援して見守ってくれている方たちのためにも、中途半端なものは絶対に出せないと気合が入る。

午前中病院に行ってから、留学関連の書類を出しに担当の先生のところへ。
航空券の手配が完了したということで、旅程を提示される。前回まで提示されていたのは「成田→ソウル→ロンドン→フランクフルト→(電車)→ミュンヘン」というものだったが、変更があり、「成田→香港→ロンドン→ミュンヘン」に決まった。乗り継ぎを二回すると直行便よりも航空券が10万円ほど安くなるそうな。10月1日出発で到着が2日昼。オクトーバーフェスタは3日が最終日なので、到着した日からすぐに参戦しなくては。

夕方、不眠不休でつくってきた模型がようやくできあがる。
少し眠ってから、夜中に模型写真を撮影。完成まで想定以上の時間がかかってしまったけど、時間をかけたなりの模型に仕上がっているし、僕らの言いたいことはこの模型にすべて集約され表現されている。模型は提出できないコンペなので、あとはそれを伝えるためにどれだけ効果的な写真が撮れるか。撮影終了後、使える写真を選り抜いてから、解散。締め切りも近い。いよいよラストスパートだ。

久しぶりにベッドで寝れる。
家に帰りメールチェックすると、卒業設計を手伝ってもらった多摩美の友達からメールが来ていた。とてもうれしい。赤レンガ倉庫の卒制展以来連絡を取っていなかったのだが、僕のblogを読んでいてくれたらしく、「留学気をつけて行ってらっしゃい!」な内容だった。彼女から僕への檄。
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他との接触、影響でグニャグニャと変化した自分のフィルターによって 個人的な触感や感情をこして目に見える形にする。これって表現の共通の芯で 建築家もアーティストと呼ばれる人たちも同じことしているのにとても心惹かれます。
帰ってきたとき、こみやまくんのフィルターをとおしたミュンヘン、海外の世界はどんなモノとして作品に表れるんでしょう、楽しみです★
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彼女はアーティストで、とても敏感な感性を持っている。今「修行の日々」を頑張っている彼女のように、僕もミュンヘンに思いっきりぶつかって、自分をぐにゃぐにゃにしてきたい。
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来春もまた“まぐ”ろう

2005-09-04 09:21:07 | 留学準備
夕方、Plastructを買いに御茶ノ水に行く。
前回はバイト先で必要だったが、今回は自分たちの模型のために必要。レモンに行って買い占めた(ごめんなさい)後、足りない分をオリオンモデルで購入。頻繁にこればかり買いに来るので店員さんは興味を持ったらしい。「あれ、お客様、この前もこれを大量購入されてませんでしたっけ?何をつくられてるんですか?(興味津々)」「建築模型です。窓枠とかつくるといっぱい使っちゃうんですよ」「へえ。ここそういうお客さんも来るんですねえ」安い買い物でもないので、いちおう領収書をもらう。「“建築模型材料代”でお願いします」「“模型材料代”でもよろしいですか?」そこは、画材屋ではなく“モデリストプロショップ”なりのこだわりがあるらしい。

晩飯は久しぶりに「まぐろ市場」で“まぐっ”た。
行き詰ったりすると気分転換も兼ねて二人でここによく来る。ここでどんぶりをほおばりながら話しているうちに問題が解決することも多い。注文するものはいつもだいたいおんなじ。ばくだん丼かネギトロ月見丼。「これ本当に大盛りですか?」「追加で味噌汁ください」「二人分スタンプ押してください」この三つの台詞は来るたび毎回言ってる気がする。

結局まだ模型は完成していないけど、先は見えてきた。
いくつか修正点を発見し対処。駆け込みで提案の密度が上がる。今までやったことのないような材料の使い方を今回はいろいろ試している。狙ったとおりの効果が出ればもちろんうれしいけど、狙ってもいない効果を見つけたときのほうがもっとうれしい。院生室の共用机を作業台として使わせてもらっているので、ひととおり作業を進めると、次の作業に移る前に机の上を片付けることにしている。もう使えないような端材を集めて捨てながら、二ヶ月近くにわたる共同作業(もはや共同生活に近い)を締めくくる今回のコンペへの意気込みを確認しあう。「来月からミュンヘンだろ。これがこみやまの遺作になるんだからさ。俺も最後まで徹底してやりたいと思ってるんだよ」こらこら勝手に殺さないで~!せめて来春お互いスキルアップした状態でもう一度コンペに挑戦するまでは、僕は死ねないさ。
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力任せは危ない

2005-09-03 12:19:00 | 留学準備
院生室のソファで眠りこけ、午後三時に起こされる。
さっそく模型作業に復帰。隣のテーブルでは環境系の四年生(&研究生)たちがそわそわと落ち着かない雰囲気。今日の夕方五時半から院試の結果発表があるらしい。母国語のDVD映画をボーっと観ている留学生がいるかと思えば、カラ元気の大声でどうでもいいことをしゃべりまくる四年生もいたり。みな一様に不安そうな表情。何度かフライングしてすごすごと引き返してきたりした後、ぞろぞろと連れ立って出て行ったまましばらく帰ってこなくなった。いよいよ発表のときか。

