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3月に入った2日と3日にかけて道東は強烈な暴風雪に襲われた。中標津町では5人の人が亡くなり、網走や富良野を含めると9人にまで被害が拡大した。例年比較的雪の少ない道東ではあるが、今年は嫌な当たり年になった。これほど雪で荒れるとは、さすがに気持ちが萎える。特に春の雪は1月に降る雪と違って、湿って重い。雪かき(雪はね)は強烈な重労働となる。厳寒に降る雪はさらさらとして、箒でもはける軽さがあるが、三月となるとそうはいかない。僅かばかりのスペースの雪かきでも、腰にくる。重いうえに厚く積もるからだ。雪との戦いの日々がずしりとのしかかる。
吹雪になると怖いのがホワイトアウト。これは経験した者でなければ分からないかもしれない。今回のように低気圧を伴うと、強烈な突風が吹き、地吹雪が発生する。目の前が真っ白となるホワイトアウトの現象が起きる。方向感覚が失われる。1メートル先がよく見えない。自分はまっすぐ歩いているつもりでも、自然に右か左に曲がっていく。気づいた時はとんでもない方向に向かっていることにもなる。ぐるぐる円を描いて同じ場所を歩き続けることもある。この恐怖はたまらない。今回、被害に遭われた家族もこうした恐怖を知っているからこそ、車にじっとしていて二酸化炭素中毒に遭われた。実家のすぐ近くで倒れた人も、ホワイトアウトのために方向を見失ったものだ。どんなに雪に慣れた北国の人でも、こうなる。
地吹雪で生まれる吹きだまりもやっかいだ。わずか十メートルに満たない幅に二メートルを超す雪の山が突然できる。車をうっかりこの中に突っ込んでしまうと車輪が空回りしてバックもできない。アリ地獄に落ちたアリ状態となる。国道でこんなことが起きるのだ。自然の怖さは半端ではない。
(強風で吹きあがる雪。地吹雪がホワイトアウトを呼ぶ)
無知とは恐ろしいものだと感じたことがある。2月にあるテレビ番組で、今年は大雪の年で、青森では積雪の新記録が出たことが話題になっていた。この時、ちょっとばかり名の売れたコメンテータが発言した。「雪国の人は雪に慣れているから、この程度の雪はへっちゃらですよ」。正直、テレビに向かってどなりたくなった。この人物は北国の人にへつらうというか、応援のつもりで話しているのかもしれないが、現実を知らない頭の弱さを披露していた。屋根の雪下ろしで毎年どのくらいの人が犠牲になっているか気づかないらしい。雪かきの疲労で毎年たくさんの人が亡くなっている事実を無視していた。雪国の人は確かに雪に慣れてはいるが、雪が降るたびに『ゾッと』するような恐怖感を覚えている。命がけの日々だからだ。それをこの人は知らないのか。雪なんかへっちゃらです、なんて思う雪国の人などいない。東京のど真ん中で何を戯言を言うのだろうと思ってしまった。
この愚かなコメンテータはこれまでもかなりの問題発言をしている。安倍首相の難病を茶化したり、生活保護者が娯楽にパチンコをして何が悪いのか、などなど噴飯ものの意見をテレビで披露していた。この人物はパチンコ産業の広告塔でもあるから、余計に発言がきな臭い。自分は多少名の知られた人物という気取りがあるのかもしれないが、頓珍漢も甚だしい。視聴者に正論を披露しているつもりだろうが、害を振りまいているとしか思えない。この人物の意見が正しいなどとテレビ局の誰が判断しているのだろうか。彼をレギュラーに使う日テレとテレ朝の信用度は地に落ちるだけだと、思うのだが。そう感じないとすれば、不思議なことだ。テレビの質の程度が見えてくる。
三月は始まったばかり、これからまだまだ雪が降る可能性がある。一方、温かさも増す。積もった雪が解けると別の被害も生まれる。釧路湿原には水が溢れ、タンチョウの巣を水没させる。水没のため行き場を失ったり、餌が少なくなったエゾシカやキタキツネが人家に近付く。野生が近づくと人にも彼らにも被害が発生する。雪崩も起きる。雪という自然との戦いはまだまだ継続する。北国の人たちは何気ない顔で毎日を暮らすが、生きるために水面下で必死に足を漕いでいる。
*このたびの暴風雪で被害に遭われた方々へ、心からお悔やみ申し上げます。
中標津に行く途中、道路脇に防雪柵が沢山あり、
地吹雪や吹き溜まりがすごいんだろうなぁ、
と想像はしてましたが、自宅の近所で亡くなるなんて、
想像もしませんでした。日常が一瞬で非日常に激変する…。
先人たちの苦闘を改めて感じると同時に、牙をむいて襲ってくる当時となんら変わらない自然が隣にある危機を感じました。
話は違いますが、在京時代わが社の隣にNTVがありました。
しょっちゅうスタッフやコメンテーター、キャスターと出会うのですが、彼らの胡散臭さと言ったら…。我々よりもひどかった。
ま、テレビはジャーナリズムじゃないとは分ってますが、それにしても軽重浮薄ぶりは影響力が大きいだけに、噴飯ものですね。
コメンテーターには、資格試験というのがあってもいいかも・・。
テレビ業界の人は、その中にいるだけで特別な人間だと勘違いしているようです。業界人と言うだけで眉をひそめられる存在になりつつあることに彼らが気づいていないようです。残念なことです。