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第21期竜王戦 7番勝負 第1戦

2008年10月21日 | 将棋
第21期竜王戦 7番勝負の第1戦が終わりました。

第21期竜王戦 中継サイト
(現在では、第1戦の棋譜がアップロードされています)


先手渡辺 後手羽生で始まりました。



渡辺明は居飛車党(飛車が元ある位置から仕掛ける)で、穴熊(隅っこに玉を置く一番堅い囲い)を得意とします。
この穴熊戦法は実は10年以上も前に流行したスタイル。
というか、そのころは堅い=強いという時代でした。
ただし欠点は穴熊囲いを完成するのに手数がかかること。

つまり渡辺は『遅いが堅くさらに強い攻め』という過去に将棋界を風靡したスタイルなのです。




羽生善治は得意戦法がなく、オールマイティで何でも指します。
そこが羽生善治の強いところで、彼への挑戦者は決定的な対策を練ることができません。

羽生は『羽生マジック』と言われるマジックを持っています。
というのは、中盤から終盤にかけての戦局で、解説者も検討者も、さらには対局者さえも全く読みにはない手をさすのです。
その手がなんと、即詰みや即寄りになってしまうきっかけになるのです。
その誰も想像がつかない一手を読み出す発想。
それが『羽生マジック』と言われる手なのです。



10年以上も前に流行した「遅いが堅く強い攻め」
しかし「流行した」ということは、逆にいうと現代では特効薬ができたということ。
「堅さよりも速さ。速く鋭い攻め」
それを洗練させたのが羽生世代なわけです。




「遅いが堅く強い攻め」渡辺
「堅さよりも速さ。速く鋭い攻め」羽生

そんな対局になると予想できるのです。




さてそんな第1局。

予想どおり、先手、渡辺の居飛車で戦いが始まりました。
対する後手、羽生の作戦は

「後手一手損 角換り」

これも不思議な作戦です。
「後手」な上に「一手損」して角交換をする。
先手から見ると「2手損」しているわけなのです。

しかし、この2手損の状態が相手を手詰まりにさせ、ほころびを生ませ、そのほころびを電光石火に叩く。
そんな作戦なのです。


しかし、対する渡辺は、「後手一手損 角換り」に真っ向から勝負を挑みます。
注目の囲いは、かかってこいの「矢倉囲い」
「矢倉囲い」でも十分堅いのでこのまま戦うこともできますが、
渡辺流は、ここから「穴熊囲い」にゆっくりと発展させることがあります。
さらに攻撃力満点の「棒銀」。
渡辺ファンは震えたことでしょう。




その手を見て羽生は作戦を変えます。

「後手一手損 角換り」→「対居飛車 右玉」

「右玉」と言う作戦は、文字通り右側に玉を移動させます。
つまり自分の飛車がいる方向へ玉を移動させるわけです。

この作戦は、攻めゴマの飛車と玉が接近するので、変則的な作戦なのです。
アマチュアでは大流行していますが、プロの戦いでは(一部を除いては)ほとんど見られない作戦なのです。



右玉にすることにより、左側から来る「飛車と棒銀」の威力を遠ざけるわけです。



右玉を見た渡辺は、忙しくなりそうな局面だったのですが
「矢倉囲い」から「ゆっくりと穴熊囲い」に発展させます。
まさに渡辺流なのです。


僕にはレベルが高すぎて、解説を読んでも理解できる手がほとんどありません。
ですが、棋士の棋風や作戦等を知っていると、さらに将棋を見るのが面白くなります。



穴熊に組み、強い攻めを見せた渡辺。
しかし、その強い攻めを受けつつも相手の急所をついた羽生の角打ち。
まさに羽生流の誰も発想できない一手。
解説者も「えっえっ?角?」
渡辺も動揺していたようです。

逆転を狙う渡辺。
しかし、羽生の角打ちから形勢を持ち直すことは難しかったようです。
「この手を指せば羽生が優勢でしょう」と言う解説者。
その手を落ち着いて指す羽生。
「この手を指せば羽生の勝ちでしょう」と言う解説者。
その手よりもすばらしい手を指す羽生。




第1局は 羽生善治 の勝利でした。




僕にはレベルが高すぎて理解できない着手ばかりです。

だけどそれでも、

頑として自分の指し方を貫いた渡辺。
それを持ち前の変幻自在の差し回しによってひらりとかわした羽生。
渡辺流の穴熊。
そして羽生流の角打ち。

見ごたえのある1局でした。





第2局は10月30日(木)と31日(金)の二日間に渡って戦われます。


・・・・平日か。


仕事しながら覗こうかな。

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