野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

セイタカアワダチソウは「花粉症の原因」といわれたときがありました。

2023-09-22 | 自然観察会

セイタカアワダチソウは「花粉症の原因」といわれたときがありました。

 

日本に渡来したのは明治時代といわれ、戦後、急速に全国に広がっていきました。

1960年ごろ、北九州では炭鉱の閉山があいついだころに急増したことから「閉山草」とも呼ばれたそうです。

10月を過ぎると都市近郊の空き地や荒れ地、土手、休耕田などなどで群生し、日本中に広がりました。

黄色い穂をつけた花を好きな人は少ないようですが、その繁殖力の旺盛なところが嫌われる原因のようです。

そして、全国に広がったときに花粉症もひろがりました。

そのため、一時セイタカアワダチソウが花粉症の原因とまでいわれましたが、セイタカアワダチソウは虫媒花のため、花粉症はおこしません。

50代以上の人の中にはまだセイタカアワダチソウが花粉症の原因と思って近づいてはダメという人がいます。

 

セイタカアワダチソウは、根から特殊な成分を分泌し、ほかの植物の種子から芽の出るのを抑えたり、根の成長を妨げたりします。そのため、セイタカアワダチソウだけがはえる場所になってしまいます。

そのことから、セイタカアワダチソウが広がるのみて、日本中がセイタカアワダチソウだらけになるのではと心配されましたが、時間がたつと次第に勢いがなくなり、在来のクズやススキが勢いを増しています。

セイタカアワダチソウの毒は、かびやバクテリアなどによって分解されて無毒になり、ススキなどの日本の本来の植物にもどっていきます。

 

 

原産地のアメリカですが、

ケンタッキー州やネブラスカ州の州花になっています。

アメリカの先住民は何世紀にもわたって薬草や染料植物、飲料茶として使用しています。

アメリカでは、100種以上のなかまがあり、よく似た種も多く、またすぐに雑種ができるので、分類がたいへんにむずかしいようです。

 

今、日本でもセイタカアワダチソウの利用方法が載っているホームページやブログが見られるようになりました。


ナンバンギセル

2023-09-12 | 自然観察会

ナンバンギセル(ハマウツボ科)

9月上旬には、里山のススキの根本にはナンバンギセル (ハマウツボ科)が見られます。

ナンバンギセルはススキやミョウガなどの根に寄生しますが、 すっかり少なくなってしまいました。

牧野富太郎氏は明治13年に四国の石鎚山に登ったときにはじめてこのナンバンギセルを採集したと書いています。(植物と九十三年(2)北国新聞)

 

花期は7~8月、長い花柄の先に横向きに花を一つつけます。花は紅紫色の筒形です。

葉緑素を持たないので光合成ができません。それで、ススキなどの植物の根に寄生し栄養分を吸収します。

 

名前の由来は、花の姿が、マドロスパイプににており、南蛮人(ポルトガル人)が煙草を吸う時に使うキセルという意味でつきました。

 

ところで、寄生植物で有名なのは世界一大きな花を咲かせるラフレシアがあります。

身近なところでは、ネナシカズラやヤドリギなどがあります。 

植物は光合成で生活をしますが、寄生植物は自分だけで栄養を作ることができず、ほかの植物から栄養を奪うことで成り立つ植物です。


アケビ

2023-09-08 | 自然観察会

アケビ  (アケビ科) 

 

日本ではアケビとミツバアケビが知られている。

ゴヨウアケビは、アケビとミツバアケビとの雑種とされている。

アケビとミツバアケビの違いは、前者が小葉 5 枚に対して後者は3枚(ゴヨウアケビの小葉は 3~5 枚)である。

アケビは、本州、四国、九州に分布

ミツバアケビは、北海道から本州、四国、九州に分布。

 

長卵形の大きな果実、果肉は甘くて比較的美味しい。

熟すると紫色となり、タテに二つに割れ、白色半透明多汁な果肉がみえる。

甘いが、食べる部分は少なく口に黒い種子が残る。

古くはこの果⾁の⽢さが珍しがられ、無病息災の珍果として朝廷に献上されたたことが『延喜式』(905〜927)に記載されている。

アケビの果実について、牧野富太郎氏は「アケビは果実の名で、この植物を指して言う時はアケビカズラと呼ぶべきである。」と述べている。

 

