始まりは土曜の夜のB級グルメの会でした。
散々、酒の肴にされた後、帰ろうと愛車に跨ると、後輪がパンク。
この日の会場は、お世辞にも治安のよいといえる場所では無かったので、悪意の悪戯に、何の怒り湧かず、二十キロ近い帰路を、ただただ重い車体を押すこと十キロ超。
深夜に上海中心街に開いている修理屋が在る訳もなく、途中でアシストさせていた電池も切れ掛かり、無人充電器の世話に。
汗まみれで、復興路まで、ようやく辿り着いたところで、暑くなり脱いで後部シートに掛けてあったハーレーの皮ジャケットが無くなっている事に気づく。
中にはパスポートに加え、ビザ更新用に就業許可証も入っていたはず。
その場に愛車を停め、真夜中の復興路を、最後に服を確認した充電ステーションに2キロ早足で戻ったが、当然あるわけも無く。
どっと力尽き、愛車に戻ると、不審なバンが愛車を物色中。
あわてて移動させると、残念そうに降りてきた男二人を尻目に、更に一キロほど押し、昼には修理をしている親父のいるテニス倶楽部の駐車場にようやく辿り着く。
そのまま、愛車を施錠放置し、タクシーを拾って帰宅。
先ずはパスポートの再発行が先決なので、シャワーを浴び、4時間ほど寝てから朝一で管轄の派出所へ。
日本語の上手い城管に助けてもらいながら調書をとられ、喪失届をもらう。
さて、日曜は休みなので、明日、浦東の公安出入境管理局に出向くかと思い、帰宅後、予備車両にスペアタイヤを積んで放置した愛車のもとへ。
このころから猛烈な筋肉痛が。4時間もライドブーツ履きで愛車を押した、足の裏には豆が。、
ちょうど修理屋が来たので、持参したスペアタイヤと交換するように交渉。彼らはタイヤ自体のぼったくりで儲けているので嫌がるが、相場の倍の技術料で交渉し、ようやく修理完了。
今度は予備車両を残し、愛車で帰宅するも、電源系が不安定に。
経験知から電池寿命が縮んだなぁ。と思いつつ、タクシーを拾って予備車両の回収に。
予備車両で帰宅と同時に、携帯に知らない女から電話。
訛りのある普通語に、よくわからんと言うと、外国人だと知っている。あなた、夕べ上着を無くしたでしょうと。
はは~ん。これが例の。と思っていると、取りに来るなら渡してくれるという。
上着には現金は一切入れていなかったのが幸いした。
指定されたのは、復興路を遥かに離れた、海防路の辻。
元々、この辺りも治安が悪く、蘇州側を挟んだ対岸の上海駅周辺と併せ、泥棒市で知られた場所。
紅袋に赤毛数枚を入れ、予備車両で駆けつけると、果たして、なくした上着を下げた3人組がやってきた。
交渉は、ものの2分で終了。無事パスポートと就業許可証は手元に戻り、冒険は終わり。
結局、多少高くついた勉強代と筋肉痛だけが残された。
得た教訓は、
上海ではお金で大体の事は解決できる。
アンダーグラウンドの社会は、革命前と全く変わっていない。
という2つの事の再認識だった。