政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

308議席の衝撃・マスコミの「二重権力」批判の愚かさ

2009-09-06 20:15:10 | 民主党
バカなマスコミはまだ民主党大勝利の意味が分かっていないようだ。
この期に及んでも、民主党批判を繰り広げ、自民党にしっぽを振っている。
もはやマスコミが何を言おうと、権力は民主党に移っているのだ。
愚かなマスコミは308議席の威力を徐々に思い知ることになるだろう。

もしかしてマスコミはすぐにも自民党政権が復活できるなどと考えているのか?
衆議院で308議席を持っている民主党から出て行く奴がいると思っているのか。
10人、20人単位で抜けても、民主党の過半数維持は動かない。
キャスティング・ボートを握れるわけでもなく、あえて飛び出すバカはいないだろう。
民主党政権は、4年間は安泰なのである。
マスコミは次の総選挙までこんな調子で自民党に義理立てする積もりなのか?

マスコミと自民党の連中は揃って、小沢の幹事長就任で「二重権力だ」と非難の声をあげている。

院政の可能性=「小沢幹事長」に閣僚から発言 (jiji.com 9/4)
民主党の幹事長に小沢一郎代表代行が就任することについて、閣僚から4日午前の閣議後の記者会見で発言が相次いだ。
 甘利明行政改革担当相は「閣内に入らないなら(政府・与党の)一元管理体制はかなり怪しくなる。(小沢氏が)院政といわれないようにやらないといけない」と小沢氏が実権を握る可能性を指摘。河村建夫官房長官は、西松建設による違法献金事件で小沢氏の秘書が起訴されたことに触れ「まだ解決されていない。説明責任をどう果たすのか」と述べ、追及していく考えを示した。
 小沢氏と囲碁仲間の与謝野馨財務・金融相は「肝心なときは慎重に考える方だ」との見方を示し、舛添要一厚生労働相は「敵の戦力の話をするような場合じゃない。どんなピッチャーでも打ち崩すだけの戦力を(自民党が)持たないと勝てない」と語った。 (2009/09/04-12:18)


人の口を借りて我が意を語る。
客観的な報道記事を装いながら、その実都合のいいところだけ拾い上げるいつもの手法である。
見出しの打ち方にその底意は表れている。

今度は”院政”か!
もともと小沢は民主党の代表の職にあった。
それを西松献金問題を奇禍として代表辞任に追い込んだのは、与党とマスコミである。
辞任した小沢を、鳩山が代表代行に任命すると「二重権力」、「小沢傀儡」と民主党批判を展開する。
衆院選大勝、小沢の幹事長就任で再び批判の火の手を掻きたてる。
どうやら小沢が政界を引退するまで小沢批判を続けるつもりらしい。

党の「小沢支配」鮮明に=二重権力に現実味-鳩山新政権 (jiji.com 9/5)
民主党の鳩山由紀夫代表が5日、党執行部と国会の人事権を小沢一郎次期幹事長に事実上一任したことで、同党の「小沢支配」が鮮明になった。「鳩山新内閣」の閣僚人事は鳩山氏が主導するが、党や国会運営は小沢氏頼み。小沢氏が自らの息が掛かった側近や実力者で党と国会の枢要ポストを固めれば、首相官邸より党側の力が勝り、「二重権力」となる政権構造がより現実味を帯びてくる。


よくもまあこれだけの中に小沢批判の言葉を盛り込めたものである。
「小沢支配」、「小沢氏頼み」、「自らの息の掛かった側近」、「二重権力」
さらに小沢批判は続く。

 小沢氏は5日、党本部で鳩山代表との会談を終え、閣僚人事に関する記者団の質問を受けると、「そんなのは私は関係しておりません」と一笑に付した。小沢氏には、閣僚人事に関与しないことを強調することで、二重権力との批判をかわす狙いがあるとみられる。

「二重権力との批判をかわす狙い」?
小沢が何を言おうと聞く耳は持っていない。
何が何でも二重権力と決めつける強い意志を持って記事を進める。

 鳩山氏が党役員や国会の人事権を手放したのは、「実力者の小沢氏以外、巨大与党を仕切れる人はいない」(ベテラン議員)と、全面的に小沢氏に党や国会運営を委ねようとしているからだ。
 鳩山氏が内閣の要となる官房長官に、側近の平野博文役員室長を抜てきしたことで、当初、官房長官として有力視されていた菅直人代表代行は党政調会長も兼務する国家戦略局担当相への起用が固まった。菅氏に比べ、平野氏の「軽量さ」は否めず、菅氏周辺は「平野氏が官房長官では、小沢氏がいろいろ官邸に口を出してくるだろう」と不安を隠さない。


