平成23年4月1日より、改修工事のために休館していた東京芸術劇場が本年9月1日にリニューアルオープンしました。
改修前は何回かコンサートに行かせて頂いた馴染みのホールですが、大規模改修後、初めての訪問が陸上自衛隊中央音楽隊のコンサートとなりました。
私が若かりし頃のコンクール課題曲の模範演奏(カセットテープに録音されていました。)は、必ず自衛隊の楽団によるものでした。
だから、今回の演奏会は学生だった頃の私に戻り非常に期待してしまうのでした。
しかし、期待以上、大感激の演奏会でありました。
まず最初にお知らせしたいのは、リニューアルした東京芸術劇場の素晴らしさです。
エントランスから始まって、ホールまで行き着く間、全てに高級感がましたというか、もうビックリです。(写真でご確認下さい。)
また、ホール内も内装を変え、音響を良くしたとの事です。
それでは、しばしの間、素敵な空間で素敵な音楽を味わう事にしましょう…。
開演の15分前から、プレトークということで、本日の指揮者、演奏楽曲の作曲者が舞台上にあがり、お話をして下さいました。
メンバーは指揮の飯森範親氏、作曲家の真島俊夫、中橋愛生の両氏の3人です。
いずれも著名な方々ですね。
飯森範親氏は皆様ご存知の現代日本を代表する指揮者のひとりです。
この飯森先生と吹奏楽との結びつきと言えば(ご本人もおっしゃっておられましたが)、大阪市音楽団(市音)抜きにして語ることはできないでしょう。
(個人的な意見としては、市音と共演したスミスの「華麗なる舞曲」の演奏はいたく気に入っております。CD持ってますよ…。)
また、陸上自衛隊中央音楽隊の演奏会では客演指揮者(飯森氏)がすべての曲を指揮するのは今回が初めてだとの事。
その点においても興味を引く演奏会です。
また、真島先生、中橋先生にもご自身の楽曲の解説やエピソードを聞かせて頂き、短い時間でしたが、楽しいひと時を過ごすことが出来ました。
時間が許せば、他の演奏会でも、このようなプレトークを行ってほしいなと感じた次第。
そうこうしてるうちに開演の時間となりました。
2012年(平成24年)10月25日、木曜日、東京・池袋の東京芸術劇場です。
それでは、プログラムの紹介です。
● 吹奏楽のための「クロス・バイマーチ」 (三善 晃)
● 三つのジャポニズム (真島俊夫)
第1曲 鶴が舞う
第2曲 雪の川
第3曲 祭り
● 吹奏楽のための祝典序曲「科戸の鵲巣」 (中橋愛生)
● 交響曲 第1番「指輪物語」 (ヨハン・デ=メイ)
第1楽章 ガンダルフ(魔法使い)
第2楽章 ロスロリアン(エルフの森)
第3楽章 ゴクリ(スメアゴル)
第4楽章 暗闇の旅
a モリアの坑道
b カザド=ドゥムの橋
第5楽章 ホビットたち
素晴らしい演奏の数々でした。
最初の曲、1992年度吹奏楽コンクールの課題曲であった三善先生の「クロス・バイマーチ」でグッと心をつかまれ、続く「三つのジャポニズム」の日本情緒にあふれた躍動感に酔いしれました。
3曲目のご存知、「科戸の鵲巣」。
さすがに本日、演奏している陸上自衛隊中央音楽隊のために書かれた(委嘱作品)だけあって、十八番(おはこ)の堂々たる演奏でした。
曲の持つ物語性を音楽で表現した名演だったと思います。
この演奏を聴けただけでも本日のコンサートに来た甲斐があったと感じたのは私だけでしょうか?
陸上自衛隊中央音楽隊のサウンドは素晴らしい。
恐ろしく滑舌が良いのですが、それでいて柔らかくて心地よい。
しかも、春の日差しのような暖かさの輝きがあるのです。
これは、金管、木管に共通しており、統一した音色は非常に美しいです。
また、打楽器もバランスがとてもよく、下手なバンドの騒々しいタイコの音と違って実に効果的な演奏です。
技術的な事は素人なので良くわかりませんが、ノーブルな雰囲気に満ち溢れていました。
20分の休憩をはさんで、トリの曲、ヨハン・デ=メイの「指輪物語」です。
恥ずかしながら、初めて聴かせて頂きましたが、壮大な曲ですね。
中央音楽隊の演奏も原作のJ.R.R.トールキンのファンタジーの世界を神秘的に表現していました。
もう、ここまで来ると音程だの技術だのという前に、“ひとつの世界”ですね。
いやあ、いいものを聴かせて頂きました。
鳴り止まぬ拍手の中、アンコールとしてタイケの「旧友」が演奏されました。
勇壮感は失わず、そのくせノーブルな雰囲気を持つ、素晴らしい演奏でした。
最後にひとつだけ申し上げたいことがあります。
本日の演奏会は落ち着いた雰囲気の演奏会でした。
何故なんだろうと思い返してみると学生さんがあまり居なかったからだと思います。
普通、吹奏楽のコンサートというと中高生の皆さんが大挙して来場し、熱気に包まれる場合が多いのですが…。
このような素晴らしいホールで、このような素晴らしい団体の演奏を格安の価格で鑑賞出来るのに学生さんは何故、来なかったのでしょう?(一番、価格が安かったC席は、なんと1,000円ですよ!)
もったいない気がしてなりません。
いずれにせよ、今後も、陸上自衛隊中央音楽隊のご活躍に期待しております。
次回も時間が合えば、是非、コンサートにお邪魔したいと思います。
本当に有意義な2時間でした。