原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

「財界さっぽろ」に反論(中編)

2014年07月15日 09時45分59秒 | ニュース/出来事

 

前回の続きである。窃盗未遂事件が発覚したのが2012年4月。そして半年後の9月に容疑者とされた職員が病院と町に対して訴訟を起こしている。そして判決が出たのが2013年8月29日。判決前後に開かれた町議会では、裁判沙汰までになったのは町の対応がまずいからだと一部の町議員から質疑が出され、議会は紛糾、空転した。財界さっぽろはこの経緯にさらっと触れ、これを前提に話を展開させる。訴訟について、私なりに新聞等で吟味し、さらに町議会を傍聴した。この訴訟行動と町議会の動きに、私は違和感を禁じえなかった。どう見ても奇妙なのである。雑誌では肝心のこの部分にはほとんど触れていない。なにを意味する取材だったのかという疑問が湧く。

 

裁判といっても窃盗未遂容疑による冤罪に対するものではない。「パワハラ」による退職強要とそのために受けた精神的苦痛に対する慰謝料を要求する民事訴訟となっている。訴訟文にはパワハラと言う言葉はなかったと記憶しているが、記事ではきちんと強調されていた。

当初から町側が示談に応じず、争う姿勢であったかのような記述が雑誌にはあったが、それがまず違う。当然ながら、人を介して(町議)話し合いがもたれている。その内容がまず問題だったのだ。原告の要求は「すべて病院が悪いことを認め、職員の現場復帰を求める」というもの。同意しなければ訴訟にするという強硬姿勢で貫かれている。これでは話し合いにならない。当たり前だがこんな要求にいまさら町側が応じるわけがない。話し合う土俵さえできないまま時間が経過したと言うのが事実。なぜ、原告はこんなに強気だったのだろうか。

冤罪であることへの自信なのか、起訴されないということが分かったうえでの自信なのか。少なくても裁判となっている訴訟内容はそんな話ではない。強制的な退職要求とそれに対する慰謝料なのである。この場合、窃盗容疑とは切り離して裁判されるので、窃盗事件との直接的な連動はない。広い意味ではあるが、判決の内容にそれほど寄与しない。単純に退職強要があって、それが名誉棄損にあたるかどうかの判断になる。となると原告が勝てる可能性は疑問符がつく。当初この訴訟の話を聞いた時、なぜなんだろうと思った。この内容で勝てる可能性は限りなく低くなるからだ。たぶん、ある程度進んでから示談と言う決着狙いかと、私のような素人でも思った。多少なりとも知識があれば当然そう思うであろう。ところが示談に対して原告側は相当な強硬姿勢。示談が目的でないとしたら、なにが目的なのか。見当もつかない。

裁判となれば、新聞にも載る。もはや町内だけの話題ではなくなる。この程度の訴訟内容で裁判沙汰になるのは、極めてリスクが大きいと思うのが普通の感覚だ。それでも裁判に勝てればそれなりの意味があるが、もし負ければ決定打となってしまう。騒動の最中に町民のある声を聞いた。「裁判にするくらいなのだから無罪でしょう」。残念ながら、こういう情緒的な判断は裁判にはまったく意味がない。情緒で判定する裁判などないからだ。素人が陥ってはならない思考の一つでもある。もし原告側がこうした情緒的判断を中心にして訴訟を起こしたとしたなら、あるいは裁判を起こすことで無罪を強調したいという思いだけで突き進んでいたとしたら、あきらかな判断の誤りである。もし、そうした気分にさせるように仕向けた人がいて(ある一定の恣意的な思惑があって)扇動したとしたら、逆に原告側は利用されたことにもなる。もちろん、これは推測にすぎないのだが。

訴訟と言う手段以外にもいろいろな形で自分の無実を訴える方法がある。思いつくだけでも三つや四つはあげられる。裁判沙汰は最終兵器とすべきで、その前に十分な戦略を建てる必要がある。だが、この件に関しては言えば、かなり短絡的に感じる。訴訟に向かう戦略的な意図が見えず、示談にも妥協しない姿勢を見せる原告側に、やはり不思議な思いが募るのだ。

もしかして勝ち負けは度外視した行動なのかもしれないと、ふと思った。もしそうだとしたら、町まで追われた原告側の意図はどこにあるのだろう。疑問が堂々めぐりする。

8月29日に判決が出た。結果は町側の全面勝利。原告は敗訴となった。つまり退職強要はなかった(パワハラはなかった)。警察への通報も通常として特別に異常性は認めていない。当然、裁判はさらに継続すると思った。ところがあっさりと上告は放棄。つまり結審してしまったのである。原告の判断がよく分からない。もう一度整理したい。噂話も含めて、原告側の行動を並べてみると、訴訟裁判を背景に、自殺未遂、離婚(親族)、妊娠、出産、町を出る、など。まさに波乱の中にあった。そして判決後には上告の放棄なのである。裁判以外にも闘う方法があるにもかかわらず、示談にも強気で訴訟に一直線に向かっていた原告。そしてあっさりとも見える決着の仕方。この一連の行動に整合性が見えない。日本の法律では、この件に関して二度度訴訟できないのである(一時不再理の原則)。一体、何のための裁判だったのか?命をかけて身の潔白を証明しようとしたのではなかったのか。残念ながら、こうした原告側の行動に記事は一切触れていない。

