野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ;リンゴガイ科)は困りもの

2023-08-26 | フィールドガイド--その他の生き物--

ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ;リンゴガイ科)は困りもの

 

生きている加古川やナチュラリストクラブの観察会で加古川流域のため池で見つけた巨大なタニシ、

ジャンボタニシです。

もともとは食用に日本にやってきたタニシだったようです。

昭和58年のある広告

「成長が早く繁殖が旺盛で、しかも形が大きく、サザエのように刺身やつぼ焼き塩焼きにしても美味しいタニシの新品種が誕生!簡単に養殖が出来るので早くも注文が殺到」(「養殖」昭和58年8月号)

美味しいタニシこそジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)のことです。

しかし、日本人の味覚にはあわず、次の年には野生化した貝により被害が発生しています。

水田での被害が拡大し、昭和60年には九州を中心に防除対策が行われるまでになりました。

 

繁殖力は絶大で、暖かいところの貝にも関わらず、冬でも土中で冬眠、冬越しすることができます。

また、環境によってえら呼吸と肺呼吸の両方ができ、肺呼吸のときは長い呼吸管を水面まで伸ばして呼吸します。生命力の強い貝です。

そのため、蔓延しているところでは撲滅は困難な状態になりました。

 

メモ

スクミリンゴガイ(リンゴガイ科)淡水棲の大型巻貝である。

俗にジャンボタニシと呼ばれます。

南アメリカ、ウルグアイが原産といわれています。

日本では食用を目的とした養殖用に台湾からはいってきました。

イネを食害することから、防除対象になっています。

 

4月から10月にかけてたくさんの卵を産みます。

2、3日に1度産卵し、1度に数百の卵を産み、年間の産卵数は2400~8600卵粒程度(タニシは50~60個程度)と考えられています。

産卵から10日程度で孵化します。

 

兵庫県でも加古川調査でもみたように、播磨地域や淡路島でも見られます。

将来的には県下の平野部では生息可能な状態なので今後気を付けていく必要があるようです


カジカガエル

2023-08-11 | フィールドガイド--その他の生き物--

カジカガエル

 

渓流で、フィー、フィーという鹿のような美しい鳴き声を聞くことがあります。

知らない人はカエルの鳴き声だと知らない人も多いです。

清流で見られるカエルです。

古来より日本人に愛され、鹿に似た声で鳴くことから河の鹿、カジカガエル(河鹿蛙)と名付けられました。

兵庫県内では、ほぼ全域でみることが出来ます。

大きさは、4~8cm。メスはオスの1.5~2倍くらい大きいです。

アオガエルの仲間ですが、体の色は背中がこげ茶色でお腹はまっしろ。

流れの速さに負けないように、指先にある大きな吸盤で石にしっかりと貼り付くことができます。

 

鳴くのはオスだけです。

オスの声に誘われてメスが現れ、オスはすばやくメスの上に乗っかります。

一緒に川底の石の下にもぐり込んで、卵を産むのです。

 

たまごを産むときやオタマジャクシのころは、流れのある川に、それ以外はまわりの森で暮らしています。

繁殖は、おもに5~8月にかけて渓流沿いで行われます。そのころにオスのきれいな鳴き声を聞くことができます。

 

メモ

万葉集に出てくる「かはづ」、「古今和歌集」の「かはづ」。この「かはづ」は、「カジカガエル」。

川の清流にすみ、初夏から秋にかけ、多くは夕方から夜中・朝にかけて、澄んだ美しい声で鳴くことをうたっていることから古くから注目されたカエルなのです。

カエルのことをか松尾芭蕉は「古池やかわず飛び込む水の音」と詠みましたが、このカエルは「カジカガエル」ではありません。古池にはカジカガエルいないので。

いつの間にか、カジカガエルをしめす「かはづ」とその他の「カエル」を区別しなくなったようです。


ヤモリとイモリ  怪しげな薬になった爬虫類と両生類

2023-07-15 | フィールドガイド--その他の生き物--

ヤモリとイモリ

 

兵庫県では比較的広い範囲で見られものの、多くの場所で減少傾向にあるのがアカハライモリ

 

アカハライモリが江戸時代には人気だったという。それが薬として。

 

江戸時代、好きな人と結ばれるために、惚れ薬になったのがイモリ。

「イモリの黒焼き」として利用されてた。

 

映画「千と千尋の神隠し」では、リンが釜爺にイモリの黒焼きを渡された時に顔を赤らめる場面があります。「イモリの黒焼き」の効能について知っているからでしょう。

 

元禄・享保ごろには江戸・大坂に黒焼屋の看板のところで買い求めることができたとか。

使用方法は、オスのイモリの黒焼きを自分にふりかけ、メスのイモリの黒焼きを好きな相手にふりかければ、お互いに引かれて相手がふり向いたといわれています。

 

