ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『エレファント』を観て

2017年08月23日 | 2000年代映画(外国)
目的の作品が見当たらなかったので、『エレファント』(ガス・ヴァン・サント監督、2003年)を借りてきた。

オレゴン州ポートランド郊外にある高校での、初秋の とある一日。
男子生徒のジョンは、酒に酔った父と車に乗って学校に到着。
父のだらしなさに呆れつつ、彼を迎えに来てくれるよう兄に電話する。

写真好きのイーライは、公園を散歩中のパンク・カップルを撮影。
アメフトの練習を終えたネイサンは、ガールフレンドのキャリーと待ち合わせる。
学食では仲良し3人組の女子、ジョーダンとニコルとブリタニーが、ゴシップとダイエットの話・・・
(Movie Walkerより一部抜粋)

学園構内での、いつもそうだろうような学生の日常風景が、他の生徒の行動も絡まって映し出される。
勿論、アレックスとエリックも、そう。
そんな日常に、内向的らしいこの二人が、宅配便で銃器を受け取ってから、状況が一変する。

この作品は、1999年4月にコロラド州コロンバイン高校で起こった銃の乱射事件を題材にしている。

しかし、監督のガス・ヴァン・サントは、事件に対する自己の解釈を一切示さず、ごく一般的な高校生たちの日常を、一人ずつ描く。
そして後半の出来事は、校内における二人の乱射の様子と打ち倒される学生を映していくだけ。
だから、提示された内容の解釈は、観客がそれぞれ引き受ける形となる。

そこにあるのは、銃社会としての国の問題が横たわっているのか。
というのは、アレックス、エリックは一人でも多くを殺すことが楽しく、殺人に対する罪の重圧感はない。
こうなると、もうゲームの世界ではないのか。

「それでいいのか」と言うのが、監督のガス・ヴァン・サントが言いたかったことではないか。
そのように、私は解釈する。
それにしても作品中に、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「月光」と「エリーゼのために」が流れる場面が印象深い。

この映画の上映時間は、わずか1時間20分の長さ。だから、再度観てみた。
すると、登場人物同士の構内でのすれ違いなど、緻密な計算がさりげなく施されていたりする。
テーマの鋭さとは別に、なるほどなと、映画的な凄さにも感服してしまう。

再度、内容に立ち返って、この作品に関連して思い出すのが、同事件をテーマとしたマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002年)。
銃社会。
資金を大量に持った者たちの発言権が強力、という社会をどうにかできないものか。
何も、このことは他所の国の話だけではなく、この国だって、金儲けのための武器輸出がまかり通るようになった状況と連動するのではないか。

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