廃墟建築士 三崎 亜記 集英社 このアイテムの詳細を見る |
七階闘争、廃墟建築士、図書館、蔵守、の4作からなる短編集です。
どれも、建物に関係する物語で、建物をただの箱ではなく、人間もしくは命のあるものに近い何かとして扱われています。そしてそれをめぐる人間の姿。
やはり、三崎亜記は面白いです。現実にありえない、ばかばかしい設定で、リアルな人や社会をあぶり出すのが、本当にうまい人です。
七階闘争では、7階での犯罪率が高いと言うことで、七階をすべて撤去するという決定をした役所&多数派の市民と戦う、7階撤去に反対する市民の葛藤が描かれています。
七階階の犯罪率が高いからといって、市内の建物の七階をすべて撤去するなど荒唐無稽に見えるが、何故か人々はそれに疑問も持たず、反対派を攻撃し始める。反対派は、七階を守るために、歴史を語り、また撤去を阻害するための犯罪まがいの闘争を進める。
設定は、ばかばかしいけれど、人々の行動はかなりリアルで、”となり町戦争”と同じく、社会を鋭くえぐっていて、ビゴーの風刺画を見ているような気分になりました。
タイトルにある廃墟建築士も、環境問題に照らし合わせて読んだりすると、かなりリアルにばかばかしく、そして悲しい。
作者は、決して冷たい視線ではないのだけれど、とても冷静な視線でいつも人の集団を見ているのでしょうね。でも、この設定、すごく考えたのかもしれないけれど、この人にはそうやってものを見ていると、自然にふっと思いつくような、思考回路があるような気もします。
この先、また読んで見たい作家の一人です。(が、短編が多くて、なかなか長編出さないひとですよね・・・)