コンビニで飯を買って遅めの昼食をとっていると、四年生たちが戻ってきた。
「受かりました!」環境系の先輩でもない僕にまで笑顔で報告してくれる彼らがかわいい。この部屋で話していた面々は全員受かったようだ。僕もわがことのようにうれしい。というかほっとした。さっそく合格記念パーティーの日取りを決めだす彼ら。げんきんなやつめ。その後も環境系に合格の決まった四年生がパラパラと報告に訪れたが、あいにく環境系の院生は学会大会で出払ってしまっているので、たまたま来ていたいわもとくんと僕が応対。「四月からよろしくお願いします」って言われても僕たちはここの人じゃないからなあ。僕らを見て「(あれ、ここ環境系の院生室であってるよな?)」みたいな表情でいぶかしむ四年生がいたのも無理はない。

夜中に友達から「コンペ頑張って」メールが届いたので、「そっちも頑張って」と返信。

そのまま明け方までコンペ作業。
もうとっくに完成しているはずの模型がいまだに組みあがらない。なかなかはかどらないので、あせる。ゴールデンボードが硬い…。「こみやま、力任せに刃を入れると危ないぞ」「わかってるって~♪(ザクッ)…う゛ぁ!」左手親指からぽたぽたと垂れる血液に青ざめる僕。かわしまくんの応急処置でなんとか消毒し絆創膏を巻いてもらったが、僕は呆然。しばらく放心状態で椅子にへたり込んでしまった。簡単な作業を分担させてもらう。

昼頃になっても血が止まらないので念のため病院へ。
東大病院の救急外来窓口に行く。受付で名前を書いて事情を説明し、廊下で待たされる。もしかしたら縫われる(人生初)のではないかと不安。休日のせいか、うつろな目をしたドクターたちが廊下を行ったりきたりしている。「(この人が担当だったらやだなあ…)」と思いながら様子をうかがっていると、窓口から僕を呼ぶ声。診察室で待っていたのは整形外科の爽やかな若いドクターだった。ベッドに仰向けに寝かされる。開口一番「ああ、これね」見慣れた傷らしい。「縫うような傷じゃありません。指先は血の巡りがいいからなかなか血が止まらないんですが、心配ありませんよ。もう止まりかけてますしね。処置はしますが、皮膚が周りから伸びてきて自然に回復するのを待つしかないので、治るまでには二週間くらいかかりますね」治療(といっても軟膏塗ってガーゼをぐるぐる巻きにするだけだが…)を受けて少しほっとした。「また月曜日に様子見せにきてください」

「濡らさないでください。ぶつけないでください」と言われているので、左手をかばいながらシャワーを浴びる。とっても浴びづらい。

昼飯を食って、大学に復帰。
今日中に模型を絶対完成させる。ただしあせりは禁物…。
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一日がおよそ72時間

2005-09-01 21:32:09 | 留学準備
一昨日から今日にかけての三日間は、一つながりにバタバタと過ぎていった。

一昨日はAUSMIP三期生の顔合わせ飲みがあった。
新宿からふらふらと家に帰り、留学関係の書類を揃えたり、コンペ模型の修正をしたりしていると、いつの間にか夜が明けてしまった。コンビニ飯を食ってから、財布を落としたときに取引停止してしまったカード類を復活させるために郵便局や銀行を回る。その帰り道に今度は通帳を落としてしまい、それを取りに行ったりしていたのでやたらと時間がかかってしまった。

大学に戻り、そのまま鈴木研の立原研究会に参加。
今日は次回の出版社とのミーティングに向けて資料作成をしたのだが、こっくりこっくりしていたのであまり戦力になれなかった。僕は立原のスケッチをカード化したものを関係のある項目ごとに分類する作業を分担していたのだが、油断すると、寝ぼけた僕の手から勝手にカード類がこぼれ落ちているだけの瞬間があったりした。友達にミント味のタブレットをもらって必死に抵抗したのだが、結局こっくりこっくりしたまま終了。でも、僕以外の二人の活躍で、「期待以上にいい資料ができた」と先生に言ってもらえた。

研究会終了後、コンペの模型づくりに復帰。
明日から近畿で建築学会の大会があるので、昨日まで泊りがけで資料作りをしていた環境系の院生たちはすでに出発してしまったらしく、院生室には僕一人。借りてあったCDを小さめの音量でかけながら、鼻歌交じりに、図面にあわせてしこしことスチレンペーパーを切る。ときどき休憩し、院生室の本棚にあった『バタアシ金魚』(望月峯太郎)をついつい読みふける。

明け方ごろ、万博に行っていたかわしまくんが帰ってきた。
新宿着の夜行バスから降りて、そのまま大学に来たらしい。進行状況を確認しあい、今後の予定を決める。今日は夜集合し二人の作業を再開することにして、いったん別れる。