田植えや稲刈りの時期に水田や水路で見られる求愛行動。そのことが、イモリの体内には恋愛や性に関する薬効をもつ成分があるに違いないと、日本ではじめての動物図鑑である『和漢三才図会』に書いてあります。

 

ところが、次のような話があります。

中国ではヤモリが女性の浮気防止に使われていた。

中国の古書には、漢の武帝がヤモリの粉を宮女たちに体に塗りつけ、効果があったと記されています。す。

それを、平安時代に日本に紹介され、ヤモリがイモリにすりかわり、浮気防止が惚れ薬に変わってしまったというイモリには迷惑な話。

ヤモリ

ヤモリ科ヤモリ属

人家の外壁などに生息し一生を通じて水中に入ることがなく、変態をしない爬虫類です。

夜、街灯にあつまる虫などをねらっているのをみることがあります。

 

アカハライモリ(ニホンイモリ)

イモリ科イモリ属に分類される両生類。

田んぼや池、川の淀みなど流れのないところでみられます。

ミミズや昆虫、他の両生類の卵なども貪欲に食べます。

背中は黒から黒褐色、腹は赤色、黒い斑点があります。


あなたの地方のカタツムリ

2019-02-28 | フィールドガイド--その他の生き物--

あなたの地方のカタツムリ
 陸産貝類のことを広くカタツムリと呼んでいます。日本には約800種類も確認されているんです。日本中でひろく知られているこのカタツムリですが、地方によってそれぞれ種類が違うのをご存知でしょうか?
 関西で普通にみかけるのは、ナミマイマイとクチベニマイマイです。
 どちらも大型のカタツムリですが、クチベニマイマイは殻の口のあたりがほんのり紅くなっているのですぐわかります。中国・四国地方で普通に見られるのはセトウチマイマイ。九州ではツクシマイマイ。関東地方ではミスジマイマイ、ヒダリマキマイマイといったように地方によって種類が違うんです。
 これは、カタツムリが普通の昆虫などの生き物のように動く範囲がそれ程広くないので、それぞれの地方で進化が進んだと考えられています。
 ですから、ごく限られた地域にしかいないものも多く、地名のついたカタツムリが多いのです。神戸の摩耶山にしかいないマヤサンマイマイ、南紀の那智にしかいないナチマイマイなどもその例です。
 さて、あなたの地方にはどんなカタツムリが住んでいるんでしょうね?


ヒキガエルの産卵

2019-02-17 | フィールドガイド--その他の生き物--
ニホンヒキガエル(ヒキガエル科)
体調10~15cm。里山の人家に近いところにすんでいます。後頭部の耳腺が発達し、ここから毒液を分泌し身を守ります。繁殖期は3~5月頃で池・沼などに卵を産みます。
私たちの活動する里山では2月下旬から見られます。
今年は、2月16日には確認できました。昨日の寒くなる前に卵を産みに来たようです。
里山での活動当初 一筋の卵塊でしたが、ここ何年かは8つほどの卵塊が見られるようになりました。
「池に集まったオスの数は、メスの数倍。たたかいに勝ったオスだけが、メスとペアになることができるのです。」という蛙合戦。
この塊のかずをみると少なくともメスは8匹、雄は20匹ぐらいはいるはず。
ヒキガエルは、毎年同じ池に産卵にきます。現在2枚の池で産卵をしています。
ヒキガエルは、一度に1500個から8000個のたまごを産みます。
ひもの中にある黒いつぶ、そのひとつひとつが1月ほどで小さなオタマジャクシになります。 

イノシシ年

2019-01-01 | フィールドガイド--その他の生き物--

あけましておめでとうございます

去年の神戸新聞の記事より

2018/2/9 06:00神戸新聞NEXT
兵庫県内のイノシシ被害、2年連続で全国最多
イノシシにかみつかれたり、突進されたりしてけがをした人身被害で、兵庫県が2016年度、17年度(11月末まで)の2年連続で全国最多を記録していることが8日、環境省への取材で分かった。
17年度は2番目の岐阜、京都などが3件にとどまる中、兵庫は13件と突出している。

六甲のイノシシは有名。

神戸・六甲山付近で多発している。のニュースは毎年聞くことに

イノシシの増加: イノシシの分布は以前は九州、四国、神戸の西日本を中心にみられていますが、最近では神奈川、山梨、千葉などの東日本でも多くみられるようになりました。イノシシは足が短いため深い雪が苦手なのですが、最近の降雪量の減少により、富山、新潟などの日本海側の地域にも進出し、長野、群馬でも多くみられるようになってきました。 (ヤマビル研究会のHPより)

