僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

金色夜叉

2013-06-19 11:27:34 | 文学
尾崎紅葉の代表作「金色夜叉」の中で最も有名なのは、熱海の海岸で貫一が宮を足蹴にするシーンであろう。
金持ちの御曹司へと乗り換えた宮を「おのれ姦婦!」となじりながら蹴り飛ばすのである。
間貫一

この宮が心変わりした御曹司の名が富山唯継。彼の名前には財産(富の山)を唯(ただ)親から受け継いだという寓意性がある。
作者の尾崎紅葉は意図的に登場人物に寓意性を持たせたのである。
主人公の貫一も彼の一途で一本気な性格を表している名前だ。鰐淵直行や赤樫満枝らも高利貸しの悪辣さが表現されている。
富山唯継


赤樫満枝

意外と知らないのが鴫沢宮の名前の由来。

鴫沢宮

西行法師が詠んだ「心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮」という和歌からとったらしい。
和歌での「心なき」の意味は「情趣を解さない」という意味だが、紅葉は「薄情だ」とか「冷淡だ」という意味合いで
この歌の内容を名前に使い、「鴫立つ沢」を名前に採ったのであろう。

尾崎紅葉は日本の古典に造詣が深く古典の読解力も巧みであった。

是非彼の教養にあやかりたいものだ。