ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『冬の小鳥』を観て

2021年02月09日 | 2000年代映画(外国)
『冬の小鳥』(ウニー・ルコント監督、2009年)を観た。

1975年のソウル。
新調してもらったよそ行きの洋服を着て、9歳のジニは大好きな父に連れられ郊外にやってくる。
高い鉄格子の門の中では、庭で幼い子供たちが遊んでいる。
ジニは父親と離され子供たちがいる部屋に通されるが、状況が分からず思わず外に飛び出してしまう。
目に入ってきたのは、門のむこうに去る父の背中。
そこは、孤児が集まるカトリックの児童養護施設だった。

自分は孤児ではないと主張するジニは、父に連絡を取るよう院長に頼む。
出された食事にも手をつけず、反発を繰り返すジニ。
ついには脱走を試みるが、門の外へ足を踏み出しても途方にくれてしまうのだった。

翌日、教会へ行くために子供たちは着替えていた。
頑なに周囲に馴染もうとしない反抗的なジニを疎みながらも、気にかける年上のスッキは、一人準備の遅いジニの世話を焼く・・・
(オフィシャルサイトより)

11歳のスッキは最初、施設に来て途方に暮れ頑なままのジニに意地悪をする。
しかし時が経つに連れ、二人は気の通じ合う大の仲良しになっていく。
そのスッキは外国に憧れ、アメリカ人の養子になりたいと拙くても英語を覚えようと努力する。
片やジニは、いずれ父親が迎えに来るはずと信じ、この施設から出たくない。

この施設には、年長で足に障害がある少女イェシンがいる。
イェシンは施設に出入りしている青年に恋しラブレターを渡す。
その返事をスッキとジニが受け取り、スッキは結果にワクワクするが、残念なことにイェシンは失恋する。

この施設の少女たちは、いずれ養子縁組という形で施設から出ていかなくてはならない。
イェシンも不本意ながら去って行く。
他の子たちはまだ幼くてあどけなくても、いずれ貰い手からの選別が待ち受ける。

傷ついて介抱していた小鳥も死に、スッキも憧れたアメリカへ去って行った。
ジニは自分の孤独の思いを、施設のみんなに送られてきた人形の縫いぐるみをズタズタにすることによって怒り表す。
そして、十字架を立てて埋めた小鳥の墓を掘り起こし、その穴をどんどん大きくして自分が横たわる。
死のうと顔にも土を被せるが、さすがに苦しくなって土を払いのける。
ジニはそっと、生きることへの現実を受け入れる。

フランス在住の韓国人ウニー・ルコントが、養子としてフランスへ渡った少女時代を映画化した作品である。
そのためか、愛している父から理由もなく突然に施設に入れられるジニの戸惑いと反感が、ひしひしと実感として伝わってくる。
ただ、その映像は深刻ぶらず、幼い子どもの抗うことができない現実をそのまま映し出す。
その現実をジニ役のキム・セロンの瞳の表情によって、観る者の心に深く染み通らせ認識させる。

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