野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

里地里山の1年 6月下旬の里山

2023-06-30 | 里地里山の1年

里地里山の1年 6月下旬の里山

 

1年の半分がもうすぐ終わる。

7月の里山作業の前に、皆さんが集合打ち合わせができるように草刈りを実施。

ワレモコウなどの貴重な種もあるが、この時期ササと一緒にかっても秋には花がみられる。

シライトソウも、刈り込みを高くして、来年も咲くように残してかる。

短く刈り込みすぎると、どんどん数を減らしてしまった。

今年は雨が多いので特に草の伸びがはやい。夏の暑い時期までに2回目の草刈りは何年ぶりだろう。

 

おそらく、今年最後のササユリが1輪。里地里山でことしはササユリの数が増えた感じ。

6月の下旬にさく花はオカトラノオとホタルブクロ、休耕田の隅にはカキツバタが咲いていた。


ミナミメダカとカダヤシ

2023-06-29 | フィールドガイド--魚編--

ミナミメダカとカダヤシ

メダカは小学校5年の理科の教科書で取り上げられています。

小学校ではメダカの卵の観察もします。

でも実際に野外で、メダカを見たことがない人も多いと思います。メダカをいつも近くの池や小川で見られる人はとても幸せだと思ってください。なぜかというと日本全国でメダカはとても数がへっているからです。

 

 メダカとよく見まちがえる魚にカダヤシという魚がいます。大きさも形もメダカによくにていますが、よく見ると違います。カダヤシは卵を産みません。卵を産まないで胎生(たいせい)といって魚の赤ちゃんをそのまま産みます。

 カダヤシは蚊(か)の発生原因となるボウフラを退治するためにアメリカから1916年に持ち込まれた魚です。

アメリカでもカダヤシをハワイでボウフラを退治するため1905年に導入されました。アメリカでもこの魚をモスキートフィッシュと呼んでおり、日本ではまさにカダヤシという名前を付けました。

1930年ごろまで、アメリカではマラリアを撲滅させるために生息地以外にカダヤシを導入利用しています。

ところが、近年アメリカでも生息地以外での導入が環境にカダヤシが負荷を与えているという意見がでています。

 

日本では、兵庫県のため池にメダカがたくさんいると聞いて実際見てみるとカダヤシだったという話も聞きます。

 

 カダヤシは暖かい地方ではどんどん増えていっているようで、メダカの卵や稚魚が食べられてしまうこともあるそうです。現在では東北地方南部から九州沖縄にかけて広く分布しています。

環境省は2006年に特定外来種に指定しました。

攻撃性の強いカダヤシが、在来種のメダカを駆逐するなど生態系を破壊する恐れがあるからです。

外来種被害防止法は、許可なくペットとして飼育した個人に対し、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科すと定めています。

 

        メダカとカダヤシの大きなちがいは

 

1 「しりびれ」の形がちがいます。メダカの「しりびれ」の形は平行四辺形に近いです。(特にオスはほとんど「しれびれ」が平行四辺形)

 

2 メダカは卵を産みますが、カダヤシは胎生といってそのまま魚の稚魚(赤ちゃん)を産みます


ただいま北上中 タイワンウチワヤンマ

2023-06-28 | フィールドガイド-昆虫編--

ただいま北上中 タイワンウチワヤンマ 

 

環境省が「いきものみっけ2017」の調査で、【カテゴリー2】で「北上するいきもの(もともとの分布域から北に分布を広げているいきもの)」として、 クマゼミとツマグロヒョウモンを対象種にして実施しました。

実はこれ以外でも、北上する生き物のひとつにタイワンウチワヤンマがいます。

 

タイワンウチワヤンマは、ネパール、インド、ミヤンマー、ラオス、ベトナムなどの東南アジア地域から、中国東部,台湾から日本にいたる地域に分布しています。

日本では詳しくみると、1930年代までは、九州南部(南西諸島を含む)と四国南部でしか確認されていない種でした。

画像は「生きている加古川」の本から、兵庫県加古川流域でみつけたタイワンウチワヤンマです。

阪神間でも見つかっています。2000年ごろには加古川流域から阪神間にかけて見られるようになってきたようです。

2020年代以降は東京都や神奈川県でも発見されるようになりました。日本での北限があがっていることがわかります。

 

