顎鬚仙人残日録

日残りて昏るるに未だ遠し…

冬の偕楽園…いろんな竹垣を見る

2017年12月23日 | 水戸の観光
偕楽園の日々の園内管理は造園会社の方々が行っています。普段気がつかない竹垣にも、よく見ると細かい造園の技術が施されおり、四季の自然に調和して景観を盛り上げているのが分かります。
専門知識はありませんが、さながら竹垣の見本展示場のような園内を一周りしてみました。

偕楽園の名前がついている「偕楽園垣」、またの名を笠四つ目垣というそうです。縦の竹(立子)が一直線に並び、横の竹(胴縁)が交互に付き、その胴縁側に結び目が来るのが特徴で、真横から見た感じがすっきりとします。2014年2月の施工なので約4年でこれだけ自然に馴染んでしまいました。

一般的に見られる「四つ目垣」は、縦横に丸竹を組んで、交差した形が四角形になる透かし垣です。

偕楽園を創った9代水戸藩主徳川斉昭公の諡号が付いた烈公梅を、六角形の柵で囲っているのは「金閣寺垣」、丈の低い四ツ目垣風のつくりで、上部を割竹でおさえているのが特徴です。

※後でよく見ると、縦の竹(立子)と横の竹(胴縁)の並べ方は、背は低くても「偕楽園垣」の変形のようでした。

「矢来垣」も、竹を斜めに組合せ交差部を棕櫚縄などで結ぶ、竹垣でよく見かける形です。

矢来垣の上部を割竹で押さえたものが「竜安寺垣」、棕櫚縄の止め方に特徴があります

「建仁寺垣」は、京都の建仁寺に由来する代表的な目隠し垣の一種。割り竹の表を外側に向けて並べ棕櫚縄で結びますが、飾り結びが見られます。

「鉄砲垣」は、鉄砲をたてかけて並べた様子から名が付きました。棕櫚縄の結び方が作り手によって異なるため、その結び目が鉄砲垣のひとつの特徴にもなるそうです。

木の枝で作る柴垣の最高級は萩垣です。なかなか材料が手に入らないのが悩みですが、偕楽園では150群もある萩の大きな群落が、冬には刈られてこの萩垣になります。

茶室何陋庵の袖塀は、竹枝穂で編んだ竹穂垣で、それも両側で違っています。茶室側の竹穂垣は、「松明垣」というのでしょうか、細かい作業と棕櫚縄の結び方にこだわりを感じます。

茶室のアプローチ側の竹穂の形はネットで調べると「蓑垣」と出ていました。京都嵐山にある宝厳院の枯山水庭園「獅子吼の庭」にあるものが有名だそうです。雨樋の縦樋に見立てた棕櫚縄が下がっていて、ワビサビの雰囲気を出しています。

中門の袖塀は、「萩垣」と「鉄砲垣」の合体したもの、作った方の意気込みが感じられます。

偕楽園開設の精神を斉昭公が記した偕楽園記碑の左側上下はさすがに「偕楽園垣」、右手には「矢来垣」が見えます。
今まで見過ごしてきた園内の竹垣…、そこに残る伝統の技をじっくりと鑑賞して作った方々の労に報いたいと思いました。

※後で知ったことですが、竹垣には基本型ではなく、遊び心を入れて竹の配置を崩したものがあるそうです。日本の中世以来、書の世界から始まって、いろんな芸道に様式や空間の価値概念を表す「真」、「行」、「草」があり、基本型の「真」に対し、基本を踏まえながら異なるものを取り入れる「行」、型破りなもの「草」とされる形が、竹垣にも、特に四ツ目垣に多く見られるそうです。