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キキ便り

アメリカ便り、教員・研究者生活、シンプルライフ、自閉症児子育てなど

日本ホームシック&ファンタジーの理論

2010-08-09 06:59:28 | 里帰り
アメリカに戻ってきてから、14歳になったばかりの息子は「うつ」の日を過ごす。 

「うつ病」と診断されているわけではないが、自閉症にみられる思い込みの強さと思春期の感受性の高さが相乗効果をかもしだし、気持ちが不安定らしい。

食欲がぐんと減り、沈んだ顔で部屋をいったりきたりし、不眠の日が続く。

里帰りの写真をみては涙ぐみ、日本の話をすると、思い出すからやめてくれと怒りだし、もう一度、日本へ出発した頃に戻れたらと語る。

しかしこれは、今に始まったことではない。

4年前、日本へ里帰りした最初の晩、昼間地下鉄でいろいろなところを回ったことが楽しかったらしく、寝床で「こんなに楽しいなんて。。。アメリカに帰りたくない」と涙をほろほろこぼした。

旅行に連れていくたびに、帰る道中は気を落とし、時には涙を流し旅行が終わるのを悲しむというのがバターンだった。

昨晩、12時になっても眠れない息子はこう語る。

「日本にいった時、時間があっという間に過ぎてしまったんだ。昨日、日本行きの飛行機に乗ったような気がするんだ。どうして時間ってこんなに早く過ぎるんだろう。このままあっという間におとなになって、おとうさんとおかあさんが死んでしまって、僕も死ぬんだ」と涙を流す。

息子の悩みを否定せずに、誰でもいろいろなことを考え想像し悩むもので、大人への過程の思春期には悩みは積もるものだし、不安が多いのは当たり前と伝える。そして日本の楽しかったのはある意味でファンタジー(虚構の世界)にいたわけで、今は現実の世界に戻ったからそのギャップに悩むんだという風に説明する。

児童文学を以前勉強していた私は、子どもがファンタジーを通して、どのように精神的葛藤を乗り越え、おとなになっていくかという図式に興味を持ち、修士論文のテーマに選んだ。

子どもの読む絵本などには、現実ー空想ー現実というパターンで描かれているものが多く(たとえばモーリス・センダックの「かいじゅうたちのいるところ」)、ジョセフ・キャンベルの英雄伝説分析に潜在していた物語母型を用いて、現在の絵本が子どもの精神発達にどのような役割を持つかを分析することが研究の目的だった。

息子には、自分の研究の話をしなかったが、ファンタジーの世界(里帰り)でいろいろなことを経験することが現実の世界に住む自分の精神成長に役立つ、というかなり無理な解釈をしてしまったが、日本で経験したことが自分の糧になったことを認識し、次へ踏み出して欲しいと思う。こういう話をした後に、次のことを息子に伝えた。

「あなたはとっても大人になったし、お願いがあるんだけど。今うちの家族、転機で大変でしょう。この大変な時にぜひおとうさんを助けてあげて欲しいの。自分のエネルギーを内に向けると、辛いことばかり目に入るけど、それを外に向けて欲しいの。」

「よく分かったよ」と言い、息子は眠りについた。

どれだけ分かってくれたかどうか分からないが、このような葛藤ややりとりが成長の糧となって欲しいと願うハハである。

 
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1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Kくんへ (mom)
2010-08-09 08:59:41
楽しかった思い出が心の成長のプラスになりますように!

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