ポケットの中で映画を温めて

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『ジャン・ルノワールの誘惑 薔薇のミロワール』を読んで

2018年05月04日 | 本(小説ほか)
『ジャン・ルノワールの誘惑 薔薇のミロワール』(若菜 薫著:鳥影社、2009年)を読んだ。

本書は、ジャン・ルノワールの映画作品の本質と思われるキー・ワードを使い、
第1章 水、変身、放浪 として、『素晴らしき放浪者』(1932年)等、関連する9作品を取り上げて論ずる。
第2章は、境界、脱出、自由 で、『大いなる幻影』(1937年)を中心に『捕らえられた伍長』(1962年)、『どん底』(1936年)を論ずる。
そして、それ以降の章で、
『ゲームの規則』(1939年)は「浮気と戦争」
『黄金の馬車』(1953年)は「演技と人生」
『フレンチ・カンカン』(1955年)は「恋の輪舞」
『恋多き女』(1956年)は「浮気と政治」
『草の上の昼食』(1959年)は「エロスとしての風」とし、それぞれのキー・ワードで各作品を論じていく。

著者はジャン・ルノワールに相当思い入れが強いらしく、熱心に個々の作品を詳細に論じているが、読者の私の方は、なぜか、もっと醒めた立ち位置にいるような感じになってくる。
それは、著者がルノワールの作品を強引とも思える程に、そのキー・ワードでまとめようとしているからではないか。

私の考えとしては、ルノワールの作品は何かしらの言葉に閉じ込めればいいと言う代物ではなくって、もっともっと自由な解放されたものとして成り立っていると思っている。
最も著者としてもこれらの作品を知り尽くしているはずだから、当然にそのようなことはわかったうえで、著作する書物を創り出すためにキー・ワードをひねり出しているのではないか、と勝手に想像してみたりする。
いずれにしても、この著作は力作だと認めても、読後感としては期待に反した何か物足りなさが残った。

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