僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

三木露風にとっての母親

2011-09-27 23:15:30 | 
童謡「赤とんぼ」で有名な三木露風は、兵庫県龍野町(現在のたつの市)に生まれた。
彼は、5歳のとき、父親の放蕩が原因で両親が離婚するという憂き目にあってしまう。

母親たつは跡継ぎの露風を残し、実家である鳥取の堀家に弟勉を連れて帰ってしまうのだ。
その時の辛い体験が、拭いきれない大きな痕跡として露風の胸に残った。

童謡「赤とんぼ」の歌詞は、夕暮れ時に赤とんぼを見て懐かしい故郷を思い出す内容だが、露風にとって母かたに背負われて赤とんぼを見た体験は、彼女への思慕や拘泥という形をとり、鮮やかな情景として詩に残されたのだろう。手をつないだり抱かれたぬくもりは終生変わることがなかった。

私生児として生まれ、実の両親の顔も知らず養子に出された室生犀星にしろ、
ランボーにしろ萩原朔太郎にしろ、
どうしても詩人には暗い影がつきまとってしまう。

私も高校の時に、なだらかな桑畑の斜面に寝転んで、遠い遠い空を見た。
その薄暗くなりつつある黄昏の大空に、無数に飛ぶアキアカネを見て感動した。
心の奥底から感動した。

三木露風は、ドストエフスキーに心酔し、武者小路実篤の「新しい村」に賛同し
ロマン・ロランの「ジャンクリストフ」にとっても感動した。
早熟な彼は20歳で「廃園」という詩集を刊行し注目を集め、「白き手の猟人」で象徴詩を大成させる。

彼は母たつが亡くなったとき、実家の許しをとり、彼女の傍らに添い寝をしたという。