成虫は4月から11月に見られます。成虫になるまでのヤゴの期間は1年から2年で水の中ですごします。温暖化の影響で冬期の気温上昇が、ヤゴの越冬を北の方でも生きていけるようになったと考えられます。

 

日本には、このタイワンウチワヤンマとよく似た、ウチワヤンマがいます。

お尻の先のウチワの形で見分けることができます。


ヒメタイコウチ ―湿地の貴重な昆虫―

2023-06-27 | 兵庫の自然

ヒメタイコウチ ―湿地の貴重な昆虫―

 

「生きている武庫川(改訂版)」に掲載したヒメタイコウチ。タイコウチとの違いがわかるように比較して掲載した。

 武庫川流域にある湿地などで見られるヒメタイコウチ。生息される地域が限定される貴重な生き物。

初めて見つかったのが1978年8月、兵庫県西宮市の甲山湿原(かぶとやましつげん)で市西宮高校生物部の観察会でのこと。

兵庫県ではその後、三田市の北摂ニュータウン造成のための調査(1973年)で発見。その後、宝塚市、明石市や加古川市などでも見つかっているが、日本では、三重県、岐阜県、愛知県の東海地方と静岡県にしかいない。愛知県西尾市では天然記念物になっている。1995年には四国香川県でも見つかっている。

 

 

ヒメタイコウチ

湿原のような湧水のある湿地で見られる。

前肢(まえあし)が変形して捕獲肢となっており、小動物をつかまえて食べる。

ヒメタイコウチの一番大きな特徴は、後麹が退化して飛ぶことができないことがあげられる。

 

ヒメタイコウチは海外では朝鮮、中国北部でみつかっているので、ウルム氷期に大陸と陸続きのときに日本にやってきた(日浦;1978)といわれているが、堀・佐藤 (1984)は,中新世後期~更新世に東海地方から近畿地方以西にまで、拡がった現在の瀬戸内海が東海まで広がった時期が何度かあり、海水ではなく淡水域の時期に、ヒメタイコウチが日本列島内で分布拡大したのではないかと考えている。

それは、兵庫県の分布地は、河川などの水系によって開析が進んだ、鮮新世から更新世の堆積物からなる正陵地および台地と沖積層との境界近く(三宅;1985b)で見つかっている。


未の刻にさくヒツジグサ

2023-06-26 | フィールドガイド--植物編--

ヒツジグサ(スイレン科)

分布 北海道~九州

花の時期 6~9月

 

昔の時刻の数え方のひとつである、「未(ひつじ)の刻(14:00)」の頃に花が開くことからこの名前になった。(園芸種のスイレンは早朝に花が開く)

ところが、江戸時代の書『大和本草』には、「此ノ花ヒツジノ時ヨリツボム」とあります。

それで、明治までは早朝に花が咲き、未の刻には花が閉じると思われていました。

 

それが事実かどうかを京都府の巨椋池(今は埋め立てられてありませんが)で、確かめた人物がいました。

牧野富太郎氏です。

早朝から夕方まで観察して、「花は正午から午後三時までに咲き、夕方5時から6時ごろに閉じる」と述べたといいます。

今回の画像は

里山での草刈りの作業前(10時)の画像

そして昼食時(1時ごろ)の画像

 

一つの花は3日、3回咲いたあと、水中に沈み結実します。

実ができると種子は浮かびます。一つ一つの種子は仮種皮(かしゅひ)につつまれてぷかぷか浮いてひろがっていきます。

この仮種皮は1、2日で腐ってとけてしまいます。とけると種子はそのまま水底に、時期が来ると発芽することになります。

兵庫県では、ため池でよく見ることのできるヒツジグサ。全国的にみると絶滅が危惧される種になりつつあります。

 

京都府(牧野富太郎氏はさどくやんでおられるかも)や奈良県では絶滅危惧種Ⅱ類、大阪府や和歌山県 滋賀県では準絶滅危惧種

コイやアメリカザリガニの食害のほか、きれいな環境が少なくなり、また、埋め立てなどで生活する環境がなくなっているとか


ネムノキ(マメ科)

2023-06-25 | フィールドガイド--植物編--

ネムノキ(マメ科) 

 

