野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

猪名川一庫ダム上流のアユは放流ものか天然ものか?

2018-08-23 | フィールドガイド--魚編--

猪名川一庫ダムの上流でとれるアユ

夏の自由研究アユの研究編
ここは、漁協が放流しているアユとダムで世代交代している天然アユがいる
そこで、漁協の協力でとれているアユが放流されたアユで釣り残されたものか
ダム湖で世代交代しているのか調べた

参考にしたのは以下のもの
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水産と海洋 第15号 2009年8月発行

河川等での内水面漁業では,漁業権の免許にあたって放流などの増殖行為が義務付けられてます。アユでは,漁協が中
間育成した人工種苗や海産・湖産などの種苗を放流していますが,どの種苗がよく釣れたとかが常に話題となります。 
昔から体高が高い・痩せているなどの体型で,天然遡上・湖産アユ・人工種苗を区別する人も多いのですが,体型は漁場
のアユの密度と餌となるコケの状態で様々に変化します。そこで,試験研究機関などが調査するときには,アブラ鰭など
を切って標識放流し,再捕時に区別していますが,標識していない場合は,側線上横列鱗数(背鰭と側線の間の鱗の枚数,
図1,以下「鱗数」)を数えて判別できることを東大海洋研が報告しており,当センターでも利用しています。鱗数は,
湖産>海産>人工の順で少なくなります(背鰭前端部で計数した場合,湖産種苗:23 ~ 25,海産種苗:18 ~ 22,人工
種苗:15 ~ 18 枚)。ただし,背鰭の前側で多く,後側で少なくなるため,常に同じ位置から数える必要があり,最近で
は第3棘または第5棘から斜め下方に計数しています。
 漁期後半になるとアユも大きくなり,目をショボつかせる覚悟があれば数えられますが,7~ 10cm の稚魚の鱗を数
えるには,実体顕微鏡などで拡大し,針などをあてて数えていました。そのため,慣れない人が数えるのは大変です。
 最近の岩手県内水面水産技術センターの報告では,鱗をはがし薄めた墨汁で染めて実体顕微鏡で数えているとのこと
です。淡水魚支場時代に,「墨汁などで染めて数えやすくできないか」などといろいろと努力した研究員もいましたが,
デジカメの普及前で,鱗をはがす方法には至りませんでした。
 試しに,最も数が多いといわれる陸封アユ(椋梨川)を用い,計数する背鰭下部の鱗をはがし,デジタルカメラで接写
してみると,意外とハッキリと写っています(写真)。デジカメ画像だといくら小さな種苗でも拡大して印刷すれば,実
体顕微鏡や虫眼鏡で目をショボショボさせることもなく数えられそうです。また,画像を強調する処理を行えば,より
鮮明にみることができます。鱗数も,種苗の生産場やその年の生育環境によって多少増減するため,放流した種苗の鱗数
を記録しておくと後で参考となります。また,隣接する漁協の放流魚とも区別できる可能性が高まります。
なお,最近では,人工種苗に下アゴに分布する孔(下顎側線孔:天然魚は,概ね片側 4 孔)が少ないものが多いことから,
これで区別している水試もあります。

長良川のアユ日記(blog2007/6/28(木) 午後 4:54https://blogs.yahoo.co.jp/ayukichi_gujo_syokuryo/archive/2007/06/28より)
ハリで突いたような穴(下顎側線孔)が左右対称に4個並んでいるのが天然(2番目の写真)、
そうでないものが人工(3番目の写真、この場合は左右3個づつで整然としていない)というわけである。
人工の場合は左右の数が違ったりして一目瞭然のものが多い。

ちなみに1番目の写真の上のアユが天然で、下のアユが人工である。
ただし、海産の天然種苗や琵琶湖産の天然種苗を放流している場合は、天然遡上ものと同様に下顎側線孔は4個が対に整然と並んでいる。
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以上の方法で猪名川一庫ダム上流のアユが放流かダム湖産かを判定した。
今回とれたものはすべてダム湖産であることがわかった
多くのアユが海に戻らず琵琶湖のアユのように世代交代しているようだ


カワウ

2018-08-23 | フィールドガイド--野鳥--

カワウは、伊丹市の昆陽池の日本列島を模した人工島(野鳥の島)の木に、住み着いて繁殖し、糞で木を枯らす等の被害がでた。(写真)
2012年ごろには3000羽を超えるカワウがいたと言われています。
進化形態からいうと「古代鳥」に近い鳥、通常の水鳥のように尾脂腺が発達しておらず、一度羽を濡らすと羽を広げて良く乾かさないと飛べないので、よく羽を広げて乾かしている(写真)
現在2018年伊丹市では、カワウによって枯れてしまった樹林に新しい苗を植え、再生(森づくり)を行っています。


