僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

車輪の下

2008-12-21 23:09:46 | Weblog
ヘルマン・ヘッセの「車輪の下」は、教科書にも登場する名作中の名作で、日本人好みの作品のように思います。

あらすじ
南ドイツの小さな町。父親や教師の期待を一身に担ったハンス少年は、猛勉強の末、難関の神学校入試にパス。しかしその厳しい生活に耐えきれず、学業への情熱も失せ、脱走を企てる。「教育」という名の重圧に押しつぶされてゆく多感な少年の哀しい運命をたどる名作。

ヘルマン・ヘッセが作家になるまでは、大変な苦労がありました。「車輪の下」の舞台になった神学校を退学させられたあと、書店見習いをしつつ文学修業に努め、ついに二十二歳で詩集の出版にこぎつけます。
これらの個人的な体験が「車輪の下」には滲み出ていて、洋の東西を問わず人々の共感を呼ぶ由縁なのです。

「車輪の下」とはいったい何を意味するのでしょうか。実はこれはヘブライ語などの成績が落ちたハンスを叱る校長先生の言葉からとったものなのです。
「決して弱気にならないことだ。さもないと人は車輪の下に入るよ(車にひかれるよ)」
つまり車輪の下に入るとは「破滅する」と言う意味なのです。
天才少年といわれたハンスの末路は泥酔した挙句の溺死です。しかしヘッセはハンスと類似の経験をしつつも克服し、自分の天職である詩人となるため苦悩の道を敢然と歩んでいったのです。