 

この判決の前後に行われた町議会も荒れた。これは傍聴していたのでよく分かっている。荒れたというより、無駄な空転と言った方が適切かもしれない。なぜなら無意味な議論を持ち出した町議員のおかげで、議会が空転したからである。

記事では議事録からつまみ食いのように一部を掲載している。中心議題は冤罪への追及であり、なぜ話し合いに応じないで裁判にしたかと言う話が軸となっていた。裁判所で審議中の話を町長にぶつけても意味がない。町議会は裁判所ではないのだから、罪の可否について質疑応答しても結論が出るわけがない。しかも判決が出た後も同じ内容なのである。無駄な空転と言う意味はこれだ。しかもある町議などは、目撃をした人を信用できないとまで言い切っていた。その根拠は高齢だからと。認知症とまでは言わなかったが、大変の問題発言である。もし町長がこのことを問題にしたなら、話題は別の方に行ったかもしれなかった。それほどの差別発言である。冤罪を主張する人が、別の罪人を主張したに等しい。この議員は発言の問題性を理解していない。

正直なところ、町議会の展開に私は期待していた。この窃盗未遂事件を起こした背景に大きな問題があることを感じていたからだ。町議会であるからにはそこに向かって進むであろうと思ったからこそ傍聴したのである。ところが、裁判所と同じ内容の話に終始。これでは意味がない。毛沢東の矛盾論をふと思い出した。「目の前の矛盾を解決するには、その背景となる大きな矛盾を解決しなければ付随的な矛盾は解決できない」。肝心な話に行きつかない町議会に苛立ちさえ感じた。

この訴訟沙汰という不幸な事件を基軸にして、解決への道を探る姿勢が重要で、その道は確実にあったと思っている。それが事件を本当の意味で生かす方法であり、ひょっとすると容疑者をも救う道になるかもしれないからである。こうした道を探るのが本来の議会のあるべき姿のはずだ。大変難しいのだが、そういう方向へ進むことを期待したのだ。その一つにあるのが体制の改善。「危機管理マニュアル」一つない体制ではまた同じような事が起こり得る。起きてはならないことは冤罪事件よりも窃盗事件のはず。そこを解決すれば冤罪も起きない。そのためにどうするか、という話になるべきであった。残念ながら町議会はそこに行きつくことはなかった。冤罪があったかどうかは確かに重要なことだが、それは司法の手にゆだねるべきこと。そうならないための工夫こそ大切なのだ。起きてしまったことをがたがた言う前に根本を治すことの方が先なのだ。

財界さっぽろは、記事にするなら、議事録を拾い読みするだけでなく、せめて町議会の本質に触れる記事にしてもらいたいものだ。これでは芸能レポートの類でしかない。

 

話を戻そう。議会を空転させて得たものは、ゼロ成果。むしろマイナス効果。目的さえ見えなかった。冤罪を認めろ認めないというまるで神学論争みたいな話に終始して、ただ騒ぎを大きくしただけ。容疑者とされた側には町に対する「恨み」を深めさせる結果しか呼んでいない。再び思う。これは何のための騒動だったのだろうか?

今年に入ってからである。この事件が新たな第三の扉を開いていた。そのことを財界さっぽろの記事で知った。しかも、その記事もまた事実誤認のオンパレード。明らかな偏向記事なのだから驚く。窃盗未遂容疑の騒ぎをここに結びつけた無理やり感が満載なのだ。そのためのほころびがあちらこちらに見えている。厭きれるとともに苦い笑いしか浮かばなかった。

詳しくは次回のブログでその内容を紹介したい。同時に捏造記事はどのように利用されるものなのか、ということも知った次第である。


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2 コメント

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それにしても・・・ (numapy)
2014-07-15 10:10:59
小さな町にとっては大騒動になりましたね。
当町でもかつてそうした町を揺るがす騒動があったようです。
当方、そういう金銭絡みの騒動の経験がない故、
つい他人ごとになってしまいますが、先日、某組織の知人が、
金銭の二重受け取りなどの嫌疑をかけられ、嫌疑が嫉妬から生まれたものにも拘わらず、
組織上層部から「外部を混乱させた」という理由で、解任された事件に出会いました。
そういう話は、どこにも転がってることだと、改めて感じた次第です。
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正直なところ、 (genyajin)
2014-07-15 14:55:56
窃盗未遂事件や裁判沙汰は、わが町では一過性の話題となりましたが、それほどのことはありませんでした。そのことがあるグループにとって不満だったのではないかと解釈してます。それが今年へとつながりさらに騒動を起こそうとした可能性を感じてます。
なんとか騒ぎを起こしたい一派があるということです。でも冷静に見て、時代を読む力がない限りそれは無理ですね。
その辺を次回に。ま、あまり期待しない方がいいのですが。
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