ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『海は燃えている〜イタリア最南端の小さな島〜』を観て

2017年03月04日 | 2010年代映画(外国)
ドキュメンタリー映画、『海は燃えている』(ジャンフランコ・ロージ監督、2016年)を観た。

地中海のイタリア領最南端のランペドゥーサ島。
その島の人々は、どこにでもありそうな普通の暮らしをしている。
刺繍に励む老女。音楽を流すラジオDJ。海へ出る漁師。
そして、松の木からパチンコを手作りし、鳥を探して遊ぶのが大好きな少年サムエレ・・・

監督のジャンフランコ・ロージは、ある一定の人たちの日常を写し撮っていく。
ナレーションもなく、鮮明な映像は、暮らしを静かな風景として映し出す。

しかし、この島にはもうひとつの顔がある。
北アフリカにもっとも近いヨーロッパ領の島として、アフリカや中東からの難民、移民が船でやってくる。
彼らにとって、島はヨーロッパの玄関口なのである。
島の人口が約5500人。
そこへ、年間5万人を超える難民、移民がこの数十年のあいだ来ている。
平和と自由な暮らしを求め、命がけで海を渡る人たち。
だが、途中で命を落としたりする人も多くいる。
船が浮いて見えるほど美しい海で有名な観光地の、もうひとつの姿である。

映画は、島の生活と難民、移民の悲劇を、ひとりの医師によって結び付けている。
しかし同じ島の中にいながら、島の人々は難民、移民と決して交わることがなく、過酷な運命を知らないみたいにみえる。
そのように島の日常は流れていく。

だが本当に島の人々は、そうだろうか。
あえてこの作品は、その接点に踏み込まずにいる。
観てみたかった疑問の残る箇所である。

この作品は、2016年のベルリン国際映画祭で金熊賞(グランプリ)を獲得したドキュメンタリーである。
そのような賞を取ったしても、私とすれば、ナレーションを多少入れてでも、もう少し踏み込んだ作品にしてほしかったと思う。

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