ポケットの中で映画を温めて

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『魚と寝る女』を観て

2018年04月18日 | 2000年代映画(外国)
『魚と寝る女』(キム・ギドク監督、2000年)をレンタルで借りてきた。

湖に浮かぶ釣り小屋を管理する若い女ヒジン。
ヒジンはボートで釣り人たちに飲食物を運び、時には身体も売っている。

ある日、この釣り場に元警官のヒョンシクがやって来る。
恋人を殺害し逃亡しているヒョンシクは、自殺する場所を求めていた。
釣り小屋で拳銃自殺を試みるヒョンシクに、ヒジンは小屋の下からキリで彼の腿を突いて自殺をとめる。
このことを契機として、二人の間に奇妙な感情が生じ始めてきて・・・

孤独なヒジンはしゃべらない。それとも口をきけないのか。
そんな彼女は、影のあるヒョンシクにいつしか惹かれていく。

ペンチで針金細工をしながら毎日を潰すヒョンシク。
身体を求めるヒョンシクを頑として拒むヒジン。
その代用にヒョンシクが買った娼婦ウンアとの肉体交渉を、水中から覗き見るヒジン。

本作が4作目になるこの作品には、後のキム・キドクの特色がすべてと言っていい程よく表れている。

蛙を叩き殺して皮を剥ぐ。
ナイフで身を削がれた鯉が水中を泳ぐ。
ヒョンシクは自殺しようとして釣り針を飲む。
そのヒョンシクをリール竿で水から引っ張り上げるヒジン。
と思えば、自分から離れて行くヒョンシクを取り戻すため、ヒジンは股間に釣り針を入れてボートで引かせようとする。
その残酷さと、ゾッーとする痛々しさ。



朝靄の中に浮かぶ小屋と、湖の静寂な風景。
ヒョンシクとヒジンの間の会話のなさと、そこに漂う孤独。
そして、殺され水に沈むウンアと売春斡旋のマンチ。

この絵画のような映像によって描かれる絶望的な愛に、ただただ心を揺り動かされる。
キム・ギドクの作品の中でも、これは最も印象に残るうちのひとつと言えるのではないか。

これで、日本で観ることのできるギドク監督作品20本中、未見は『リアル・フィクション』(2000年)のみとなった。

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