青森県と秋田県の境にある「日景温泉(ひかげおんせん)」の存在はずっと昔、「日本秘湯を守る会」の本に掲載されていたので知った。
そこに書かれていたのは、秋田、青森県の人に親しまれていて、特に皮膚病、アトピーなどに効能があるため、湯治客が絶えないいうことだった。
その後、近くを通った時に1度だけ立ち寄り湯をしたことがあった。
その時に入った温泉が素晴らしく、いつかゆっくりと宿泊してみたいと思っていた。
ところが東日本大震災で影響を受けたり、建物が老朽化したことなどで、2014年8月に閉館となってしまって念願は叶わなかった。
ところが3年後の2017年、新しい経営者に変わり再開したことを知った。
その際には大規模修繕し、以前とは全く雰囲気の違った温泉に生まれ変わったとのことだった。
送迎バスを降りたところから硫黄の匂いが漂っていた。
建物の大きさは以前と同じ「バカでかい」という表現がぴったりだったが、きれいになっていたのには驚いた。
そして、中に入ってまたびっくり。
ここが以前は湯治場だったとは思えないほどおしゃれな内装だった。
山小屋風になっていて、中央には大きな薪ストーブ、その周りには一枚板のテーブルがいくつか並んでいた。
この宿はオールインクルーシブになっているので、飲み物は自由、その隣にはアイスキャンディーまで置いてあった。
チェックインしてすぐにお風呂の説明があった。
お風呂は日帰りとして利用できる大浴場とは別に小さい貸切風呂が4ヶ所あり予約制となっていた。
お風呂の名前がすべて秋田弁になっていて、覚えられない。
たとえば「うるげる湯っこ」、「あんべい湯っこ」など。
どのお風呂に入ろうかと迷ったのだが、写真が添えてあったので、それを見てとりあえず翌朝まで、2ヶ所の予約を入れた。
その後通された部屋へ向かったのだが、1回の説明では分からないくらい館内が広く、手渡された地図を頼りにやっと部屋に着いたという感じだった。
部屋は和洋室で広々としていたし、冷蔵庫には飲み物が数種類入っていた。
テレビが置いてないことも良かったのかも。
早速、お風呂に入ることにした。
最初に予約したのは「うるげる湯っこ」。
昼間だったので外が見えるお風呂を選んだ。
[”うるげる湯っこ”入り口]
広い館内の2階一番奥、渡り廊下の向こうにあった。
[うるげる湯っこ]
ここは大きなお風呂で炭酸泉、ちょっと硫黄の匂いがして白濁していた。
でも、体に泡が付かなかった。
炭酸泉でこういったものがあるとは・・・
それでも肌はしっとり、ツルツルになった。
お風呂のハシゴ、次は予約のいらない大浴場の「ぬぐだまる湯っこ」。
ちょうど日帰りの時間が終わったので入ってみた。
[内風呂]
[露天風呂]
「ぬぐだまる湯っこ」は硫黄泉、総ヒバ造りの内風呂と露天風呂があった。
この時間はすでに辺りが暗くなっていて、写真はうまく撮れていない。
翌朝は予約していたもう一つのお風呂に入った。
ここは滝を見ながら湯船に入ることができる「滝見の湯っこ」、このお風呂だけは普通の名前だった。
朝早かったので暗いから滝は見えないかもと思っていたがライトアップされていた。
おかげでこの日は周りを雪に囲まれた滝を目の前に見ることができた。
ここも炭酸泉だった。
食事のこと。
新しくこの宿を買い取ったのが「割烹きらく」という会社。
だから食事も期待していた。
思った通りの和洋折衷の会席料理で、手作り感満載の前菜から順に一品一品丁寧な料理を出してくれた。
味は少し濃い目のように感じた。
そしてさすが秋田、最後は一人用の「きりたんぽ鍋」だった。
珍しく曲げわっぱの器に入っていた。
曲げわっぱに汁物? と思ったけれど、それなりに作ってあるようだった。
山の中の一軒家の時の湯治場だった雰囲気を残しながら高級な宿へと生まれ変わった日景温泉。
食事も美味しいし、温泉も最高。
館内が広い割には客室数がそれほど多くないので、他のお客様ともほとんど会うことなく、たった2日間だけど静かでのんびりとした時を過ごすことができた。
翌朝は雪になっていた。
雪の中の温泉もまた風情があっていい。
またリピートしたい宿になった。