延滞していたCDを返しがてら、白山のフレッシュネスバーガーに行って朝食。
ねぎミソバーガーをほおばりながら、読みかけだった『となり町戦争』を一気に読み終える。帰り道、文房具店に寄ってマグネット式のフックを買った。シンプルでかっこいい。これで環境系院生室に僕の名札をかけるんだ(期間限定で)。ほとんど客の入らない店らしく、レジのおばちゃんが妙に親切にしてくれた。こういう場末な感じな店にもちゃんとおしゃれな文具は置いてあるもんなのだな。

家に帰りシャワーを浴びると、いつの間にか寝ていた。
起きたときにはもう四時。やっぱり誰もいない環境系院生室で、模型づくりを再開。
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走れよ!

2005-08-31 04:31:17 | 留学準備
『文体とパスの精度』という本がある(はず)。
村上龍と中田英寿の共著だったと思う。僕はこの本を読んだことはないけれど、なぜか今夜、ふとその本のことを思い出したのだった。

僕は大学一年のとき『愛と幻想のファシズム』という村上の本を途中まで読んで、どう理解したらいいのかわからなくなり、彼の本から離れた。逆に、中田は『愛と幻想の…』を読んで村上のファンになったらしい。その理由が、今ならわかる。

「精度の高いパス」とは、必ずしも「受け手の足元にピッタリ到達するパス」ではない。時には受け手の一歩か二歩先を狙って放ったパスの方がよい場合もある。中田は代表になった当初「カズを走らせるパス」を出したとして物議をかもした。スーパースターカズに走って球を取りに行かせるとはなにごとか、と。でも中田のその「受け手を走らせるパス」には人だけでなくゲームを前へと動かす力があった。いや、一歩先二歩先に放たれたボールは、日本サッカー界全体をも動かしてしまった。

村上の文体も、きっとそうなんだろうと思う。
表現活動って、きっとそうなんだろうと思う。
で、僕は?

自分の足元ばかり見てボールを待っていても、中田や村上からパスは来ない。視線を上げてフィールド全体を見渡せば、彼らからのパスは自分の一歩先二歩先に出されているのかもしれないのに。中田のように意識的に目線を上げて視野を広げないと、いつかどこからもパスは出てこなくなってしまう(それに、出し手としての自分だって、いつまでも安全なバックパスに逃げていてはいけないのだ)。「カズ、走れよ!」ボールを追おうともしないスターに対して放ったとされる中田のこの言葉が、なぜか今日は頭から離れない。

「知っててその選択肢を“選ばない”のと、知らなくてその選択肢を“選べない”のとでは、違うよね」
今夜、刹那的に甘美な数十分から得たものは、「走れよ!」というゲキだったのだろうか。
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通じる/通じない

2005-08-30 17:20:38 | 留学準備
模型づくりの合間に休憩がてら用足し。

ミュンヘン工科大学からきた書類を一号館三階の松村研に受け取りに行く。
担当の秘書さんが留守だったので、別の秘書さんから受け取る。全文ドイツ語なので読めない。たぶん、建築学科に正式に受け入れが決まりましたよ、みたいな内容。あとでちゃんと聞いておこう。

そのまま同じ階の鈴木研へ。
明日の午後から立原研究会の作業をすることをすずきせんせいに連絡。先生のスケジュールを確認させてもらってから、資料とパソコンをお借りする手はずを整える。

歴史系院生室にも寄ってみる。
バリカンがどうのこうのと盛り上がっていた。これからどなたかの断髪式がある模様。

二階の環境系院生室に戻ると、なんばせんせいがちょうどやってきたところ。
「歴史系の学生がなんでいるんだよ」と冷やかされ、次回のDECo会の開始時間について言付けされる。

模型づくりを再開。
となりのテーブルから聞こえてくる会話に聞き耳を立てながら、かるく鼻歌混じりに、スチレンペーパーにカッターを入れる。
「…それでこの前の主将合宿にその有名な武道家が来たんすよ。で、自分組んでみたんすけど。こう来るなってわかってるのに体が防御姿勢とれないんすよ。あれはもう超能力でしたね」「へえ」「先輩は超能力信じない派ですか?」「俺は信じない派だな」「でもホントにあれは神だなって思いましたよ」「そんなにすごい力、悪用されないの?」「意外と実戦向きじゃないんすよ。誰にも効くわけじゃないみたいですし」「へえ」「この前、そのときは自分参加してなかったんすけど、自分の友達で相撲部の主将してるやつが合宿行ったんすよ。そしたらやっぱりその武道家が来てて。いくらでも押してみろ、絶対押せないから。みたいな流れになったらしくて。彼が代表して押したらしいんすよ。そしたら武道家はあっさり押し倒されちゃったらしくて」「あらら」「バツが悪そうに、外国人には効かないのかなあって笑ってたらしいっすよ」
大学の相撲部にも国際化の流れ。和製武道家受難の時代。

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