本が好き 悪口言うのもちょっと好き

読書日記です。っていうほど読書量が多いわけではないけれど。。。

序の舞 宮尾登美子

2006-02-12 | 小説
 正確な表現は忘れましたが、映画監督の岩井俊二氏が、”映画を見ながら、あ、ここは岩井俊二らしいなと思われたら、それは失敗。映画に入り込んでみていたら、そんなことは思わない” というようなことを話しているのをテレビで見た事があります。私にとっての”好き”な小説もそれと同じで、読みながらその世界にどっぷりと浸らせてくれて、周囲の現実を忘れさせてくれるようなものです。
 そんな本に出合えるとすごく嬉しいし、読み終えた時に、なんか旅行に行ってきて、自分がリフレッシュされたような、そんな気持ちになります。そういう意味で、本作品はとても私はとても好きな本でした。

 本作品は女性画家の上村松園の生涯を描いたものです。恥ずかしながら私は数年前まで、上村松園は男性だとばかり思っていて、女性だと知った時は、とても意外な感じがしました。絵を見れば、とても女性らしいのですが、とにかく明治から昭和にかけて、女性が画家としてこれほどまでに成功していたというのが、自分の中ではありえなかったのですね。結構今に到るまで、トップレベルの女性画家って、結構少ないですよね。もちろん、それなりにすごい人は沢山いますが、誰が聞いても知っているというような女性画家はあまり思い浮かびません。とはいえ、芸術家に限らず、近代以前に名を残した女性というのは、だいたいは波乱万丈の人生を送ったのでしょうね。

 松園さんの場合は、全くの男社会であった京都画壇で、ある意味女を捨てなければ、画業の追求は出来なかったのでしょうが、小説の中ではそういう反面、とても魅力的な女性に描かれています。また実際には、この時代に娘を絵かきにし、また未婚で子供を持つことを許し、最後まで支援した、松園さんのお母さんが本当にすばらしい。

 しかし、才能をもって生まれるということは、実はこれほどに苦しいものなのですね。やりたいことを見つけなさいと、今の社会は子供達をけしかけますが、本当にやりたいことをやり続けることは、さほどやりたくもないが、そこそこ我慢してやっていくより余程困難なのだということを実感しました。

 先週、ウチのダーリンが京都に行って、たまたま祇園で舞妓さんを見かけたと、写真を撮ったのを見せてくれました。それを見た時に、祇園に最近いったような気がして、いついったのかなぁ・・・と考えて見たら、その世界は自分の目で見たのではなくて、この本で見ていたのですね。もちろん、自分が比較的よくあの辺りに行く事もあり、物語の世界がかなり具体的に自分の頭の中で出来上がっていたともいえますが、それでもこれも一つのデジャヴでしょうか。宮尾登美子の作品ははじめてだったのですが、さすがです。引き込まれてました。

 また京都に行きたくなりました。