待っていたものが出たって感じのモノが出ました。
「先生と僕」三巻。三巻掲載分から新たなメディアに移って・・・ということで、新しい読者のために多少ネタがかぶっている分があるけど、漱石とその周囲の人たちのネタは相変わらず面白い。一巻・二巻の焼き増し的な部分はどうしても前のネタの方が印象が強い感が避けられない。それにしても、この時代は日清・日露などの戦争があったはずなのに、戦争の臭いのかけらも無いのが不思議。漱石の周辺の人々は帝大卒のインテリ層だから、徴兵の対象とならなかったからなのか。せいぜい正岡子規が満州に渡ったり、是公さんが満鉄の総裁になっていたりというシーンがあるけど、それが戦争の結果という感じが全くしない。つまりこの漫画からは時代が見えて来ない・・・というのが不思議である。これだけの漫画なのになぁと思う。
「うた恋い」三巻。今回は清少納言ネタ。枕草子を読むと藤原行成と清少納言は十分恋人だと思うのだけど、行成の「権記」にはそんな気配が全くない。まぁ真面目な行成さんは、公私は別って考えているのかも知れないけど。三巻は二人を「友達以上・恋人未満」みたいに描いている。百人一首にある「世をこめて」の歌の返歌を清少納言は笑っているのかと思っていたけど、この漫画では「下品だ」と言い放つ。ちょっと私と歌の解釈が違っているのかな。もしかしたら、清少納言は本当に「下品だ」と怒ったかも知れないが、それでは仲直り出来ないでしょ?と思ってしまうのだけど。しょーもない返歌を笑い飛ばしてこそ清少納言だと思うのだけど。だいたいモラルが現代と大きく違うのだから、清少納言はあまり下品などとは思わなかったと思う。むしろ堅物の行成さんが「許してー」と甘えてくるという、くすぐったいような歌なのでは?と思っている。
永野護の「FSSリブート」7巻。まず厚さに驚愕。今回は未収録分がたくさん入っているので楽しめた。次が出るのはいつかわからないけど、早く続きが読みたい。もうこの話は二十年以上やっているのでは?と思うけど、やっとここまでだから(笑)
最近、歌川国芳が流行っているけど、国芳一門のストーリー「ひらひら」。キャラクターがそれぞれ凄くて、何度も読み返してしまった作品。江戸の浮世絵師モノは杉浦日向子さんの北斎とその周辺の人々を描いた「百日紅」を読んでいたので、「百日紅」ではまだ小僧さんだった国芳が良い具合にオヤジになっているって感じで面白かった。「百日紅」で主要な主人公だった英泉はすでに亡く、芳玉の口から「もう亡くなったんだけど、元武士だったんだって」と語られているところに時代の流れを感じてしまった。杉浦日向子さんの江戸よりも、男臭く、よりリアルな浮世絵師の日常が感じられる。一冊で完結しているらしいが、それではもったいない、これはもっと続きが読みたい。
諏訪緑の「大唐見聞録」1巻・2巻。「玄奘西域記」の続編という設定で、インドから取経して帰った後の玄奘の話。「玄奘西域記」のキャラクターがちらちらと回想シーンに登場して来て、懐かしさを感じる。
清原なつのの「家族八景」上・下巻。清原さんはデビューして三十年以上たっていますが、絵柄がほとんど変わらず、ちょっとシニカルなところが面白い。今回は原作付きですが、それもうまく消化してしまっているところがすごい。この本は原作をいつか読んでみたいと思っていたし、しかも清原さんの漫画ということで、一粒で二度おいしい感があった。
「たむらまろさん」は話が平安初期、キャラクターがちょっとぶっ飛んだ設定だし、鬼はいるし、かなりチャレンジャーな作品だけど、すごく面白い。前作の「長州ファイブ」が結構真面目な作品だっただけに、結構ギャグが入ったこの作品は新しい感じがする。これも、一冊完結ではもったいないね。キャラクター設定もすばらしいので、ぜひ続きをやってほしいと思う。
タイトルがあやしいので買った作品「しろまん」一巻・二巻。絵柄はちょっとアレですが、ストーリー的には面白い。史学科バリバリな院生と、ゲーマーな後輩のドタバタ。ゲーム設定の非科学性をバッサリ斬るセリフが痛快だと感じるのは私だけだろうか。ゲームの設定にどっぷりと浸かりながらも、だんだんと史学の科学性に目覚めて行くゲーマーの姿が面白い。絵もストーリーも粗削りだけど、妙に納得出来る作品に仕上がっていると思う。全国城ファンが読んでくれると良いかも。意外と面白い。
「東海レトロスペクティブ」はかなりリアルな大学の発掘調査実習の様子を描いている。作者の体験談に基づいているらしい。ラストは予想通りの展開で、主人公がその大学に合格して終了。進路に目標のない高校生が、大学の発掘調査に関わることによって、古代の人々に興味を持って大学をめざすようになる・・というストーリー・主人公はちょっと平凡な感じかな。それなら職を失った漫画家が生活のために発掘調査のアルバイトをせざるを得なくなる「遺跡の人」の方が悲壮感が漂っていて面白いと感じる。