中味を食べた外側の皮も食べることができる。

ひき肉やシイタケ、野菜などを、ミソをペースにいため、皮に包んで油で蒸し焼きにしたり、唐揚げにする。また刻んだ果皮をゆがき、いためてゴマミソあえにすると酒のあてになる。

 

 

アケビの新芽は古くから木(こ)の芽といい、サンショウとともに利用されている。

京都鞍馬の「木の芽漬」の材料の一つである。

新芽をゆで、お覆し、あえもの、汁の実などに独特のほろ苦い風味が喜ばれる。

江戸時代、種子から油をとり、食用や灯用にしたという。

 

つる茎を木通(モクツウ)といい、生薬にし、利尿、通経に用いる。

長いつるは、シバなどを縛り、籠や土びん敷きなど、民芸品の素材に利用されてきた。

 


蓼食う虫も好き好き

2023-09-07 | 自然観察会

ヤナギタデの葉は辛く刺身のつまになる。その辛い葉は虫も食わぬだろうということで、「蓼食う虫も好き好き」ということわざができました。

秋河原で群生している様子が見られます。

ヤナギタデ(マタデ)

河原など湿った場所に見られます。葉が柳に似ていることからヤナギタデといいます。

葉や茎は噛むととても辛く、葉を二杯酢ですり潰した「たで酢」は、鮎の塩焼きなど日本料理にはつきもので、鮎の香りをより引き立てる調味料になります。猪名川の河川敷には、秋になると、ヤナギタデやボントクタデ、イヌタデなどタデ科の植物の花が咲きます。

 

イヌタデ

タデの仲間なのに辛くないので、役立たずの意味でこの名がつけられました。

昔、女の子のおままごとでは赤飯の変わりに使われました。

 

オオイヌタデ

イヌタデより大きな淡紅色の花を咲かせます。節が膨らむのが特徴です。

 

ミゾソバ

河原など湿った場所に見られます。秋、桃色の可愛い花を咲かせます。

 

ママコノシリヌグイ

河原など湿った場所に見られます。棘のある茎で継子のしりを拭くなどと、あまり好ましくない命名です。


日本のクズとアメリカのクズの話

2023-09-05 | 自然観察会

クズとアメリカでの話

 

クズは秋の七草の一つ。

「萩の花 尾花葛花 瞿麦(なでしこ)の花 姫部志(をみなえし) また藤袴 朝顔の花」 (万葉集)

クズは根からくず粉がとれます。葛湯や和菓子の原料になります。

また、「葛根湯(かっこんとう)」という薬にもなります

クズの繊維から葛布とよばれる布がつくられます。静岡県掛川市では今でも葛布作りが行われています。

このように歴史的にも価値のある植物ですが、アメリカに渡ったクズは厄介者になっています。

 

クズはもともと砂防や飼料に使用するためにアメリカに渡りました。

ところが、今では、グリーンモンスターと呼ばれアメリカの在来種を脅かし、環境問題になっています。

調べてみるとクズ以外にも日本の植物がアメリカで問題になっているようです。

 

ジョージア州のツリーズアトランタという団体が日本からアメリカにやってきた困っ植物を外来種トップ10の中に8つも上げています。

 

クズ、それ以外にイノコヅチ、スイカズラ、カナムグラ、イタドリ、アシボソ、ネズミモチ(トウネズミモチ=もとは中国から日本にやってきました)、フジの10のうち8つが日本からの侵略植物です。

もともとは観賞用として持ち込まれたものが多いようですが、逃げ出しアメリカで特定外来種としてまーくされています。

イノコヅチはクズ以上にジョージア州では特に問題になっています。実が衣服や犬の毛にくっついて広がるのが大きな要因です。

スイカズラは観賞用にアメリカに入りました。アメリカ南部で問題になっている植物です。

カナムグラも観賞用にアメリカに入りました。コネチカット州、デラウェア州、インディアナ州、メリーランド州、ペンシルベニア州、バージニア州、コロンビア特別区で問題になっています。

