何度か寒の戻りのあった寒い日に、茨城陶芸美術館(笠間市)で開催中の企画展「ヨーロッパ陶磁にみるモダンデザイン100年・岐阜県現代陶芸美術館コレクション」を見てきました。

すべて岐阜県現代陶芸美術館のコレクションをお借りしたもので、門外漢の仙人には知識も興味もあまりない分野で、聞いたことのある名前も2,3窯だけですが、撮影可だったのでその一部をご紹介いたします。

19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパでは、工芸や建築、グラフィック・アートなどの多岐にわたる装飾様式アール・ヌーボーの全盛期でした。花やツタなど植物を模したものや流麗で有機的な曲線の装飾が特徴のこの様式は、陶磁器のデザインにも顕著に現れることとなり、美しく優雅な作品や東洋陶磁に倣った作品が次々と誕生しました。

またその後1910~30年代にかけて流行したアール・デコ様式は、大量生産に向かう工業化を背景に欧米から国際的な広がりを見せた芸術運動で、幾何学的な抽象文や大胆な色使いが特徴で、戦争景気に沸く時代を彩りました。
ヴェルサイユ宮廷文化が花開いたフランスは、アール・ヌーヴォーの一大拠点で、ブルボン王朝の支援を得て王立となったセーヴェルのシンプルで優美なフォルム、鮮やかな色彩や繊細な装飾などに格調の高さが現れています。

セーヴル(フランス) デイジー文コーヒーセット

エミール・ガレ(フランス) 人物文コーヒーセット

フェリックス・ブラックモン(フランス) 花鳥に虫文 三つ脚付き鉢

テオドール・デック(フランス) 草花文大皿 テオドール・デックはフランス陶芸のジャポニズムの時代を代表する作品を残しています。
ヨーロッパで初めて硬質磁器を生みだしたのは約300年前、ドイツの名窯「マイセン」で、中国や日本の陶磁器に憧れていた西洋が、ついに独自に生み出した最初の磁器でした。

マイセン(ドイツ) 花飾りカップ&ソーサー

マイセン(ドイツ) 花飾り四季のプット像時計・燭台

KPMベルリン(ドイツ) 水仙文カップ&ソーサー

ローゼンタール(ドイツ) カップ&ソーサー
紅茶で知られるイギリスでは18世紀中頃から上流階級から中流まで喫茶文化が浸透し始め、技術革新により新素材の茶器が普及してきました。

ウエッジウッド (イギリス) 花文ティーセット

ミントン(イギリス) カップ&ソーサー 花文 幾何学文 点文

ミントン (イギリス) 天使文透かし彫り飾皿
オランダのアール・ヌーヴォー磁器を代表する存在になったのは、うねるような独特のフォルムに軽やか色彩で花々を描いたエッグ・シェル(卵のように薄い磁器)の器で、1900年のパリ万博で評判を呼びました。

ローゼンブルフ(オランダ) 蘭文カップ&ソーサー

ローゼンブルフ(オランダ) カップ$ソーサー 三色スミレ文 リラに蜘蛛文
19世紀のアール・ヌーヴォー期の磁器でデザイン、技術両面で革新的な動きを見せたのがデンマークのロイヤル・コペンハーゲンなどの窯元でした。1779年には王立磁器製作所が創設され、後に民営化されますが、淡いパステルカラーの釉下彩や宝石のように輝く結晶釉の作品はアール・ヌーヴォー期の典型になりました。

ロイヤル・コペンハーゲン(デンマーク) 花文ティーセット 「マーガレットサーヴィス」

ユッタ・ジカ (オーストリア) カップ&ソーサー

ジノリ(イタリア) 馬の競技文コーヒーセット

アラビア(フィンランド) 三色スミレと果実文食器揃

イリーナ・イリイニチナ・ロジェストヴェンスカヤ(旧ソビエト連邦) 幾何学文カップ&ソーサー
この展示は6月22日(日)までの長い会期です。
休館日は毎週月曜日(祭日の場合は翌日火曜日)、観覧料/一般950円(70歳以上470円)です。