僕の感性

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大学生美沙の物語

2018-08-02 18:22:03 | たわごと
 西の空は今日も濃い茜色に染まる。

大学生の美沙はアルバイトに明け暮れていた。

午前中から昼過ぎまではコンビニのレジ係で、終了してから大学へ向かう。

夕方から夜の時間帯は、駅前の居酒屋で接客業に励む。


パフスリーブのトップスにフレアスカートと
おしゃれに気遣い、けっして疲労の色は他人に見せないのが、信条だ。

だから友達に
「美沙は仕送り0円て本当?」
といつも同情と驚嘆の言葉をかけられる。

奨学金を貰っているが、入学金と授業料でほとんど消え、先々月の6月は通帳の残金が6円だった。
美沙は心底泣けてきた。次の奨学金が入るのは2,3日後、流石に食いつなげないので
友達の彩(さや)に泣きついてすがった。

彼女はこころよく食事をおごってくれたから助かった。

 サークルの演奏会において会場代と打ち上げの費用で2万円が吹っ飛んだのが痛かった。

「なぜ私だけこんなに苦労するの?」と時々神をも恨んだりする。
それは下に高校生の弟がおり、成績からすると国立大学が危うく、金食い虫になるだろうと母親が見込んでのことだった。

ベットに寝ころび一日の疲れを癒していると、急にこの存在している現実が仮想社会で
実は「夢こそまこと」なのかななどと江戸川乱歩ばりの荒唐無稽な考えにもとらわれた。

彩を含めたの友達の多くは、仕送りを8万ぐらい貰っている。
それでももっと遊びたいからとバイトをやっている。

 私は生活のため、生きていくためバイトをしているのに、他の人は遊びのため?
非常に腹立たしくも思うが、今の世の中全部自分の力で大学を卒業しようとする
バイタリティを持った若者は少数派だ。 やれ任天堂のSwitchだとか、ソニーのプレステ4だとかで騒いだり、
カラオケだーボウリングだーダーツだーなどと遊んでばかりだ。

 美沙はできるだけ友達との遊びで出費しないよう、アルバイトや大学、サークル、そして自宅との往復に甘んじている。

アルバイトのコンビニでは廃棄される弁当を先輩方に倣って持ち帰ることができるので助かっている。
オーナーは夏場の食中毒を心配するので、基本駄目と言ってあるが、持ち帰る行為は黙認しているらしい。

コンビニの弁当を三食食べている自分、反しておしゃれなカフェに訪れては、ふわふわのシフォンケーキやパンケーキに舌鼓をうつ友達。
この落差は何なんだろう?支配階級と労働階級の差??

けれど美沙は思った。逆境こそバネになる。親が試練を与えてくれたものと感謝し、強く将来を見据えるのだった。

先々月ATMで残金6円の通帳に愕然としたとき、あえて母親に「なんとかならない?」と助けを求めた。

けれど母親の返答は・・・仕送りしてあげる・・・ではなく・・・

「奨学金の金額を増額するか?」
というものだった・・・

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