イタドリはアメリカばかりかイギリスでも問題の植物。イギリスではこれが家にあると資産価値が下がるといわれています。

アシボソは磁器の梱包材に使われていたのが、アメリカで広がりました。牧草の成長を阻害する雑草として問題になっています。

トウネズミモチも観賞用でした。在来の低木層の植物を駆逐してると問題になっています。

フジも観賞用です。繁殖しすぎて問題になっています。

このように観賞用でアメリカに渡ったものが、ワースト10に8種類もあることがおどろきです。


粘菌 ムラサキホコリのなかま

2023-07-28 | 自然観察会

粘菌 ― ムラサキホコリのなかまー

 

枯れて落ちていたコナラの木の枝、人の腕の太さぐらいの木の枝の端に変形菌(粘菌)を見つけました。

 

ムラサキホコリの仲間は「変形菌(へんけいきん)」だが

「菌」とつくものの、変形菌は菌類(キノコやカビの仲間)とはまったく別の生物と考えられています。

しかし、20世紀半ばまでは、変形菌は菌類に含まれ、「ムラサキホコリカビ」という名で「カビ」だと思われていました。

 

単細胞のアメーバとして生活したり、集合して変形体で移動したり、キノコのような子実体をつくったり。とても神秘的な生き物です。

変形菌は「変形体」と「子実体」は見かけは全く違っいます。

子実体の姿がおわると、写真のように毛のような軸だけがのこりやがてかれていまいます。


タケニグサと有毒植物

2023-07-27 | 自然観察会

タケニグサ(ケシ科)

本州,四国,九州地方の日当たりのよい荒れ地に生える夏緑性多年生草本。

 

茎は中空で切ると黄色の乳液を出す。

白い花をたくさんつける。花弁はなくがく片は花が開くと同時に落ちる。

細い糸のようなおしべが線香花火のようにひろがる。中心にめしべがある。

花が終わると扁平な果実ができる。

名前の由来については諸説あるが、茎が中空でタケに似るからといわれている。

有毒植物。

 

 

鹿児島では緑化の植物として使われている。

有毒なためシカが食べないので活用されている。

種子はアリが運ぶ。種子の表面にはエライオソーム(種冠)がついているので、それをえさにするアリが種子を運ぶ。同じ有毒植物であるクサノオウやムラサキケマンも同じように種子をアリに運ばせる

 

野外観察会では

食べると有害な植物、触ると有害な植物、公園など身近にある有害な植物を紹介して害に巻き込まれないように注意を呼び掛けている。

食べるのがダメなのは

①キツネノボタン

花が咲く前がセリに似ている。食べると吐き気を起こす。

②クサノオウ

茎に毛が多く,傷をつけると黄色い液が出て,触るとかぶれる。食べると吐き気,下痢を起こす。

③ムラサキケマン

赤紫色の美しい花が咲く。全株有毒だが,毒性は強くない。量多く食べると吐き気,下痢を起こす。

④タケニグサ

葉の緑が不規則に裂けていて,茎を傷つけると黄色い液が出る。食べると吐き気,下痢を起こす。

⑤キツネノカミソリ

春先に長さ 40cmほどになる葉を出すが,夏に枯れる。全草有毒で,食べると吐き気を起こす。

⑥トウダイグサ

葉や茎を傷つけると白い液が出て,触るとかぶれる。食べると吐き気,下痢を起こす。

⑦アセビ

山地に生える常緑低木。全株有毒であるが,特に若葉の毒性が強い。食べるとけいれんを起こす。

⑧シキミ

山地に生える常緑低木。全株有毒であるが,特に果実に毒が多く,食べるとけいれんを起こす


トウカイコモウセンゴケ(モウセンゴケ科)

2023-07-16 | 自然観察会

トウカイコモウセンゴケ(モウセンゴケ科)

 

梅雨明けかと思われる晴天の中、ナチュラリストクラブ本日は加西市の網引湿原での観察会

網引湿原にはトウカイコモウセンゴケとモウセンゴケの2種類が見られます。

貧栄養な湿地、湿地周辺の裸地、水の浸みだす粘土質の崖などに生える多年生の食虫植物で、花茎の高さは10~15cmになります。

葉の長い腺毛から甘い香りのする粘液を出し、これに釣られてやってきた小さな虫がくっつくと、腺毛と葉がそれを包むように曲がって消化吸収するといわれています。

日本の固有種で、本州の静岡県~四国東部に分布します。最近は九州でも見つかっています。(2019中西)