私たちの活動している里山でもイノシシが掘り返し、里に下りて農作物を荒らすのが年々ひどくなっている

「亥」漢字のいわれ:12月になると厳寒で、山野で目につくのは木を切り倒したあとの初り株だけ。
その状態を表した記号。「亥」の横棒線は地平線で、その下の2本の線は根を表す。それからできた漢字だとか(画像右の説明今年の年賀状より)

活動の中でもかかわりの多い動物の一つ。ことしはどんな年になるのかたのしみです。


ヒカリモ

2018-12-23 | フィールドガイド--その他の生き物--

ヒカリモ

私たちの活動している里山では12月末~2月ごろまで、林の中にあるため池でみることができます。

ヒカリモはお日様の強い光に反射して虹のように見ることができます。

黄金色の輝きまではいきませんが、虹色に輝くのがみられるのです。

兵庫県では三木市の伽耶院、「窟屋(いわや)の金水」が有名です。

 

ひかり藻は 淡水産の単細胞藻類、分類学上は「不等毛植物門」の「黄金色藻綱」。

大きさは体長が3~6ミクロン。日の当たりにくい山中の池や洞くつ内の水たまりなどに発生します。

長短2本のべん毛をもち、水中を泳ぐ状態(遊泳相)と柄をもって水面に浮きあがる状態(浮遊相)とがある。大量発生して水面に浮き上がるとき、が光合成を行うための黄色い葉緑体が日光に反射、水面を虹色にする。

冬のこのころにしかみられない、里山の風景のひとこまです。


トカゲのなかま

2018-09-01 | フィールドガイド--その他の生き物--

カナヘビをみて「トカゲ」だという人も多い

けれど トカゲとカナヘビは違います

トカゲのなかまには「自切」といって尻尾が刺激によって切れ、天敵の目をごまかして逃げるという行動をするものがいます。
関節と筋肉がはずれ、自切すると、残った体の筋肉が収縮して血が止まります。あとで尾は再生します。

ニホントカゲ(スキンク科)
 人家の石垣や田畑などの石垣にすんでいます。
全長20~25cm、頭胴長6~10cm。ずんぐりした体型で、鱗はなめらかです。子どもは、黒い体に5本の黄色い線が入っていて、尾の青色が目立ちます。5月から6月ごろに卵を産み、雌は卵がかえるまで抱いて育てます。

ニホンカナヘビ(カナヘビ科)
 平地から里山にかけてすんでいます。全長16~27cm、頭胴長5~7cm。尾が長く、鱗はかさついた感じです。春から夏に卵を産み、卵の世話はしません。
 カナ「ヘビ」と聞いてヘビと思っている人も結構います。「カナ」がかわいいで、「かわいい蛇」でカナヘビといわれるとか、でもヘビではありません。


里山活動でマムシに注意

2018-09-01 | フィールドガイド--その他の生き物--

9月の里山活動で気になるのがマムシの存在

今年の夏は暑すぎたのか里山ではヘビはあまり見ませんでした
少し涼しくなったせいか 雨のあがったあとニホンマムシが
この時期、子ヘビを生む時期のせいかよく見かけます
毒蛇、十分注意する必要があります

ニホンマムシ(クサリヘビ科)
 全長45~77cm。胴体は太短く、尾は細くて短いです。背面には、褐色の地に黒褐色の銭形模様があります。胎生で、9月ごろに子ヘビを産みます。


ニホンジカ

2018-07-27 | フィールドガイド--その他の生き物--

バンビをつれた母ジカ

ほほえましい1枚の写真だが...

シカは一時は絶滅近いほど数を減らしていた時期がある
しかし、数はふえつづけ農業被害も深刻になっている

資料を見てみよう

兵庫県においても、両種による農業被害は深刻な問題であり、
2008 年度の被害額はシカで 1.9 億円、イノシシで 2.2 億円に上り、
2 種の被害の合計額は県下の獣類による農業被害の 7 割以上を占める。
(兵庫県森林動物研究センター兵庫 ワイルドライフモノグラフ 2 号より)
シカは6月に被害のピークがあるのに対して、イノシシは9月がピークになっている(図 4-3)。
これはシカが田植え後の若いイネを食害することが多いのに対して、
イノシシは乳熟期以降の穂を食害することが多いためである。(同上)

ニホンジカやイノシシのなどの中・大型哺乳類の個体数の増加や分布域の拡大は、
農業被害問題の深刻化や被害地域の拡大に加え、自然植生への影響をはじめとする様々な問題を引き起こしている。
シカの過密地域で報告されているヤマビル(Haemadipsa zeylanica japonica)の増加もその一つである(山中 2007)。 (同上)

ヤマビルの範囲は驚くほど
シカやイノシシがつれてくるのは間違いない。