梅雨の晴れ間 ネムノキの花が咲き始めた。

ネムノキの名は小葉が夜間閉じて垂れ下がり、葉が眠ったようみみえるのでネムノキと名づけました。

暗くなると葉がとじるのですが、植物が暗さに反応して葉を閉じる動きを「睡眠運動」 といいます。

閉じる仕組みは、小葉のつけ根に 「葉枕」という小さな膨らみがあり、 その内部の圧力が変化することで、 葉が開閉します。

 

ネムノキを漢字では「合歓(ごうかん)」と書きます。中国では2枚の小葉が合わさり歓ぶと考えて、これを夫婦和合、家内平和の象徴として庭木にするそうです。

 ネムノキが咲くと、アズキあるいはヒエ、アワなどをまくという農業暦があります。

 花はマメ科の花とはちょっと違います。ネムノキの花は、すじばかりに見えます。これは、長くのびたおしべとめしべです。ピンク色にみえるところはおしべです。花びらはおしべとめしべの下に小さくあります。

秋にできる実をみるとマメ科だと納得できます。

 

花は6月~8月に咲き,紅色の美しい花を枝先につけます。花は、夕方から咲きはじめ、翌日の昼ごろまで見られます。


ニイニイゼミの初鳴き

2023-06-24 | フィールドガイド-昆虫編--

ニイニイゼミの声を聴いた

6/23日 兵庫県宝塚市を流れる逆瀬川沿いを通ったときニイニイゼミの声を聴いた。

2日前に通った時には聞かなかったはず。初鳴きということになる。

 

セミの初鳴き,鳴きおさめの日― みんなで調べよう 2015 ―近藤 伸一 1(きべりはむし,38 (2): 6-16)

の報告から

 

この報告は2013年から2015年までのこどもとむしの会,兵庫昆虫同好会,兵庫県森林インストラクター会,昆虫愛好家の皆様方から 12 種のセミについて初鳴き,鳴きおさめ,鳴き声の確認情報をまとめたものである。

 

ニイニイゼミのところを見ると

2015年ニイニイゼミ・初確認 6/15 福島県,6/19 阪神,6/23 但馬・播磨,6/26 西播磨,6/29 丹波

と記録があるので、今日聞いた鳴き声は格別早いものではないことがわかった。

 

感覚的に 阪神間ではニイニイゼミが鳴きはじめるとこの声を消すようにクマゼミが鳴き始め、おなじころにヒグラシ、少し遅れてアブラゼミとおもっていたが、

兵庫県内ではハルゼミ→エゾハルゼミ→ニイニイゼミ→ヒグラシ→クマゼミ→アブラゼミ→ミンミンゼミ→ツクツクボウシ→エゾゼミ→チッチゼミとなるようだ。

 

セミの抜け殻で一番特徴的なのがニイニイゼミ、泥だらけでまるまるとした形はほかのセミの抜け殻とすぐに区別がつきます。

北海道から沖縄本島まで全国でみられます。(佐賀県だけがない)

鳴き方は「チー…ジー…」「チッチッチッ…」。湿った環境が好きなので、木の幹の真ん中あたりでよくないている。胴体も前翅も木の皮のようなまだら模様。枯れた枝に産卵する。

 

ニイニイゼミが鳴きはじめるといよいよ梅雨も最後、本格的な夏がはじまる。


六甲山で再発見シーボルトとシチダンカ

2023-06-23 | フィールドガイド--植物編--

シチダンカ(アジサイ科)Hortensia serrate var.serrata f.prolifera

 

シチダンカは、ヤマアジサイの変種で六甲山の特産種。シーボルトの「日本植物誌」に採録された。

その後実際に見た人がいないので「幻の紫陽花」と呼ばれていました。

1959年(昭和 34 年)に六甲山小学校の職員が六甲ケーブルの西側で見つけて学校に植えていたところを、兵庫県生物学会会長の室井さんが同定、再発見の運びとなった。

種ができないため、挿し木で増やされいまでは公園などでもみることができる。

 

高さ1m~1.5mの落葉低木です。

シチダンカの装飾花は八重咲きで、それぞれの萼片は剣状にとがり、きれいに重なって星状に見えるのが特徴です。

 

アジサイの山と言われる六甲山系のアジサイ。アジサイは「神戸市民の花」にも指定されています、

 

