僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

小学生5人の見事な連携

2011-03-07 17:26:00 | 感動
 山形県河北町の西里小3年、庄司ひよりさん(9)と黒田美穂さん(9)は2月16日、学校からの帰り道に、ふと足を止めた。聞いたことがない、くぐもった声がする。
 「誰か、助けてけろ!」。声が聞こえる辺りに雪の塊があり、人の太ももだけがちらりと見えた。「男の人だ」。手で雪を掘って助けたかったが、冷たくて、硬かった。
 すぐ後ろを、同級生の後藤健人君(9)が歩いていた。つい最近、近所の人が雪かきで具合が悪くなったのを知っていた健人君。「また雪の事故だ」と、ピンと来た。近くに住むおじいちゃんを呼びに走った。
 5年生の皆川安里紗さん(11)と庄司七海さん(11)も異変に気付き、とっさに近くにあったスコップをつかんだ。
 生き埋めになった男性の話し声がだんだん小さくなった。「早く助けないと」。みんな、心臓が高鳴り、どきどきした。駆け付けた健人君のおじいちゃんと一緒に、夢中で雪を掘った。
 小学生5人の見事な連携プレーで、町内の農業後藤正義さん(60)は助かった。左脚にけがをして入院したが、命に別条はなかった。
 事故の後、後藤さんの奥さんが学校に来て感謝の気持ちを伝え、伝言を残した。「子どもたちにいつでも遊びに来るように言ってくださいね」。後藤さんが退院したら、会いに行こうと誓った5人に、もう一つ、ご褒美が待っていた。
 1週間後の23日、全校児童の前で、寒河江署の芳賀豊松署長から感謝状を手渡された。立派な額入り。「重いなあ」と美緒さんが言うと、先生が声を掛けた。
 「人の命を助けたんだから、重いのは当たり前だよ」(河北新報 関川洋平)

苦役列車

2011-03-07 15:25:07 | 読書
西村賢太氏の「苦役列車」を読んだ。

主人公貫太の生き様は、その日暮らしで、将来の展望もない。5500円の日雇い日当を握り締め、コップ酒をあおって野菜炒めを食べ、たまに風俗にいくルーティーンだ。

友人も恋人もいない貫太にもある日を境に変化が生じてくる・・・


どうなんだろう?作者の西村氏は、「自分よりダメなヤツがいるんだという気持ちになってくれれば書いたかいがある。」と述べている。

私が思うに、湾岸の物流倉庫で固まったイカやタコをパレットに運ぶ仕事は、かなりの重労働だが、貫太の生命の息吹や逞しさを感じるのだ。

実生活でも西村氏は、父親が性犯罪に手を染めたゆえに両親の離婚や度重なる転居を経験する。けれど不思議なことに父親への憎しみを一言もこぼさずに、ある意味人生に諦観と恐れを抱いているが、それでも生きている。

田中英光に傾倒しつつも、インテリジェンスの香りを嫌悪し、今度は藤澤清造に私淑する。孤独と窮乏の中死んでいった彼に一種の救いを託していったのだろう。
なぜなら、一見無頼派を気取ってはいるが、途方もない寂しがり屋と私は見て取る。