ポケットの中で映画を温めて

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『アラビアの女王 愛と宿命の日々』を観て

2017年08月29日 | 2010年代映画(外国)
新作『アラビアの女王 愛と宿命の日々』(ヴェルナー・ヘルツォーク監督、2015年)がDVDになっていたから借りてきた。

19世紀後半のイギリス。
裕福な鉄鋼王の家庭に生まれたガートルード・ベルは、オックスフォード大学を女性で初めて首席で卒業。
そして社交界にデビュー。
しかし、そこは彼女の生きる場所ではなかった。

そんな彼女に父親は、テヘラン駐在公使である叔父がいるペルシャへの旅を提案する。
父は、娘がすぐに戻ってくるであろうと目論んでいたが、ガートルード自身は、アラビアの砂漠の魅惑にとりつかれてしまって・・・

実在の人物、ガートルード・ベル(1868―1926)の物語。
彼女は、中東の各地を旅し、砂漠の民を研究する考古学者、諜報員として活躍していく。
そして、第一次大戦後に、オスマン帝国の支配からアラブの遊牧民ベドウィンを解放させ、イラク建国に情熱を注ぐ。

と、いってもこの映画は、副題“愛と宿命の日々”が示すように、ガートルード・ベルの二つの恋に焦点を当てている。
だから政治的な側面はほとんど描かれず、どちらかと言えば恋愛や、ガートルードと供の行く美しい砂漠の風景が鮮明な印象となる。
それと、「アラビアのロレンス」のT・E・ロレンスとのやり取り。

監督は、前回の記事でふれたヴェルナー・ヘルツォーク。
ヘルツォークとしてはたくさんの作品、特にドキュメンタリー作品を多く発表しているようだが、日本での上映はほとんど聞いたことがない(と思っている)。
だから、印象強い『アギーレ/神の怒り』(1972年)、『フィツカラルド』(1982年)の監督作品として、今回楽しみに観た。

その結果としての印象は、先の2作品にあるような“毒”がなく、オーソドックスでまともな作品なところが少々物足りない。
それに欲を言えば、現在に至る中東の問題点の暗示も見当たらないし。
もっとも、画面作りは丁寧でさすがであるが。

“愛する女性の映画が客に受けるでしょう。歴史上の人物を使えば、多少知識も増えたような満足感もあって。
それには主役のヒロインが大事、ニコール・キッドマンで行きましょう”
観ていて、なんか客筋を見られているようで勝手なことも思ってしまい、どうも冷めて感動できなかった。

でも、観かたは人それぞれだから「良かったよかった」と言う観客もいっぱいいる、とも思ったりして。

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