読書の秋。地元・防府市の繁華街「車塚」のビルのオーナーが書いた小説がある。タイトルは「知らない人」。瀬戸内の小さな港町・徳山で暮らす天涯孤独のタクシー運転手、明智勝が主人公である。読みすすんでいくと、なんと、202~203ページに自分が足繁く通うスナック「フォークソング」と店長が実名で登場する。そのクダリを原文のまま、紹介すると次のとおり。・・・・客は車塚町のちょっとかわった名前のビル、ハワイ屋ビルの前で降ろしました。45歳くらいのどこにでもいるサラリーマン風でした。そうそう、チップを1000円くれました。ハワイ屋ビル3階にあるフォークギターで生演奏の店。「フォークソング」って店に行くって言ってました。私も少しギターを弾くので、半年前から彼女と3~4回、休日の夜に行った事があります。楽しい店ですよ。音楽が好きな連中で男の客が多いですが、女の方も3分の1おります。マスターの名前ですが遠藤史憲さん。通常はマスターとお客さんは呼んでます。刑事さんたちも1度遊びに行ったらどうです?おっと、これは要らぬことを申しました。私が言わなくとも、この話の裏を取りに今夜でも防府の「フォークソング」の遠藤さんに会いに行かれるんでしょうから、そのときはマスターによろしく。・・・・
全体のストーリーは、主人公が孤児園から女の子を誘拐し、身代金6000万円を要求する。警察は別件で明智を逮捕するが、仕掛けられた巧妙な罠と明晰な応酬に翻弄され続ける。貧しくても正義感が強くタフな明智が、緻密な計画のもとに国家権力に孤独な闘いを挑む社会派サスペンスである。一気に読める。そして、なにより、身近なところが舞台であるのでおもしろい。
おしまい