また不幸な事件が起きた。今度はグアム島である。日本の秋葉原で起きた通り魔事件とほとんど同じような事件であった。例によって、日本のテレビ局は現地にスタッフを送り込んでの賑やかな報道合戦を展開している。衝撃的な事件で負傷者の大半が日本人ということで報道が拡大するのはやむを得ない。だが、どうもその方向性というか、肝心な部分に違和感を感じてしまう。テレビで現地の人が感想を述べていた。「百%安全のグアムでこんな事件が起きるなんて信じられない」。この言葉を追従するように報道が続く。安全に対する認識がちょっと違うのだ。
観光が最大産業のグアム島であり、現地の人が百%安全のグアムを主張することは分かる。だが、日本のマスコミが同じ論調のままなのは、やはりおかしい。グアムは決して安全な島ではない。もちろんこのような通り魔事件はきわめて稀であるが、それは世界のどこでもそうだ。通り魔事件などそう頻繁に起きるはずがない。では通り魔事件がなければグアムは安全なのかと言えば決してそうではない。殺傷にかかわる犯罪事件は、グアムでかなり起きている。外務省が発表している「海外安全ホームページ」でも次のように明記している。
過去五年間の主要犯罪の統計(グアム警察データ)
殺人事件、2006年11件、2007年2件、2008年1件、2009年5件、2010年3件
強盗事件、2006年72件、2007年108件、2008年49件、2009年78件、2010年53件
強姦事件、2006年180件、2007年208件、2008年154件、2009年29件、2010年40件
傷害事件、2006年147件、2007年117件、2008年330件、2009年191件、2010年252件
薬物事件、2006年277件、2007年155件、2008年152件、2009年229件、2010年130件
窃盗事件にいたっては毎年2千6百件から4千件も発生している。
日本人の援護件数(領事館扱い)は、2007年47件、2008年65件、2009年72件、2010年90件、2011年53件。さらに、次のように述べている。
「グアムの治安は日本国内の治安に比べて良いとは決して言えません。窃盗などの一般犯罪は非常に多く発生しており、傷害事件や、鉄砲関係の違反、薬物事犯等背後関係の不透明な悪質犯罪も発生しています。したがって、このような不穏な反社会的犯罪も実際に発生しているという認識のもとに防犯意識をいっそう醸成して頂き(中略)、防犯対策に心掛けてください」
(事件の犯人と惨劇現場)
島の大きさや人口を考えると、かなりの犯罪発生率となる。日本人が巻き込まれる事件も現地の警察の努力(観光がすべてのこの国では重要課題)にも関わらず、減少傾向にはない。今回の事件は突発的な通り魔事件であり、通常の事件と同一視するのはおかしいという意見があるかもしれない。だが、問題なのは、「安心安全なグアムでこんな事件が起きるなんて」と堂々と述べる司会者がいる、日本のテレビ局の姿勢に不可思議さを感じるのである。
ベースにあるのは、日本人の外国の観光地に対する認識の甘さと不思議な安全感覚にある。グアムは日本語も通じるし、親日的な印象が強い。それだけで安心してしまう日本人。テレビなどの報道はまさにそれをフォローしているかのようだ。結果、グアムは日本より犯罪発生率が高いという認識が極めて薄くなる。アメリカ自治領であり、いろいろな国の人が混じっている。今回の犯人も国籍はアメリカ人となっていたが、どう見てもフィリピン系。サイパンもそうだが、国際的な観光地は純粋の地元の人だけではなく、いろいろな国の出身者が集まってくる場所。複雑な背景もまた潜んでいる。まだ正確な事件の情報は未公開だが、犯人が麻薬に関わっていたという証言もあった。
リゾート地だから警察もたくさん配備されている。それでも先のデータにあるように犯罪は起きている。日本になじみが良いから、安全な場所であるかのような報道は明らかに間違いである。日本のマスコミがふりまく妙な安全感覚は、いわば日本式の安全神話のように思える。これが最近やたらと目につく。この病的な神話は、安全でないものに安全と言い、安全なものに安全ではないというように、妙にちぐはぐなのである。
例えば、自衛隊を自衛軍とするだけで、人殺しをするのかと叫ぶ。憲法改正を口にするだけで戦争に行くのかと叫ぶ。目の前に明らかに領土侵略を目指している国があり、実効支配している国が日本を名指しで攻撃しているにもかかわらず、日本に防衛の「備え」否定するように画策する。これはもうたんなる認識の違いではない。意識的な操作か、恐ろしいほどの無知のなせる業である。
原発問題にも言える。それまでの絶対的な安全性が少し壊れると、あらゆる問題が危険に変わってしまった。被災地の瓦礫問題も不思議な安全感覚が席巻した。
治安が良くて安全な日本にいると常識的な安全感覚は確かに麻痺する。そんな中でいつの間にか「不思議な安全神話病」に罹ってしまったのではないのだろうか。海外に対しても同じようだ。反日の国はそれなりに危険なことは誰でも容易に想像がつく。しかし相手の国を思ってか、あからさまには伝えようとしない。韓国など世界では抜きんでて性犯罪が多い国なのだが、それを正確に伝える報道はほとんどない。そのための被害も出ているというのに。尤も昨今は竹島問題で観光客が激減しているのが救いだ。日本式の安全神話は世界の常識ではない。そろそろ、こんな病から抜け出さなければいけない。
*グアム島で被害に遭われた方々に、心からお悔やみ申し上げます。
*巻頭の写真はグアムの名所、恋人岬
それにしても、こんなことで生命を奪われる不運な目には遭いたくないものです。
私が行った当時から、大麻を始めコカインなどはかなり出回ってました。やはりこういうことが起きる下地は充分にあるように感じます。
ホテルの1Fにあります。
この免税店で一族がお土産品を買ってました。男どもは店の外のベンチに腰掛けて所在無げに女どもを待っていた…。
マスコミの報道もさることながら、実にリアルです。
そう言えば、浜にはビーチボーイみたいなのが大勢いて、結構式で行ってるのに、姪っ子たちを盛んにナンパしてた。
湘南海岸とは違うんだと言うことを改めて認識させられました。