ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

忘れ得ぬ作品・1〜『ミツバチのささやき』

2016年01月17日 | 1970年代映画(外国)
このブログは、過去の作品を自分の思い出と共に時系列的に記事にしようと思って始めたが、書きたい作品の順番が中々まわって来ない。
と言うわけで、今後は記憶を先に進めたり、後戻りさせながら書いていこうと思う。

今回は、心の襞に深く刻まれたまま忘れることができない作品のひとつ『ミツバチのささやき』(ビクトル・エリセ、1973年)について。

時は1940年頃、スペインのカスティーリャ地方の小さな村。
この村の公民館に移動巡回映画がやって来た。映画は『フランケンシュタイン』。
少女が水辺でフランケンシュタインと出会うシーンに魅せられた6歳のアナは、
姉イザベルから、フランケンシュタインは怪物ではなくて精霊で、村のはずれの小屋に隠れていると教えてもらう。
学校帰りに、イサベルに誘われたアナは村はずれの小屋へついて行った・・・・

少女アナはフランケンシュタインの友達になりたくて仕方がない。
それは単に子供の想像の世界だとしても、アナにとっては一番重要な関心ごとである。
それがある日、村はずれの小屋で実現する。
アナが鞄から取り出して兵士にリンゴを差し出す。
このようにして、自分のフランケンシュタインと巡り合ったアナの幸福感。

しかし、現実世界は子供の想像世界に容赦しない。
まだ、この現実社会を知らないアナを襲う衝撃。
医者は、時がたてば徐々に忘れていくだろうと言う。
本当にそうだろうか。
強烈な印象を受けた出来事は、いつまでも記憶に焼き付いたまま残るのではないだろうか。
現に、私だってこの作品のこの場面が焼き付いたままだから。
現実を受け入れられない少女は、またフランケンシュタイン・精霊を求めて想像の世界に入っていく。

この作品は、必要最小限のセリフと静謐な映像で、とても印象深く余韻も後々まで残る。
だけど、ほとんど語られていないスペインの1940年の時代背景も知っておく必要がある。
母親は手紙を書いては投函しているのに、兵士が射殺された後は手紙を焼いてしまう。
母親は誰に手紙を書いて、脱走兵と思しき兵士がなぜこの村で列車を飛び降りたのか。
これを繋げはエリセが言わんとする内容が想像できる。
このように省略した映像を見ながら、受け手はそれぞれの想像力を湧きたてられる。
かの『フランケンシュタイン』の作品と共に、アナの表情、瞳が脳裏から離れない。

(注:フランケンシュタインの名称について フランケンシュタインとは本来、モンスターを創造した男爵家の名であるが、
   モンスターには名がなく、モンスターはフランケンシュタインというイメージが昔からあって、そのまま使用した)

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1 コメント

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紹介させて頂きました。 (Sumi)
2016-08-28 10:14:09
勝手ながらこちらの記事を私のブログで紹介させて頂きました。
もし不都合がございましたら、お知らせ下さいませ(すみません)。
帰っていらっしゃいますように。
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