彼は同じ業界の仕事を15年くらい続けていたが
いっさい資格を持っていない。
もちろん、持っていなくても仕事はできる。
でもいざ就職試験ともなるとないよりはあったほうが
いいだろう…ということで、とある試験を申し込んでいた。
受験料に9,000円
テキスト代に4,000円
問題集代に2,000円
閉めて15,000円
正直痛かった…。
で今朝、届いてからずーっとほって置いた問題集を見て
「こんなの無理だ…」と言って落ち込んでしまった。
もう文字を読むのも苦痛だいう。
こんなんじゃ勉強なんて到底できないという。
正直、こんなことになるんじゃないかと思っていた。
実技と試験は別物である。
こんな知識要らないし使わない…と思えるものでも網羅して
おかなければならないのが資格試験だろう。
かく言う私は前職の関係で、履歴書の欄にかけない
くらいの資格を所有しているだけに身にしみてわかっている。
だからこそ一からの勉強が必要だと思っていた。
でも彼はすっかり舐めきったのか、する気力がなかったのか
ギリギリまで何の準備もしていないあげくに今日の丸投げだ。
完全にストレスに対する耐性がない。
この病気だからしょうがないのか…。
それともそもそもそれがわかっているのだから
時間をかけて準備しようという覚悟がたりないのか…。
試験日は来月の20日…。
しかし…そこから一気に落ちてしまったらしい。
仕事中に電話が鳴った。
彼から「もうダメだ…」と電話が来た。
そして彼からの電話越しに泣きながら何かを話しかけている
お義父さんの必死の声…途中で彼が電話を切ってしまった。
あわててお義父さんに電話する。
用意した食事を全部食べて、お義父さんにお菓子をねだり
それでも荒れまくってお義父さんにキレまくりらしい…。
そのあとかばんに荷物を入れていてどこかに出かけようと
しているという。
もうお義父さんの話は全然聞かないという。
私に「帰ってきて…」というお義父さん。
帰ると彼は布団の上で、かばんを手にしている。
でも私が隣に座ると振り切ってまで出かけようとする
気配はない…。
一旦、お義父さんに席をはずしてもらい話を聞く。
自分はもう何もできない、もう苦しみたくないという彼。
そしてお義父さんに「直してやろうと思って…」と何度も
言われたのが尺に触ったらしい…。
「直してやろうと思って…」
確かにお義父さんがよく言う言葉だ…。
私も気になっていた…。
「~してやる」という表現はある意味押し付けがましくも
聞こえてしまう。
実父に対する甘えもあり、反感が出るんだろうとは思うが…。
話したら少し落ち着いたのか、かばんを放した。
「何かもっと食べたい…」というので、食事を用意する。
その茶碗も途中で投げつけながらも、なんとか食べるだけ
食べた…。
そして「気持ち悪い…」と言いながら、横になった。
片づけをしたあと、お義父さんの元に話を聞きにいった。
「お父さんは治してあげようと思って一生懸命…」と
何度も何度も繰り返し話すお義理父さん…。
「もうどうやって接してあげたらいいのかわからない…」という。
「~あげる」、「~してやる」のオンパレード…。
それが感に触ったらしいことをいうと本当に切なそうな顔になる…。
「ごめんねぇ、お義父さん…」というのが精一杯…。
そのあと1時間以上も同じ話を繰り返すのをただ聞いていた…。
「でもねぇ、お義父さん…
周囲の一生懸命さでどうにかなるんなら、私かなり昔から
一生懸命やってるんだけどぉ…。」
「報われないのはお義父さんだけじゃないから…。」
なんて言えるはずもない…。
そのまま寝てしまった彼を確認して、仕事に戻った…。