土曜日、娘と一緒に昼過ぎに家に帰ると彼が階段に座っていた。
手で顔を覆い、泣いている模様。
「ちょっと来て。」と言うと
娘も一緒に行こうとしたので
「○○(私)だけ来て。」と言う。
嫌がる娘を宥めて、一緒に2階に行く。
「俺さ、もう充分頑張ったから、もういいと思うんだ。」って。
「ん?何が? えっ、どうした???」と聞くと
「もう、いいって神様が言ったんだ。」って。
雰囲気からして、言いたいことは察しが着いた。
「なんで、突然そんな風に思ったの?」となるたけ優しげな声で聞くと
「突然じゃないよ。
ずーっと、辛かったの。
ずーっと辛かったけど、そう見えないように頑張ってきたの。
でも、もうそれにも疲れたから、もう楽にして欲しい。」って。
なんでも、先日白い影のようなものが見えて、幻影まで見るようじゃ
もうお終いだ…と思ったら、それが神様のように思えきて、もういいよ
って言いに着てくれたんだと思ったって。
ずーっとこのまま辛いままで、仕事もできないし、娘に何も買ってやれないし
こんな苦しい思いし続けるなら、もう楽にないたいんだって。
淡々と、涙を流しながら、話す彼。
「だから、明日実家に行って来る。
行って、お父さんとお母さんに挨拶してくる。
そしたら、いくから。」って。
今までも、その手の話をすることはあったけど、いつもテンション高めで
口から泡吹きながら怒鳴っているようなイメージだったが、この日は本当に
淡々と、悟りきったような声色だった。
だから、逆にヤバイかも…って。
だから、ひとまず
「そっか…。」と言ってひととり話を聞いてから
薬袋を見る。
すると、まだ今日の分の頓服を飲んでいないで
「一旦、薬のも。」と言って渡す。
いつも思うが、こういうとき一体なんていったら一番効果的なんだろうか。
ネットの質問に乗っているのを読んだこともあるけど、どうだったろう。
そんなことをぼんやりと考えながら、私も負けないくらい淡々と話し出した。
「そんな風に考えるくらい、辛いのはわかったよ。
今まで気が付かなくて、ごめんね。
でも、○○(彼)の言う楽は本当の楽じゃないと思うんだ。
私も○○(娘)もまだこれから一緒に、この家で家族として
やっていきたいって思っているから、そんな風にして欲しくない。
医者に行って、入院とか他の方法を考えようよ。
症状を安定させることこそが、楽になるってことだと思うよ。」
ってな、話をした。
こんな内容で間違っていないんだろうか。
その後、あれこれ話しをしたら、どんどん昔の話をしだした。
昔バイクに乗っていた時期が一番楽しかったこと。
事故ったときのこと。
付き合っている自分、アパートの灯りがついててうれしかったこと。
そして、去年の1月に車を炎上させたときのこと。
そうなんだ。
去年の1月にも彼は大騒ぎを起こした。
起こした事の大きさにもショックだったが、私はまったくその気配に
きずかなかったことがさらにショックだった。
私の想定したいた状態と、彼の状態は大きな差があった。
それまで、ある程度把握しているつもりだったのに、まったく違った。
今回もだ。
今回も先日の「
日常」にもかいたように低空飛行中だと思っていた。
が、彼はここまで追い詰められていた。
っていうか、追い詰めてしまっていた。
朝食の洗い物や、ゴミ捨てや、庭木の水遣りや、娘の宿題まで
頼んでいた。
やっと、そうことを頼めるようになったんだって思っていた。
とんだ、思い違いだったわけだ。
彼の話が途切れたとき、
「昔、○○先生(前に通院していたクリニックの先生)が
人は死ぬ前に語りだすんだって言ってたけど、本当だ。」って。
うん、ますますヤバそうな気がしてきた。
よし!と思って、私が取った行動は…。
「話まだ聞くけど、まだお昼ご飯食べてないから食べてきていい?」
そう…、私が取った行動はひとまずお昼ごはんを食べること。
昼を過ぎて帰ってきて、彼の話を聞いていたら段々血糖値が下がって
きて、頭が働かなくなってきていた。
もちろん、娘も食べていない。
彼にも、
「ご飯は?」とか聞くし。
「いらない。」という彼を残し、一旦階下へ。
こんなことを言い出す人間を一人にして?って思われるかもしれない。
でも、その時私は彼はまだ私に話したいことがたくさんあるような
気がしていた。
だから、少なくてもそれを語るまでは行動を起こさないと思った。
しかも、長期戦になるなら、尚のこと血糖値が下がって頭が痛いような
状態では勝負にならない。
1階に来て、ことのあらましをお義父さんに報告。
さらに、ご飯の用意をして、娘と食べる。
そして、彼との第2ラウンドが始まった。