隣の京都府では絶滅寸前種になっています。

花は6月~9月に咲き、モウセンゴケの花が白色なのに対し、トウカイコモウセンゴケはピンク色をしています。

葉は、「スプーン形」であることで見分けます。

モウセンゴケとコモウセンゴケとの雑種に起原をもつ複二倍体になっています。

 

参考文献 https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiribunrui/67/1/67_0671-07/_pdf/-char/jaより

 


ワイルドフラワー緑化とオオキンケイギク 

2023-05-23 | 自然観察会

ワイルドフラワー緑化とオオキンケイギク 

この写真はニュータウンとして宅地開発された斜面の画像です。

1990年ごろに宅地になりました。

そのときに、土止めにまかれた種が残ってきれいな花が咲いています。

 このような形式は造成地でしばらく時間がたったところでよく見られます。

 雨が降ると土が流れ出てしまうので、草をはやして流失を抑える必要があります。

 そのときにまかれた種がとくに1年草ではなく、根が残り数年も生きのる植物が土の流出をふせぎます。

写真は

黄色い花はオオキンケイギク、白い穂はチガヤです。

 オオキンケイギクは北米原産の外来種。日本には1880年代に鑑賞目的で導入されました。

 このオオキンケイギクがいまこまった植物になっています。

 

景観をより美しくする緑化方法として「ワイルドフラワー緑化」という緑化の方法があります。

日本には1990 年代から導入されるようになりました。

在来の野草草花に限らず、あまり手をかけないで生育できる複数の種類の種子をまき、緑化をめざします。

手軽に花が栽培できて、長い間花を観賞でき(いろいろな花が順番に咲くので5か月は楽しめるように種をえらびます)、かつ経費がやすくすむので、利用が広がりました。

 種の例をあげると、小町草、コスモス、カスミソウ、フランスギク、ルドベキア、ルドベキア、オオキンケイギク、キンギョソウなどの種をまとめてまきます。

 ワイルドフラワーには、大半が欧米原産の植物です。園芸用草花として使われている草花の中で、種子などによって容易に増殖でき、痩せ地や放植に耐え、美しい花を開花させる植物群が選ばれています。

 これらの植物の中には多年草の種子が含まれているので定着する可能性があり、種名が表示されていない野生植物が入り込むことがある。

 ワイルドフラワーによる緑化は、鉄道沿線、一般道路沿い、高速道路沿いやインターチェンジ、河川敷、宅地造成地、調整池周辺、埋立地、ダム周辺、飛行場、都市公園やリゾート地の花壇にまで広く利用されています。

 その結果、在来種との遺伝的かく乱のおそれが指摘されています。また、希少種を含む在来種と交雑する可能性が高いものがあり、そうした植物の利用も問題視されています。

 イギリスでは外来園芸植物の利用に関する行動綱領が作成され、公表されています。

 日本では、ワイルドフラワー導入の初期に入っていた「オオキンケイギク」が2006年(平成18年)に特定外来種になりました。

 この花は一度定着すると在来の野草を駆逐し、周りの景観を変えてしまう被害がでてきました。

 それで、栽培、運搬、販売、野外に放つことなどが禁止されている植物になっています。罰則規定もあるので注意が必要です。

 いまでは、環境に配慮した方法がとられています。

 環境省のホームページにはオオキンケイギクの見分け方が載っていますので紹介しておきます。


海老江干潟で野鳥観察会(ナチュラリストクラブ2008)

2023-04-28 | 自然観察会

海老江干潟で野鳥観察会(ナチュラリストクラブ2008)

淀川の海老江干潟は多くの野鳥が見られる場所です。春秋の渡りのシーズンには長距離を渡る干潟の鳥シギやチドリのなかまが採餌に飛来します。

大阪湾に流入する淀川には、海老江干潟、十三干潟などの小さな干潟が点在しています。

2004年に福島区海老江で実験干潟が造成されました。造成の方法は海老江干潟より上流にある柴島干潟の削った土砂を埋めて作られました。

その後、シギ・チドリ類やカモ類など多くの野鳥が観察されるようになりました。人工的に作られた干潟が成功した例です。

2008年5月に行った観察会の記録です。