昭和48年頃から、景観を損ねないように綺麗にしようということで六甲山にアジサイが植えられたのが最初。そして、昭和50年には、『花と市民の協定』条例第1号として5年間で2万本のアジサイを植えることになりアジサイが六甲の花、市民の花に。

 

「神戸市立森林植物園」では、6月中旬から7月中旬にかけてアジサイの花がみられます。

園内では「ヒメアジサイ」、「ヤマアジサイ」、「カシワアジサイ」、「コアジサイ」、「ガクアジサイ」、「アナベル」や、幻の花と言われる六甲山の名花「シチダンカ」など西日本最大級となる約350品種5万株のアジサイが咲き誇ります!


ハンゲショウ

2023-06-22 | 兵庫の自然

ハンゲショウ(ドクダミ科)

 

梅雨で今日も関西は本降り。

梅雨のころに開花する花の一つにハンゲショウがあります。

低地の水辺や湿地に群生しているのが見られます。臭気のある多年草で、群生するのは、地下茎を張り巡らせながら増えていくためです。

穂のわきにある葉が白く色づき、 遠くからでもよく目立ちます。

穂がハンゲショウの花の集まりで花穂(かすい)といいます。ドクダミと同じようにがくやはなびらはありません。

雨が花の中に入りにくくするため、筒状に小さな花が密集していて、下から順に咲きます。開花時になると花穂に近い2~3枚の葉の下半分が白くなります。これが、昆虫を誘引する仕組みになります。

花穂の個々の花を裸花 らか)と言い、 ドクダミ科の植物に見られる特徴のひとつです。花が終わると、 白く色づいた葉は薄緑色になります。

 

 

ハンゲショウはドクダミ科です。おもしろいことにドクダミ属はドクダミ1種しかなく、東アジアにしか分布しませんが、ハンゲショウ属は北米とアジアにそれぞれ 1 種ずつ計 2 種が含まれるだけで、そのうちの 1 種ハンゲショウは東アジアから東南アジアにしかありません。日本では、この時期ドクダミもハンゲショウも両方みることができる位置にあります。

東アジアと北米に見られる現象は、かって温暖な時期は北半球全域にあった植物が氷河期をむかえ、温暖な東アジアと北米の中緯度の温帯域で雨が多いところに生き残ったと考えられています。

ハンゲショウは農作業のめやすとして、夏至から半夏(11日あと)の間におわらせると言い伝えがあり、これが咲くまでに田植えを終えるめじるしになっていました。

 

関西では、半夏生の頃にタコを食べる習慣があります。淡路島の明石海峡公園ではハンゲショウが5000株植えてあり、今が見ごろ。


グンバイトンボ

2023-06-21 | 兵庫の自然

グンバイトンボ

兵庫県のホームページの種の概要によると

「長34~40mm程度。♂は中・後肢の脛節が軍配状になっており他種との識別は容易であるが、♀はモノサシトンボに似ている。砂泥底の抽水植物や沈水植物が繁茂する河川中流域などに生息する。成虫

は5月~8月に見られる。」

とある。

6月里山のため池周辺でみられる。概要によると河川の中流となっており近くの小川で砂泥の場所が見当たらない。ずいぶん離れたところからとんできているのであろうか。

兵庫県以外では、京都府,滋賀県,大阪府北部に分布している。

岐阜県のホームページによると

「丘陵帯に生息する。谷間の湧水があるような緩やかな流れのある湿地などに見られる。」

とあり、里山のいくらかのため池は湧水で成り立つ池もあるので、その所で産卵をしているだろうか。

 

このグンバイトンボ、オスの中あし、後ろあしの一部は、白色で軍配(ぐんばい)状に広がっていてよく目立つので、この名前が付いた。この「グンバイ」が、オスのなわばりをまもるために、ほかのオスがやってくると、この白い軍配状のあしを広げて威嚇する。

メスに対しても同じようにあしを広げて自分を見せびらかすのに利用する。

 

幼虫(ヤゴ)は、緩やかな流れにある水草などにつかまりながら、水生昆虫などを捕まえて食べる。

 

グンバイトンボの産地は、生息には清らかで流れのゆるやかな湧き水が必要と条件のため全国的には減少しており、準絶滅危惧種になっている。