カワウ 漁協のパンフレットから

2018-08-23 | 資料を読む

カワウは一時は絶滅の危機にあった鳥である
魚の自由研究で漁協の方からカワウの冊子をいただいた


もともとカワウの仲間(ウ類)は、ペリカン目ウ科に分類され、世界で約 40 種が確認されている。
世界に広く分布しており、その分布域は、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オーストラリア、北米等、南米以外の大陸とオセアニアに及んでいる。
カワウは、魚類が体内に取り込んだ水中の栄養塩類を魚を捕食することを通して外に持ち出す。結果的に水中の富栄養化を抑制する働きがある。
カワウはねぐらや巣において、排泄物を落とすことにより、水中から取り出した栄養塩類を重力に逆らって水中から陸上にもたらす。
川の環境を調節する役割もある鳥であることがわかる

しかし、1970年ごろカワウの生息数は減少し、各地にあったコロニーやねぐらは消失して生息域が分断化し、レッドデータブックの絶滅危惧に相当すると推定される段階にまで数が減った。
その後、数がもどり、いや増えすぎて、漁協にとっては害鳥になってしまった。
食害の対象魚種はアユが最も多く、ついでフナ、コイ、ウグイ、オイカワなどであった月が、漁業協同組合が放流する主要魚種とほぼ一致する。

それで今回いただいたパンフレット
兵庫県内水面漁業協同組合連合会(参考文献として山本麻希「2010カワウに立ち向かう2」より改編とあった)著

漁協の会員向けだろうと思われるのが駆除排除の方法が一般市民向けでないことがあげられる。
内容を紹介しよう
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メインはこれ

カワウはなぜ恐ろしいのか
カワウは高い潜水能力、移動能力をもち、1日1羽あたり約500gのえさを食べるといわれています
繁殖能力も非常に高く餌条件が良ければ1巣あたり2から3羽のひなが育ちます。
河川改修などで河川環境がかわり魚に取って生息環境を悪化させました。
魚が隠れるような場所が少なくなっている場合が多く、カワウにたべられやすくなっていると考えられます。

カワウって
 体重は、1.5~2.3kg、
 体長は80cm、翼開長130~150cmの大型の魚食性鳥類です。
カワウが繁殖期に巣を作る場所を「コロニー」(繁殖地)、繁殖期以外に集団で夜を過ごす場所を「ねぐら」とよんでいます。

カワウの特徴
●雄の体は雌の体よりやや大きく、つがいでヒナを育てます。
●成鳥の体は黒い。
●腰の白いパッチや頭部の白い冠羽「繁殖羽」はこれから繁殖を始める成鳥に現れます。
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繁殖のかずなどイラストで紹介
そして
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漁業者は、カワウから魚を守る取り組みや、河川管理者と共に河川環境の改善に取り組み、魚が棲みやすい豊かな川づくりをすることも大切です。

カワウは川の中の魚を食べ、その時に漁具を壊すこともある(直接漁業被害)一方、カワウが来る川では魚が怯えて釣れなくなるという釣り人の声から、遊漁券が売れなくなるという風評被害につながることもあります(間接漁業被害)。
 また、直接被害の大きさはカワウの増減等に比例しますが、遊漁券の販売不振という間接被害については、カワウによる風評被害のほか天候や釣りの機会の減少などの他の要因とも絡み合っていて、カワウによる被害割合の推定は難しいとされています。
しかし、遊漁料収入の減少やカワウ対策費の増大は、漁協運営の大きな負担となり、漁協存続の危機を招いています。

カワウは採餌場所に強い定着性を持つ烏です。採餌場である河川で駆除を行わないと、河川が危ないと判断されず、カワウは採餌場所から離れようとしません。
一方、ねぐらやコロニーで駆除を行うと危険と認識したカワウは新しい場所でねぐらやコロニーを作り、羽数を減らすどころか、かえってカワウの行動域を広げてしまいます。
銃器による駆除は、たとえ捕獲できなくても、脅しの意味で効果があると考えられるので、河川で行う方が良いでしょう。
コロニーでは、被害地から厳雄させたり、繁殖抑制やシヤープシューテイングによって個体数の管理を行いましょう。

兵庫県内水面漁業協同組合連合会
山本麻希「2010カワウに立ち向かう2」より改編

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毎年数多くの魚を放流して魚の数をふやすことに努めているのをカワウ被害が大きくなっている現状がすこしわかったかも
里山でシカやイノシシが農作物を荒らすのと
自然との付き合い方を考えさせる資料でした