ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』を観て

2020年04月20日 | 2010年代映画(外国)
新作の『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』(タイラー・ニルソン/マイケル・シュワルツ監督、2019年)を動画配信で観た。

家族に棄てられたダウン症のザックは養護施設で暮らしているが、子どもの頃からプロレスラーになるという夢を持ち続けている。
そのため、憧れの悪玉プロレスラーであるソルトウォーター・レッドネックの養成学校に行こうと、施設から脱出する。

兄を亡くして孤独な思いのタイラーは漁師をしているが、他人のカゴから蟹をかすめ取り、挙げ句は追われるはめになる。
この逃げるタイラーのボートに、たまたまザックが隠れていた。

タイラーが行こうとする先はフロリダ。
ザックの憧れるプロレス養成学校は、途中のノースカロライナ州のエイデン。
タイラーはザックが途中まで同行するのをしょうがなく許し、二人は、それぞれの目的に向かって一緒に行動を共にする・・・

一見よくあるロードムービー。
だから結末に向かっての物語は、どちらかと言えば予定調和的とも言える。
しかしこの作品は、よくある作品の一つとして十把一絡げにして葬り去るわけにはいかない。

プロレスでヒーローになる夢を持っているザック。
片や、兄への思いを引きずりながら将来展望もなく、どちらかと言えばワルのタイラー。
この二人に、養護施設から逃げたザックを探す若い女性の看護師エレノアが加わる。

この作品のいいのは、障害者が主人公となるとよくあるような感傷的で同情を売るところが微塵もないところ。
それもそのはずで、主人公のザックを演じるザック・ゴッツァーゲンが製作のきっかけを作っていることからもそれは当然と言える。

その内容は、エンドロールで流れる“Running For So Long (House A Home)”ともマッチして心に沁みる。
【YouTubeより】


久々に見る、心が洗われるような清々しさ。
映像的にも優れたこのような作品が、もっともっと人々の目に触れるといいのにと切に願う作品であった。

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