ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『恐怖のメロディ』を再度観て

2016年03月03日 | 1970年代映画(外国)
年齢を重ねるごとにますます創作意欲が旺盛なクリント・イーストウッド。
監督として巨匠の域に達した今、その原点をもう一度振り返ってみたくなって、デビュー作の『恐怖のメロディ』(1971年)を観た。

「“ミスティ”をかけて・・」今夜もデイブがDJを務めるラジオ局の電話が鳴った。
毎晩決まった時間に同じ曲をリクエストしてくる謎の女性。
やがてその女、イブリンと知り合ったデイブは、彼女に誘われるまま一夜を共にする。
だがイブリンの異常な嫉妬深さと、常軌を逸した行動を目の当たりにしたデイブは、彼女に別れ話を切り出す。
その日からイブリンの血も凍る報復が始まった・・・・
(DVDパッケージから)

当時、サスペンス映画とかサイコスリラーと言われ、それを期待して、少し物足りなさを感じたことを記憶している。
今回、観直してみたら、その宣伝文句自体に違和感を覚えた。
これは立派な恋愛ドラマと言ってもよい内容だった。ただ、当時まだその名がなかったストーカーもの。

イブリンも同意した一夜限りの、後腐れのない関係のつもりのデイブだが、その後、ねちっこくイブリンに付きまとわれる。
デイブには元々、少し関係がおかしくなったとしてもトビーという彼女がいることだし、当然、イブリンを断ち切りたい気持ちがよくわかる。
しかしイブリンの、何かにつけ、お構いなしの一途な思いも、この年齢になった今、なぜかよくわかる。
と言っても、相手の考え、生活を無視した行動には、やはりゾォーとするというか、当事者だとしたら堪ったものではないな、と思う。
そして、ストーカーの行動って、実際こういうものだろうなと妙に納得したりしてしまう。

このような観点からみると、当時、イーストウッドがどこまで意識していたのかわからないけれど、現在の視点からして優れた社会性も備えていると言える。
作品の完成度も高いし、やはり初期の段階から並みの監督ではないなと思う。
次回作が待ち遠しくなってくる。

後々の作品『バード』(1988年)で、チャーリー・パーカーの生涯を描いたように、イーストウッドはジャズにも造詣が深い。
なのでこの作品でも、DJが掛ける曲もジャズが主体となっている。
肝心の“ミスティ”は、ピアニスト・エロル・ガーナーの1954年の曲で、今はジャズ・バラードのスタンダードナンバーである。
折角だから、YouTubeからこの曲を貼り付けておこうと思う。


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