「菅氏周辺」が誰であるか、何人がそう言っているのか一切明らかにしない。
「不安を隠さない」と記者氏は親切にも「菅氏周辺」の気持ちを代弁してやっている。

 閣僚の人事権は鳩山氏が握り、主要閣僚の人選を進めているが、小沢氏に距離を置く非小沢系議員は「今後、意中の人材を党側に取られて、結果的に小沢氏が閣僚人事も左右する可能性がある」と懸念。これについて鳩山氏は記者団に、小沢氏が「閣僚人事を待って(党人事を)決めたい」と語ったことを明かし、懸念の払しょくに努めた。

「小沢氏に距離を置く非小沢系議員」
どんな集団にも、いろいろなグループはある。
ことさら反小沢グループを取り上げて彼等の言を増幅して伝える。
しかし、実名を挙げるわけではなく、直接取材しての記事なのかどうかも不明である。
鳩山の言葉は、「懸念の払拭に努めた」という文脈のなかに押し込む。

 一方、小沢氏の側近議員らは党の人事権を小沢氏が掌握したことを歓迎。「小沢支配」を批判する党内議員にも「こんなことで騒いだら(ポストに就けず)干上がるぞ」とけん制する。

これではまるで小沢側近は、やくざまがいの脅しをかけるならず者集団ではないか!

 党の実権を名実ともに小沢氏が握り、あるベテランは「政府は鳩山氏、党は小沢氏という分担がはっきりした。まさに『二重権力』だ」とため息をついた。(2009/09/05-22:11)

記事は、まか不思議な結論に到達している。
役割分担がはっきりしたのなら、これを「二重権力」というのは無理であろう。
「二重権力」とは表と裏の関係である。
裏が表より強い力を持った構造を言う。
裏の意思が表の口を通して実現される場合を「二重権力」・「院政」と言うのは正しい。
しかし、「役割分担がはっきりした」から「二重権力」だという結論はいくら何でも無理がある。
それは二重権力とは対極にある体制ではないか。

些細な材料を、悪意をもって解釈し無理矢理二重権力に結びつけている。
引用しているのは、「菅氏周辺」・「非小沢系議員」・「小沢氏側近」・「あるベテラン」等の発言ばかりである。
すべて匿名性の陰に隠れている。
それぞれの発言は検証しようがない。
ベテラン議員にため息までつかせているが、そのため息は記者のため息であろう。

ロシアのプーチン首相・メドベージェフ大統領の政権を二重権力構造と呼ぶのは正しい。
しかしロシア国内ではプーチンの人気は一向に衰えていないようだ。
ロシアの国民にとって二重権力構造ということは問題にならないように見える。
もちろん言論の自由に疑念のあるロシアである。
日本と同日に論ずることは正しくあるまい。
しかしどんな政権であっても、国民に取って良い政府ならばそれが良い政府なのである。
二重権力によって実際に弊害が出れば、その時点で騒げばいいことではないか。

実力ある者に権限を移譲し、その能力を発揮させる。
人を使う基本であろう。
恐らく”二重権力”などという批判は承知の上で鳩山は、小沢幹事長人事を敢行したものと思われる。
ここにこそ鳩山の決意が見て取れるのである。
そして鳩山にその決意がある限り、逆に二重権力批判は意味を持たなくなる。
こうなると、二重権力というより二人三脚と言った方がよさそうだ。

メディアはいつまでこんなことを続けるのか!
現実を直視できない、あるいは直視したくないマスコミのもう一つの例をあげよう。
小沢批判はより激しい。
中身は前掲の記事と同趣旨で、取り立てて問題にするほどのものではないのだが全文を紹介しておく。
取り上げたい問題は中身ではなくこの新聞記事の背景にある。

信濃毎日

小沢幹事長 「院政」の危うさ秘めて (信濃毎日新聞 信濃Web 9/5)
民主党の小沢一郎代表代行が幹事長に就くことになった。

 幹事長は党のカネと選挙実務を取り仕切る要職だ。「剛腕」小沢氏の起用は、鳩山由紀夫政権が二重権力状態に陥りかねない危険をはらむ。

 小沢氏を起用する理由について鳩山氏は「来年の参院選で何としても勝利するため」と言っている。勝てば小沢氏の影響力はさらに強まるだろう。

 小沢氏を使いこなせるかどうか、鳩山代表の力量が試される。

 小沢氏は舞台裏で力を振るってきた政治家だ。例えば1997年には、自分が党首を務めていた旧新進党を唐突に解党した。07年秋には福田康夫首相(当時)との間で、自民、民主の「大連立」に向け腹を探り合った。いずれも党内への説明抜きである。

