フミンスカヤの日日是好日

ねこと日本酒と本に囲まれた隠居生活がしたい!

じゃあね!

2007-07-27 23:09:06 | 日々つれづれ
「なんか、じがーじがするぞ」
「今、うとうとするお薬を点滴に入れたけんよ。
 じゃあ、待合室でまっとうけんね。がんばってね。じゃあね。」

オペ室に向かう途中のこんなやり取りが
お父さんとの最後の会話になってしまったね。


心臓弁膜症の手術自体は上手くいったっちゃけど
オペ中かオペ後かに脳出血と脳梗塞とを起こして
麻酔から覚醒しないまま…
3週間がんばったけど、結局そのまま逝ってしまったねぇ。


お父さん。
ここ2年くらいは入退院を繰り返して
家にいないことも多かったけど、
それでもやっぱりこの世からいなくなってしまったと思うと
本当に寂しいねぇ。


お父さんが麻酔から目覚めなくなって1週間くらいは
本当に、いろんなことを考えて眠れんかったっちゃけんね。

お父さんの生活の質を向上させてあげたいって思ってのオペだったのに
梗塞を起こすなんて。しかも脳幹梗塞だなんて。
こんなことだったら、オペを受けさせなきゃよかったのかなって
ずいぶん自分を責めたとよ。
でも、あんなに何度も意識を失って救急搬送されたり
心不全できつそうにしているのを見るのは
家族としてはたまらんもんね。
手術させんかったらさせんかったで
心不全を起こすたびに、やっぱり後悔したと思う。

それにオペ前の検査で脳のCTに小さな梗塞の痕がいくつかあったらしいけん
今までも気づかないうちに梗塞を起こしとったっちゃろうね。
そしたら、オペを受けんでも、そのうち脳梗塞を起こしとったかもしれんしね。

ずーっと心配だった腎機能も思ったよりも改善してたし
僧帽弁の逆流はかなりシビアやったけど
心臓のファンクション自体は悪くない
オペするなら今のうちがいいって、どの先生もいいよんしゃったし
私もそう思った。

みんなお父さんが以前みたいに元気になるのを願っとったっちゃけんね。

それなのに、勝手に逝ってから。
本当に最後まで勝手人やったねぇ。


お父さんが昏睡状態になった23日間。
お父さん中心の生活やった。
ICUでは長い時間の面会はしにくかったし
お父さんに感染でもさせたらいかんと思って
15分くらいしか一緒に居れんかったけど
それでも毎日毎日お父さんに会いに行って
お父さんの手を握って。
お父さんのことばっかり考えて。
この年になってお父さんと手を繋ぐなんて思っとらんかったよ。

今思うと、気持ちを整理したり、覚悟ができてきたり
お父さんとのお別れの時間をくれたんかもしれんねぇ。


先生たちも、よくしてくれたとよ。
動脈硬化が進んでいるから、オペのときの人工心肺を繋ぐ場所も検討してくれたり
脳出血がわかってからも、脳外科とすぐに連携とってオペしてくれたとよ。
やれる事は全部やってくれたし、お父さんがICUにはいっとう間、
毎日毎日、お休みの日も、お父さんの状態を説明しに出てきてくれたとよ。

あんなに誠実に患者と向き合ってくれる先生たちに診てもらって
それでも梗塞を起こしたなら、もう仕方ないって
私はそう思うことにした。


そもそも勝手が過ぎたとよ。
以前の病院では、まだ入院しなさいって言われようのに
お薬が効いて心不全の状態が改善してきたら
「俺はもうどうもないっ」て言って、無理やり退院してきたりしよったもんね。
入院中も勝手に病室を抜け出して、パチンコに行ったりしよったらしいやないね。
カテーテル検査も嫌がってずーっと受けんかったしね。

もう少し早くから本腰入れて治療しとけば違ったかもしれんのにねぇ。


お父さんを病院から家に連れて帰った夜、津屋崎の町はお祭りやったね。
約3週間、ICUでがんばってくれたけど、
山笠の時には、家に帰りたかったっちゃろう。お父さん。

そういえば去年はお父さんとお母さんと三人でお祭りに出かけたなーって思い出したよ。
「ふみは歩くのが早いねぇ」って言いながら、
後ろからゆっくりゆっくり歩いてくるお父さんを見て
ずいぶんおじいちゃんになったなぁって思ったくせに
それでも自分の親はいつまでも健在だと思ってた。
もうちょっと親孝行すればよかったなーって、ちょっと反省しとうとよ。


そうそう、昨日、焼き鳥屋のおいちゃんに会ったら
「お父さんの死に方は最高やったねって、みんなで話しよったとよ」
って言いよんしゃったよ。
「あんなに好き勝手してきて、眠っとうあいだに逝ってしまうんやけんね」って。

お父さんの親友にそう言われて、私もちょっと気持ちが楽になったよ。

それに、自分で死に方を選べるのなら
私もお父さんみたいな生き方や逝き方、したいもんね。
まあ、家族の気持ちは複雑やけどね。


そういえば、入院する直前に焼き鳥屋でばったり会ったあの日、
病人のくせに飲み歩いてと思いながらも
このお店はお父さんの体を心配して飲みすぎたら怒ってくれよったし
まあ、許すかって思って何も言わんかったけど
後で聞いたら、焼き鳥屋に来る前に、焼肉食べて来とったらしいやないね。
腎臓に負担がかかるけん、お肉は控えるように言われとったくせに。
それに5月の連休中も、家族に内緒で福岡に遊びに行っとったらしいやないね。
心臓に負担がかかるけん、出てまわらんでおとなしくしとくようにゆうとったとに。
お父さんがおらんくなってから、
お父さんの悪行三昧がどんどん発覚しようっちゃけんね。
まったく、最後の最後まで好き勝手してから。

お父さんの勝手人ぶりには本当に振り回されっぱなしやったけど
それでも不思議と憎めない、愛すべき人やったねぇ。

初七日が終わって、ちょっと気持ちに整理が付けばって思って
こうやってお父さんに手紙を書いてみたけど
寂しいのには変わりがないねぇ。
だって、私はお父さんが大好きやったもん。
口では言わんかったけどね。
みんなに言われる様に、顔も気質もお父さんにそっくりやけんね、私は。

まあ、そのうち、私もそっちにいくやろうけん
そのときには、ゆっくり二人でお酒ば飲もうね。
そん時まで。
お父さん、じゃあね!