顎鬚仙人残日録

日残りて昏るるに未だ遠し…

菜の花漬け…いつもの河原で

2024年03月15日 | 季節の花

今年はやはり、いつにも増して暖冬でした。
去年より早めに訪れた久慈川支流の河原の土手では、もうすっかり満開の花が笑っていました。


開いた花が多く、開ききらない適度の花だけを摘むのには、思った以上に時間がかかりましたが、春の野に花粉まみれになってしばし憂き世を忘れました。


河原の菜の花は、ほとんどセイヨウアブラナ(西洋油菜)の野性化した交雑種で、この近辺ではセイヨウカラシナ(西洋辛子菜)も混じりますが、葉や葉の付き方で区別できます。
栽培種にはない野性の証しのような軽い苦みが後を引き、毎年この時期には摘みに来ています。


水郡線のキハE130系気動車が鉄橋を渡っています。JR水郡線は名前の通り水戸と郡山を結ぶ全長147キロのローカル線ですが、利用者の少ない線区もあり、廃線の話が時々持ち上がっています。


それでも何とか確保できた菜の花は、洗って熱湯に約10秒くぐらせてよく絞り3%の塩を擦り込めば菜の花塩漬けの完成、一日冷蔵庫で寝かせて塩が馴染めばおいしい春の逸品が簡単に出来上がりました。食べきれないのは小分けにして冷凍すれば、また後で春の味を思い出すことができます。

京都ではその風味と色彩が好まれて名物にもなっており、また花菜漬けという季語で多くの句が詠まれています。

寝足りたる旅の朝の花菜漬  稲畑汀子
花菜漬箸の終りに香りけり  能村登四郎
喪の膳にひとつまみほど花菜漬  近藤一鴻