 「小沢幹事長」の下で不透明、不明朗なやり方が繰り返されるようでは、民主党に対する国民の期待はいっぺんにさめる。小沢氏が党を足場に、政府に影響力を及ぼすようだと、「小沢院政」との批判も招くだろう。
(中略)
小沢氏の秘書は西松建設の巨額献金事件で被告人の立場にある。裁判の展開によっては、小沢氏自身が一段と強い批判にさらされる可能性もある。

 事件について、小沢氏は国民が納得できる説明をまだしてない。幹事長への就任に際し、疑問にこたえるよう鳩山代表から小沢氏に指示し、小沢氏が応じれば、国民はいくらかは安心できる。


まるで小沢を見ること、親の敵を見るがごときである。
「小沢氏が応じれば、国民はいくらかは安心できる」
信濃毎日が国民の代わりに心配してくれているようだが……。
しかし、国民は小沢氏の影響力だの、二重権力だのを心配しているわけではない。
国民は、民主党がまともな政治を行えばそれでいいのである。

ところでこの信濃毎日という新聞社についてである。
ウィキペディアより概要だけ紹介する。

信濃毎日新聞(しなのまいにちしんぶん、英: The Shinano Mainichi Shimbun)は長野県最大の地方新聞。 朝刊と夕刊を発行しており、発行部数は約48万4,100部、県内購読率は61パーセント(2006年下半期時点)。

県内購読率61%というのは驚くべき割合である。
次の数字はある広告社の長野県内の新聞購読者数である。

世帯数 804,784 事業所数 116,661
信濃毎日新聞 485,834
中日新聞 46,988
朝日新聞(東京) 60,858
毎日新聞(東京) 18,434
読売新聞(東京) 67,429
日経新聞(東京) 33,977

この驚くべき数字は何を意味するか。
長野県の世論は信濃毎日がリードしているといえるだろう。

さらにウィキペディアよりの引用。

信濃毎日新聞と名乗ってはいるが、毎日新聞社とは関係がなく、出資もない。朝日新聞社との関係は強く、後述の信越放送には長野朝日放送が開局したにもかかわらず、信毎以外に朝日新聞社も比率こそ大きく下がったが株主として名を連ねる。これはかつて社長を務めた創業一族・小坂徳三郎が朝日新聞に勤務経験があり、徳三郎夫人が朝日新聞の村山家と縁戚だからである。小坂徳三郎だけでなく現社長の小坂健介も朝日新聞での勤務経験がある。

社長の小坂健介は小坂憲次衆議院議員の父・善太郎の従弟にあたる。小坂憲次は信濃毎日新聞・信越放送の大株主でもあるため、知事選などに絡む報道で自民党の意向が反映されやすいといわれている。


成る程小坂一族がオーナーの新聞社か。
小坂家は四代に渡り議席を守ってきた典型的な地方有力者である。
小坂憲次元文科大臣本人も自分のことを「世襲の権化」と呼んでいた。
今回衆院選では、信濃毎日の大株主でもあるその小坂憲次までが落選している。
もちろんそのことと、この新聞記事が無関係であるはずはなかろう。
多分小坂復活への応援でもあるのだろう。
信濃毎日はこれから四年間、小坂憲次応援キャンペーンそして自民党応援キャンペーンを繰り広げることになるのだろう。

それにしても県内世論の支配者でもある信濃毎日の力を持ってしても、自民退潮、小坂家没落への風は止められなかった。

ついでにいくつか信濃毎日に関してウィキペディアより抜粋。
今その実否を検証する余裕はないので、引用のしっぱなしで恐縮です。

自民党所属の国会議員である小坂憲次一族が大株主であるため、県政に関しては自民党寄りの報道が目立つ。
県政の御用新聞と呼ばれ、ジャーナリズムが果たすべき権力への監視を放棄していたとの批判が強い

田中康夫前長野県知事については、(中略)「脱記者クラブ宣言」により記者クラブが廃止されて以降、全ての面で一貫して田中批判を繰り返していくことになる
これら長野県で高いシェアを占める信濃毎日新聞の執拗な批判報道が、田中康夫前知事の支持率低下・3期目選挙落選の要因となったとされている

松本サリン事件では第一通報者犯人説を報道し、当該事件の第一通報者で被害者でもある河野義行に訴えられた(和解済み)


このような新聞の在り方には大いに疑問を抱くが、所詮は購読者の選択にかかわることである。
新聞そのものに対する批判は批判として、このような新聞を跋扈させている長野県民を批判する積もりは毛頭ない。
新聞は政治的な側面だけで判断すべきものでもなかろう。

マスコミにも様々な背景があり、思惑がある。
全国紙、地方紙を含めての小沢批判、民主党批判はなかなかやみそうにない。




祝!政権交代


古書 那珂書房

特に歴史書が充実しています